06巻:ヴァニタスの手記ージェヴォーダンの獣の正体ー

ヴァニタスの手記(6) (ガンガンコミックス JOKER) [ 望月淳 ]

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翌朝。
ジャンヌが目覚めると、すでにヴァニタスは外に。
合流したヨハンと共になにやらお話し中。

昨夜の事に動揺しているジャンヌとは違い、すっかりいつも通りのヴァニタスです。

そこにダンテも加わり、ノエが“白銀の魔女”に連れ去れたことを知らされます。

残してきた目印から追っかけようとしますが、「その前に…お前が俺に隠している事をすべて話せ」とヴァニタスがダンテとヨハンの首っ先にナイフをあてがいます。

混血と吸血鬼、そして教会が獣を追う本当の目的を…というヴァニタスの言葉に、ジャンヌの「どういうこと?」と動揺が隠せません。

 

ダンテが観念すると、ヴァニタスはジャンヌにクロエの元まで案内を頼みます。

その道中、ダンテはダプシェ侯爵家についてから話し始めます。

ジェヴォーダンの獣事件がきっかけで断絶したダプシェ侯爵家。
不審死が立て続けに起き「ダプシェ家は獣(ベート)の呪いのせいで滅んだ」と言われているが、実はそれだけではない。

教会によって禁じられていた“世界式”に関わる独自の研究を進めており、その長年の研究の果てに作り上げた世界式の“改竄装置”が、ジェヴォーダンの獣を生み出した原因なのではと。

「それをどうにかするために、吸血鬼も人間もこの事件に関わってきているのか?」というヴァニタスの問いかけに、「…たぶん」と歯切れの悪い返事をするダンテ。

ダンテがこの情報を知りえたのは、通称『機械狂いのマキナ侯爵』と呼ばれているフランシス・ヴァー二ー卿から。
ヴァニタスをこの事件に関わらせ、ダプシェ改竄装置の実在の有無を調べ、可能であればそれを持って帰ることと依頼を受けていたのでした。




 

魔女と青年

その頃。

連れ去られたノエは、「あと一口(血)だけ…」とおかわりを所望するクロエに羽交い絞めにされていました。

気を失っている間に血を吸われていたことからも力がでないノエ。
そんなノエを助けてくれたのは、クロエと共に城に住むジャン=ジャックという青年でした。

 

ジャンヌから聞いていたクロエという名に、「あの子が獣!?」と驚愕するノエ。
着替えをすますと、二人から話を聞くべく部屋を出ます。

 

音楽と話声が聞こえる部屋をみつけて入るノエでしたが、そこで見たのはテーブルに並んで座る自動人形のようなもの…。

しかも、クロエの背後にはネーニアの姿。

二人で談笑している様子に、「獣の正体はあなたなんですか?」と問いかけます。

それに対してクロエは「私が望んだことだから」と答えます。

自分の“願い”と引き換えに自らの意志で呪い持ちになったというクロエの言葉に同調するように、「クロエのように強い力を持った吸血鬼相手だと無理やり持っていくのは難しい。だからお願いするの」と近寄ってくるネーニア。

ノエも同じだと、何の願いを叶えたらその真名をくれるのかと問うネーニアに、「ルイにもそれと同じことを言ったのか?」と激高するノエ。

「オレとドミにルイを返せ!」と、テーブルに乗りあがっての乱闘騒ぎに。
その様子にクロエが切れます。

 

クロエの強烈なビンタでノックアウトされたノエ。
目を覚ますと、そこは厨房でした。

ジャンが出してくれた料理に感動し、「君はなんでもできるんですね!」と褒めたたえるノエの言葉に、ジャンは顔を赤らめます。

自分の自己紹介をし握手を求めるノエでしたが、はじめて握手を求められたことに、ジャンは再び顔を赤くするのでした。

 

食後、ダプシェ家について説明するジャン。

最後の当主エルマン・ダプシェをはじめ、妻、子ども、兄弟と皆死んでしまい、今はもうクロエしか生き残っていないと。

「…いつからここにいるんですか?」と問うノエに、「ずっとだ。ジェヴォーダンの獣事件なんてものが起こるずっとずっと前から、クロエはダプシェの民を見守り続けてきた」と。

今度は逆に「お前たちはなんの為にこの森にやってきた?クロエの敵なのか?」と問うジャン。
ノエは「俺の敵はネーニアです。クロエさんじゃない」と答えるも、クロエからネーニアを引きはがそうとするのであれば変わりないとすげなく言われてしまいます。

