「敗者の告白」深木 章子

敗者の告白 (角川文庫) [ 深木 章子 ]

価格:820円
(2018/12/10 19:20時点)

奥さんと息子さんの転落事故で、旦那さんが容疑者として逮捕。
弁護士さんが事件を調べる中で、関係者各位の供述をそのまま載せて話が進行します。

全員が供述した最後に、弁護士さんが自分の見解を述べるという形のお話です。

ストーリーは主人公目線で進むのではなく、関係者の言葉だけで進行。
それだけでも、十分に事件の様子、ストーリー展開がわかり、読者はまるで主人公である弁護士の立場にたって話を聞いているかのように感じられます。

ちなみに、主人公といっても、そこまでキャラが立っていないので、主人公の弁護士は読者!?

8人が順番に告白していくのですが、そのうちの誰かが嘘をついています。

嘘つきは誰か?
また、どんな嘘をついて、本当は誰に復讐しようとしているのか?

ストーリーはこちら↓


となる山荘で会社経営者の妻と8歳の息子が転落死した。
夫は無実を主張するも、容疑者として拘束される。
しかし、関係者の発言が食い違い、事件は思いも寄らない顔をみせはじめる。

遺された妻の手記と息子の救援メール。
事件前夜に食事をともにした友人夫婦や、生前に妻と関係のあった男たちの証言。
容疑者の弁護人・睦木怜が最後に辿り着く、衝撃の真相とは!?

関係者の“告白”だけで構成された、衝撃の大逆転ミステリ。

*「敗者の告白」背表紙より抜粋


 

登場人物はこちら↓

睦木怜…本村弘樹の弁護士。関係者から話を聞くうちに、ある矛盾点に気が付く。

本村弘樹…母子殺人で逮捕・起訴される。
本村瑞樹…裕福な家のお嬢様。美人で自分勝手。男性関係が派手で、策士並みの頭の良さ。
本村朋樹…パソコンやゲームが好きな小学生。無口なタイプ。
本村由香…妹。2歳の時にお風呂場で事故死。

本村育子…弘樹の母であり、朋樹君とはメールすほど仲がいい。

溝口雄二…弘樹の昔からの友人。
溝口佐木子…明るくてしっかりした奥さん。夫の過去(秘密)について、知ってて知らないふりをしている。
溝口美優…由香ちゃんと同い年。

吉田達彦…古くからの、瑞香の実家の税理士。
小笠原翔太…吉田達彦の部下。瑞香の家の担当を引き継ぐ。

乾公明…歯科医師でありPTA会長。子どもが朋樹君と同じ小学校で、役員を通じて瑞香と知り合う。

藤井友利子…雑誌編集者。以前、瑞香さんを取材したことがある。

この中の誰かが嘘をついています。
( ・ὢ・ ) ムムッ




 

関係者の告白だけが淡々と進みます。

序章として、「別荘2階ベランダから転落 東京の母子二人死亡」と書かれた山梨毎朝新聞の記事が紹介されます。
ここでは、まだ旦那さんが逮捕されたことは記載されておらず、なぜ高く設定されていたフェンスを乗り越えて転落したのか捜査中とだけになっています。

 

第一章となる最初の告白は、司法警察員に対しての供述調書。

最初の告白者は、会社員・藤井友利子。
そこには亡くなる前に奥さんから秘密のメールを受け取っていたことが告白されており、藤井さんが供述するに至った原因になっています。それは奥さんの告白文ともとれる手記。

次の告白者は、弘樹さんの母親である本村育子さん。
育子さんは、今回の事件で亡くなった孫・朋樹くんから、事件前にパソコン宛にメールをもらっていました。

ただ、育子さん自身は外泊していたこともあり、気が付いたのは事件後。
朋樹くんからのメールは、誰もが驚愕する内容で、警察に提出するかどうか…育子さんは大変苦悩します。

そんな、おばあちゃんである育子さんが驚いた、そして警察に出すのをためらわせたメールとは一体どんな内容なのか?
供述調書の最後に、朋樹くんのメールの中身が公開されます。

確かに、これは驚くべき内容です。
そこには、妹の由香ちゃんの事故死についての真相だけでなく、今回の自分が死ぬ事についても書かれていたのですから。

 

第2章は、被告人である本村弘樹の陳述書。

妻である瑞香との出会いから、友人の溝口の事、さらには数か月前に亡くなっている妹の由香ちゃんの事件についても語っています。
そして、事故当日の事、警察の取り調べ。

自分は無罪であり、妻の瑞香の話は嘘っぱちであることを切々と訴えています。

 

第3章は、事件関係者による弁護士への証言。

被告人の友人である会社員・溝口雄二さん、その妻であり専業主婦の佐木子さん。
瑞香さんの家の顧問税理士である吉田達彦、その事務職員の小笠原翔太。
歯科医師である乾公明が、弁護士に本村夫婦について語っていきます。

 

そして第4章では、弁護士である睦木怜さんが本村弘樹にあてた書簡と、真犯人を「X」と仮定し、事件について推論を述べていきます。
その睦木弁護士の推論を読んだ本村弘樹が、感想と「X」についての補足を述べます。

 

最後の終章では、事件から6年後の新聞記事が紹介。
東京経済新聞に、事件関係者の一人が亡くなった記事です。

 

このまま終えているのが、うまいまとめ方だなと思いました。

強い殺意の成れの果ての事件…あの時、思いとどまることができたら、別の道を選ぶことができたら、こんな最後にはならなかったのでないかなと。

結局、この犯人のやりたかったことってなんだったのか?
むなしい事件です。

ただ、一つだけ言えるのは、関係のない子どもまで巻き添えにしたのはひどすぎるという事。

 

「敗者の告白」は、皆の証言を聞いていくうちに、最初に見えていた事件像がどんどん変わっていきます。
人の姿も…。

誰かが嘘をついている。
嘘つきは誰か?

矛盾点を探しながら、ハラハラドキドキししながら読める本です。
まさに、敗者の告白です。




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