海に落ちた辺見を助けるため、岸に戻ったアシㇼパと杉元。
「ふうう暖かい…命拾いした」と暖を取る辺見に、濡れた服を脱いだほうがいいと声をかける杉元。
白石の姿を確認していた辺見は、自分がまいたエサにつられて刺青を探しに来たのに違いないとして、見られている中で脱ぐのは恥ずかしいと断ります。
怪しまれたかと不安になるも、「毛布使う?」と優しい杉元。
まったく怪しんでない。
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この人(杉元)なら残酷に殺してくれるだろうかと、いっそここで刺青を見せたい衝動に駆られる辺見。
でもすぐに思いなおします。
辺見は着替えてくると言うと、近くの番屋に。
そこで偶然、体調不良で寝込んでいた男に刺青を見られてしまいます。
窓の外から「ここの番屋って働いている奴しか泊まれないのか?宿泊分だけでも働かせてもらえないか?」と聞いてくる杉元に、男の首を絞めながら「あとで親方に頼んでみますよ」と答える辺見。
殺した男を隠すと、アシㇼパと杉元にニシン場を案内します。
「やっぱり白石を追ったほうがいい。私たちだけでここにいても意味がない」というアシㇼパの言葉に、杉元も囚人の顔がわかるのは白石だけであることから「そうだな」と納得。
そんな二人を辺見は「命を救っていただいたお礼に、食事だけでもどうですか?」と引き留めます。
当時、ぜいたく品であった白米が食べられるということで、アシㇼパも態度を一転。
ニシン漬けをいただきます。
食後、アシㇼパがトイレに行き待っている間、「人を殺しましたか?」と旅順出征について尋ねる辺見。
近くで殺した相手の顔ほどよく覚えている、と答える杉元。
せめて忘れないでいることが償いであり、自分には殺さなきゃいけない道理があった。
必要なら鬼になる覚悟があるし、自分がくたばる時は安らかに死なせてもらおうなんてつもりは毛頭ない、という杉元の言葉に、辺見は「この人に殺されたい」と杉元を殺すことを決めます。
その頃、アシㇼパはトイレでバラバラに切り刻まれた男の死体を発見します。
辺見はトイレに先ほど殺した男を隠していたことを思い出すと、アシㇼパから杉本に伝わらないように、「見せたいものがある」といって杉元を外に連れ出します。
邪魔が入らないところに連れ出そうとしますが、近くに第7師団の姿が。
自分がまいたエサに第7師団も食いついてきたとほくそ笑む辺見。
見つかるとやばいと慌てる杉本。
辺見は機転を利かせて親方の家に連れていきます。
ところが、親方の家には鶴見中尉が訪問していました。
目的は、兵器工場建設への投資のお願いです。
そうとも知らず2階に上がりかけた辺見と杉元は、そこで鶴見中尉を待つ2人の兵士とバッタリ。
とっさに身を隠す杉元。
辺見はすばやい動きで兵士を殺しますが、弾を一発受けてしまいます。
辺見の行動を見ていない杉本は、「善良な一般人にまで!」と憤慨。
銃声で鶴見中尉にもバレ、辺見を連れて逃げます。
海辺でクジラが上がった様子に、辺見を連れて向かう杉元。
そこにいた白石が「そいつが辺見だ!」と叫ぶと同時に、杉元に襲いかかる辺見。
アシㇼパの助けもあり、間一髪のところで刃を受け止める杉元。
「殺してください。全力であがらいます」という辺見と殺し合います。
激しい攻防の中、杉元が最後のとどめを刺そうとしたとき、そこにシャチがきて辺見を加えて海に連れ去ってしまいます。
刺青をズタズタにされてしまっては困ると、近くの船にのって追いかける杉元・アシㇼパ・白石。
その後ろを、鶴見中尉たち第7師団が追いかけてきます。
海に飛び込み、シャチが辺見を投げ飛ばしたすきを狙って奪回。
迫るシャチを蹴り飛ばし、アシㇼパが銛を差しこみ、ものすごいスピードで泳ぐシャチの力を利用して鶴見中尉の追ってから逃げきります。
その様子を、土方が崖の上から見ていました。
追手
辺見から刺青をはぎ、浜に上がってしまったシャチを竜田揚げにして食べる杉元たち一行。
その頃、親方の屋敷に戻った鶴見中尉に、病院から尾形百之助上等兵が消えたこと、双子兵士の片割れである二階堂浩平一等卒の姿が数日前から見えない事が報告されます。
消えた二人は、アシㇼパの祖母の家を訪れていました。