ネーニアが現れるまで、クロエは毎日泣いていた。
自分にはどうすることもできなかった。
これがクロエの望んだことなら、クロエがもう泣かなくて済むのなら、自分はそれでかまわない。
行きつく先が滅びだったとしても、最後までクロエのそばにいる。

そう、きっぱり言い切るジャンの姿から、かつてダプシェ家で何があったのかを問います。

 

その頃、クロエはとある場所に…。

そして、機械人形に向けて優しく微笑むクロエ。
「さぁ、みんな。待たせたわね。ようやく時が満ちたわ」

「このジェヴォーダンの地に、私たちの復習の音楽を響かせてやりましょう…?」とよりそうでした。

 

 

過去の記憶

クロエが吸血鬼として目覚めたのは4歳の頃。
16世紀も後半、混沌(バベル)が残した傷跡もようやく薄れ始めた頃でした。

混沌を生き延びた者が知らぬ間にその存在を書き換えられていたり、人間の間に生まれが子がある日突然に両の眼を紅く染める。
「そういうこと」がよくあり、おそらくは混沌のせいで世界式そのものが不安定な状態となり、その影響がこちら側にも表れたのではないかと思われていました。

クロエの体は11歳を過ぎた頃にその成長を止めたことから、表向きは病死したことにし、“隠された吸血鬼”として生きることになりました。

クロエの父は混沌を引き起こしたとされるパラケルススの情報をかき集め、名だたる魔術師や錬金術師を山の奥深くの城に集め、世界式の研究に着手。

はじめはそうした、一人の父親のすがるような願いだったものが、時の流れとともに少しずつ形を変えていき、世界式の謎を解き明かしてその神の領域に手を伸ばし触れることこそがダプシェ家の悲願に。

クロエはそのすべてを見守って生きてきたのでした。

 

そんなクロエの元に、新しい研究者としてやってきたのがオーガストでした。
クロエは一瞬にしてオーガストが吸血鬼であることを見抜きます。
それと同時に、初めて出会った吸血鬼でもありました。

「世界式の書き換えを可能にする改竄・演算装置が本当に作れるのであれば、気っとこの世界をより良き世界に導くための篝火となるはずだ」と希望に満ちた目で言うオーガストの言葉に、外の世界について意識を持つようになるクロエ。

その頃、外の世界では吸血鬼と教会が激しく争っていました。

教会にとって吸血鬼は異端であり死すべき存在であるとして、いたるところで吸血鬼狩りがおこなわれ、異端審問では吸血鬼だけでなく疑わしい人間さえも拷問にかけられる。

クロエがいる城には認識を阻害する類の力が働いているので、教会に気づかれる可能性は低い。
「私のように、人伝てで城に入り込む者もいるかもしれません。お気をつけなさい」と、クロエに警告します。

オーガストの話に「あなたは吸血鬼の味方?それとも人間の味方?」と問うクロエ。
オーガストは「どちらでもないよ」と、両者の戦いを止めたいと思っていると答えます。

 

数か月間、城内で研究にいそしんでいたオーガストですが、ある日突然姿を消します。

それからは、たまに現れてはいなくなると繰り返していましたが、とある集会に参加するため、子どものジャンヌを預かってほしいと連れてきます。

 

元気いっぱいのジャンヌに手を焼くクロエでしたが、ジャンヌの奔放さは逆にクロエにこれまで感じた事のないさまざまな経験や感情をもたらしてくれました。

ある日、外に出ようとするジャンヌを止めますが、「素敵な場所を見つけたの!クロエも一緒に行こうよ!」と、出て行ってしまいます。

追いかけたクロエに、横から飛びつくジャンヌ。
寝ころんだ目の中に飛び込んできた風景に、言葉をなくすクロエ。

緑の木々や草花、そして青い空。
土と風と花の匂いに包まれ、涙がこぼれるのでした。

 

それ以後、迎えにきたオーガストと共にジャンヌが去った後も、たびたび森の中を散歩するようになったクロエ。

その様子は本邸のベスク城で暮らす家族にも伝わっており、年に数度の食事の席で心配されます。

「最近は吸血鬼狩りが頻繁に行われているといいます。あなたが吸血鬼があることも、我々が世界式の研究に手を出している事も、決して教会には知られてはならないのです。くれぐれも気を付けてください」という言葉に、オーガストとジャンヌの身が気になるクロエ。

城に帰ってからも心配するクロエの元に、熊の格好をしたフランシス・ヴァー二ー(マキナ候)が訪ねてきます。

 

マキナ候がやってきたのは、オーガストとジャンヌの事を伝えるためでした。

穏健派であるオーガストは吸血鬼と人間の和解・共存の為にあれこれと動き回っていたのですが、教え子であるジャンヌの両親に裏切られた。

ジャンヌの両親への刑は執行され、ジャンヌ自身は処刑人として生かされていくことになったと。

その話に、「オーガストはそれを止めなかったの!?」というも、オーガスト自身も深手を負っていてとても動ける状態ではなかったと。

今後も戦いはより激しくなることが予想され、いずれこのジェヴォーダンにもそれは及ぶ。
人間の世界を捨てて吸血鬼として共に生きていくかと、一緒に来るかどうかを問うマキナ候でしたが、クロエは無言で断るのでした。

 

「私にダプシェを捨てることはできない」とうなだれていると、背後から「人間はあなたを見捨てるかもしれないのに?」という声が。

慌てて振り返るも、そこには誰の姿もなし。

ほっと息をついたとたん、「クロエ」と名を呼ばれます。
なんと、そこには右目を包帯で覆ったオーガストの姿が。

慌てて駆け寄るのですが、以前とは雰囲気が違うオーガストの様子に、クロエも異変を察知します。

「研究はどうなった?完成したのか?」と近づいてくるオーガストの眼は、以前のオーガストとは違いました。

ダプシェの研究の提供を断るクロエ。
オーガストは無理やり押さえつけて血を吸い、「誓え。お前のその力を…ダプシェの叡智を、私が命じるままに使うと…」と呪いをかけようとしますが、クロエの力によってはじかれます。

突然目をうずくまり、右目を抑えるオーガスト。
「やめろ!やめろ…これ以上私に…おかしなものをみせるな!!」と。

発作のようなそれが収まると、「クロエ…私は…」と何か言いかけながらも何も言わず立ち去るのでした。

 

それから30年後。

ルスヴン(オーガスト)が人間と話をまとめ人間と教会の戦いは休戦になったと、からくり人形の格好をしたマキナ候が知らせに訪れます。

ルスヴンはオリフラム大公家の養子として迎えられ、その権威で元老院の一員に。
使えぬ老いぼれ共をあの手この手で蹴落としていく様は、いっそ痛快だったと語るマキナ候。

ただ、休戦とはいえ完全なる共存ではなく、吸血鬼はここではない一歩向こう側の世界に移り住むことになったと。
そこは、人間が異界と呼び、吸血鬼が理想郷と呼ぶ空間。

この世界には、ここと同じ様でどこか違う写しのような閉鎖空間へと繋がる点が至る所に存在している。
それは吸血鬼と同じく、混沌の際に発生した特異点。
欠陥ともいえる場所。

その空間の安全性が確認されたため、吸血鬼はそちらに移る事になったと。

そんなオーガストの快挙話に、「早く改竄装置を完成させなくちゃ」と気持ちが急くクロエ。

「儂と一緒に来る気はないのか?」というマキナ候の言葉に、「私は…ダプシェでしか生きられないわ」ときっぱり断ります。

 

それから半世紀以上の時が過ぎ、研究者たちはいなくなりクロエ一人に。

森で寝転びながら「私一人で…どうして今も研究を続けなければならないのだっけ…」と考えていると、「寂しいからでしょう?」とネーニアが話しかけてきます。

「ジェヴォーダンはあなたを閉じ込めるための鳥かご。自由になるためには、かごを壊すしかない。翼の代わりに牙をむいて、鳥ではなくそう獣になればいいのよ」と悪夢をみせるネーニア。

ハッと気が付き、慌てて城に戻ろうと走り出すクロエの耳に、ネーニアが「かわいそうなクロエ。あなたの望みはなぁに?」とささやきかけます。

「うるさい!」と耳をふさいだ瞬間転んでしまいます。
さらに、枝の折れる音に人の気配を察知。

「誰なの!?」と荒げた声を上げると、茂みから出てきたのは少年でした。

「僕は…ジャン。あ、あなたはもしかして、白銀の魔女さんですか?」と頬を真っ赤にしつつ、たどたどしく言葉を口にするのでした。

 

 

ジェヴォーダンの獣の正体

森に現れる薄灰色の髪の少女。
なんの悪さをするわけでもなく、いつ見ても年をとらない小さな魔女。

「死んだ爺ちゃん婆ちゃんから何度も白銀の魔女の話は聞かされていたから、クロエに初めて会った時は本当に嬉しかった」と頬を染めながら話すジャン。

…と、突然、クロエに吹っ飛ばされたときにできた傷をなめるジャン。
「うん、やっぱりクロエの血のほうがおいしいな」と嬉しそうに言うジャンに、今さながらジャンが吸血鬼だったことに気が付くノエ。