まだ足は完治していませんが、無駄飯ばかり食べていられないと、子どもたちと白樺の樹皮をとりに森に出かけていた谷垣。
チセに戻ると、そこには谷垣を待つ尾形と、フチの肩をもんでいる二階堂の姿に緊張が走ります。
村人からケガをした兵士がいると聞き、待っていた尾形と二階堂。
谷垣は、仕掛け罠にかかり動けなくなっているところをアイヌの人に助けられたと説明しますが、尾形と二階堂は疑わしげです。
谷垣と行動を共にしていた玉井伍長と部下の行方が未だにわかっていないことから、尾形は谷垣が殺したと疑っていました。
「玉井伍長から何か聞いているだろう?」と疑いのまなざしを向ける二階堂に、「なんのことかわからないな」と、フチから離れるように凄む谷垣。
どうかフチたちに乱暴はしないでくださいと頼む谷垣に、尾形は「おまえは嘘が苦手なようだな」と、見なかったことにするからしばらくここで好きにするといいチセから出ていこうとします。
去り際、「不死身の杉元を見なかったか?」と鋭い眼差しで聞く尾形に、「いいえ」と谷垣は答えるのでした。
尾形たちの誤解が完全には解けていない事からも、ここにいると皆を危険にさらすと判断した谷垣は、フチに「世話になった恩返しをしたかったけど、もう行かなくて」と日本語で伝えます。
オソマに伝えてくれるように頼みますが、谷垣に出て行ってほしくないオソマは涙目で首を横に振ります。
「出ていくのかい?」と察したフチの言葉に、ほろりと涙がでる谷垣。
「シンナキサラ!」とオソマが谷垣の耳を引っ張ったとたん、谷垣の額を一発の銃弾がかすめます。
とっさにフチをかばうように伏せ、オソマにも伏せて動かないように指示する谷垣。
近くに合った自分の銃を取ろうとしますが、先ほど尾形が自分のボルトを持っていたことから、殺すつもりで持っていったことを悟ります。
チセから少し離れた小高い丘の上に、銃を構える尾形と双眼鏡で補佐する二階堂がいました。
尾形は、玉井伍長が谷垣を説得しようとして返り討ちにあって殺されたにちがいないと推測していました。
自分たちに居場所を知られないように人を使わず、完全に回復するまでアイヌの村に潜伏し、鶴見中尉に直接、今回の謀反の件を伝えるつもりだったに違いないと。
「ばあちゃん子」だったという尾形は、目撃者がいない場所を選んで暗殺することにしたのです。
アシㇼパの和名
その頃、杉元たち一行は、辺見がいた番屋とは違う番屋で寝床を確保し休息。
そこに、頭を包んだ老人が近づいてきて、「あんたらヤン衆にみえないねえ。旅行かい?」と話しかけてきます。
アシㇼパの瞳の色から「ロシア人の血が混ざっているのかな?」とアシㇼパについて聞く老人。
その老人の正体が土方であることに気が付いた白石は「ひっ!」と驚くも、杉元に気が付かれないようになんでもない様子を取り繕います。
アシㇼパの和名について老人(土方)が訪ねますが、杉元も白石も聞いたことがありません。
そして老人(土方)は、杉元の顔の傷を新選組隊士の梅戸や鍬次郎に例えると、「アシㇼパちゃん、元気でな」と、ヨチヨチした歩きで去っていきました。
「変なじいさんだったな」とあっけにとられている杉本ですが、去り際に「複製をつくれ」と言われた白石は心中穏やかではありません。
罠
鷲鉤を使って窓を閉める谷垣。
自分が狙われる理由は、以前に玉井伍長が話していた、第7師団内に「鶴見中尉の大きな理想についていくつもりがない」といっている者たちの存在を聞いたこが原因ではないと推理。
それが鶴見中尉への謀反を考えている人間が尾形であったと気が付くと、「もはや奴らは第7師団でもなければ何物でもない」として戦う決意を固めます。
谷垣は双眼鏡を囮に撃たせると、尾形と二階堂の居る位置を把握。
煙幕をつかって脱出します。
脱出する際、リュウが安心するからといって寝床に隠していた二瓶の単発銃をオソマから渡されます。
一方、先手を取られたことを悟った尾形は、二階堂と共に谷垣を追跡。
しかし、手負いではあるものの谷垣は元マタギであることから、山での逃げ方を熟知。
日が暮れても見つけることができず、そのまま野宿することにします。
寒さに震えながら夜が明けるのをまっていると、明け方、焚火の煙が視界に入りました。
用心しながら近づくも、焚火のそばに谷垣の姿はなし。