今まで人間と吸血鬼のどちらかと気にしていなかったと言うノエに「変なやつだなぁ」と屈託のない笑顔をみせます。

実は、ジャンも隠された吸血鬼の一人だったのです。

 

その時、城が激しく揺れます。
クロエが装置を作動させたことによる揺れでした。

塔の一角から天に向かって伸びる光。

その様子は、教会から派遣されていたアストルファも、ジャンヌの案内で城に向かっていたヴァニタス達一行も目にします。

光を目指して走り出すヴァニタス達一行。
それを止めようとオオカミが襲ってきます。

さらに、再びの「アントワーヌルイ15世の第一銃士」の姿に、「ここは呪持ちによって作られた閉ざされた世界だ」と分析するヴァニタス。
その言葉に、ジャンヌは衝撃波で上空に飛び、そのまま城へと一気に入り込みます。

ヴァニタスも瞬時にジャンヌにつかまって城に入り込みます。

 

その頃、ノエはスープに入っていた薬が効き始め、体の自由が利かない状態に。

そんなノエを、「ここから先、クロエの邪魔をしようとしたら僕はお前のことも殺そうとするだろう。だから、すべて片付くまでここで寝ていろ」と、近くの部屋に投げ入れます。

そして、自分の腕をひっかくと、流れる血をノエの口に。

「お前は“血を暴く牙”だと。それを聞いた時に思ってしまったんだ。誰か一人でいい、僕たちのことを覚えていてほしい…って」と。

流れ込むよう見えるジャンの記憶。

「なぜ…俺を助けるんですか?」と手を伸ばすノエに、「お前は僕をジャンヌから助けてくれたから」とにっこり微笑むと、扉を閉めてクロエの元へと急ぎます。

ジャンはこれまで、クロエ以外、誰からも守ってもらったことがありませんでした。
母は自分を見ようとしなかったし、父には殴られ続けた。

「どんな理由であれ、誰かに守ってもらえたのは嬉しかった」とつぶやくジャンに、ネーニアがそっと近寄ります。

「クロエはもう動き出しているよ」という言葉に、「クロエを貶めた人間も、クロエを見捨てた吸血鬼も、全て僕が喰らってやる」と、全身を巨大な獣の姿に変えるジャン。

その出た先には、ジャンヌの姿が。

 

頭を扉にぶち当てるノエ。

ジャンがどうしてジェヴォーダンの獣になってしまったのか…その出来事が走馬灯のようにノエの頭の中に流れ込みます。

 

「そういえばダプシェの侯爵が昔からおかしな研究に手を染めてるって話があるよな」

「森に現れる魔女は、その研究で作られた化け物だった聞いたぞ。」

「獣はその魔女が従えているらしい」

「いいや、魔女自身が獣に化けるんだ」

必死にクロエはみんなを守ろうと、獣の正体を調べてくれているんだよと言っても聞いてくれない。

なら、僕がなってやる。
お前たちのお望み通りの姿に。

父親から撃たれた銃の痛みに涙が止まらないノエ。
見えた光に手を伸ばすと、そこにはヴァニタスの姿が。

「なんでおまえはまた死にかけているんだ」と言うヴァニタスの言葉に、我に返ります。

 

獣の正体はクロエではなくジャンだった。
しかもクロエもまた自ら望んで呪い持ちになった。

その話に、「とんだ無駄足だったな」と吐き捨てるように言うヴァニタス。

好きで呪い持ちになったのであれば、治療してやる必要はなし。

「改竄装置を使った何をするつもりかは知らんが、お前が見た記憶通り獣などそもそもいなかったのだとしたら、相当な恨み辛みがあるだろうな」と。

そんなヴァニタスの言葉に、放っておくことはできないというノエ。
「彼女の本当の望みがなんなのか。何が彼女たちにとっての救いなのかも、それを知ろうとしないまま離れたくないんです」と。

そんなノエに、「まぁ、どちらにせよ、ヴァニタスの書は回収しなければならないからな」とため息をつきつつ、ヴァニタスも付き合う事に。

 

が、二人で向かう途中でアストルファと遭遇してしまいます。

「おやおや、あなた方もご無事でしたか。残念です、本当に」とにっこり微笑むアストルファ。

刃を向けてくるアストルファに、ノエは「ここは俺に任せてください」と前に出るのでした。

 

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