尾形が援護するなか、焚火に近づく二階堂。
尾形は「これは絶対に罠だ。一体何を企んでいる」と警戒を緩めません。
近くでは二階堂の姿を確認した谷垣がその様子をうかがっていました。
焚火のそばに鹿の死骸をみつけた二階堂は「どうやって仕留めだんだ?」と疑問に思います。
その瞬間、横から突如現れたヒグマに頭を殴られます。
ヒグマの出現に驚く尾形。
この焚火は、先にヒグマが狩って雪をかぶせていた鹿を見つけた谷垣が仕掛けた罠でした。
谷垣は、尾形が二階堂を助けるために銃を撃つ瞬間を狙っていたのです。
二階堂の絶叫に、ヒグマを撃つ尾形。
ヒグマが森の中に逃げると、「さぁ、俺はここだぜ。銃なしでどう戦う?」と両手を広げて立ち上がります。
と、離れた場所からチカっと光る発砲炎。
瞬間、胸を撃たれて倒れる尾形。
その視線の先には、「勃起!」といって銃を構えている谷垣の姿がありました。
そこに、尾形と二階堂を追跡していた三島が銃をもって姿を現します。
実は造反組をあぶりだすため尾形と二階堂には常に尾行がついており、居場所は鶴見中尉に報告されていました。
三島は尾形が玉井伍長と接触するまで傍観するつもりだったものの、谷垣が尾形を倒したことで姿を現したのでした。
「わかっている、お前は裏切らなかったから狙われたのだろう」という三島。
鶴見中尉のところに戻ろうとした途端、射撃されてしまいます。
射撃したのは尾形。
谷垣が撃った玉は双眼鏡に当たり、一時気を失っただけだったのでした。
鶴見中尉が追いつく前に谷垣を殺しておかなければと思う尾形ですが、すでに鶴見中尉が現着していました。
捕獲された二階堂は、鶴見中尉から尋問を受けます。
耳をそり落とされ、鼻も落としかけられますが、他の造反者について口を開かない二階堂。
抵抗せず強気の姿勢に鶴見中尉は、「杉本を殺させてやる」と持ち掛けます。
鶴見中尉の提案を聞くや、「そこにいる小宮です」と二階堂はあっさりと答えます。
小蝶辺明日香
森の中に入った3人。
水辺でアシㇼパの父の友人であるキロランケニシパに会います。
イトウを分けてくれとお願いする白石に、「自分で捕ったらいい」と道具を貸してくれます。
が、足場の一部が外れて水の中に落ちてしまう白石。
しかも、イワンオンネチェプカムイ(巨大イトウ)にパックリと飲み込まれそうになるも、キロランケニシパによって助けられます。
焚火にあたりながら、巨大イトウを食す一行。
杉元の名前と顔の傷から、「不死身の杉元か?」と気が付くキロランケニシパ。
実は、キロランケニシパも第7師団出身でした。
警戒する杉元ですが、キロランケニシパは隊が異なり、しかも現在はすでに除隊した身。
誰とも接点を持っていませんでした。
アシㇼパは杉元を「相棒」、白石を「役立たず」と紹介。
キロランケニシパは、アシㇼパがそういうのなら信用できるんだろうと、自分はここでアシㇼパに伝えたい話があって待っていたといいます。
それは、年老いた和人が、人探しでキロランケニシパがいる村にやってきた事。
探しているのは、小蝶辺明日香という女性。
つまり、アシㇼパのことでした。
アシㇼパの和名を知っているのは両親だけ。
その話に、先日会った老人を思い出す杉元。
網走監獄での事をキロランケニシパはすでに知っており、のっぺらぼうは外にいる仲間に囚人が接触できるヒント「小樽にいる小蝶辺明日香」を伝えていたと。
つまり、のっぺらぼうはアシㇼパに金塊を託そうとしていた。
なぜなら、のっぺらぼうはアシㇼパの死んだとされている父だから。
キロランケニシパの話にショックをうけるアシㇼパ。
なぜアシㇼパの和名を知っているのかと杉元が問うと、「俺はアシㇼパの父と一緒に日本に来た」と答えます。
のっぺらぼう(アシㇼパの父)とキロランケニシパは、日本のアイヌではなかったのです。
金塊が見つかればのっぺらぼうが死刑になるので、アシㇼパの父の仇がとれると思っていたが、のっぺらぼうの正体がアシㇼパの父だとすれば事態は変わってきます。
このまま金塊探しをして見つければ、アシㇼパの父は間違いなく殺されます。
アシㇼパは、網走監獄にいるのっぺらぼうに会って確かめる決心をします。
キロランケニシパの答えは、すぐ目の前にありました。
脱獄王の白石です。
次巻!