「追憶」青島 武

追憶 (小学館文庫) [ 青島 武 ]

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2017年に降旗康男監督、岡田准一主演で映画化された事でも記憶に新しいヒューマンサスペンス。

一見、単純な殺人事件のお話にみられますが、その根っこには深い人間ドラマが!!
殺人事件は表面的なものでしかなく、実はもっと重大な事柄があり、それを知った時の感動(?)はさすが映画になるだけあるなと思ったほどです。

ストーリーはこちら↓


2006年3月、王貞治監督率いる日本代表は、第一回ワールド・ベースボール・クラシックで世界の強豪と激戦を演じていた。

同じ頃、北海道警察本部刑事部捜査一課の四方篤は、すすきのラーメン店で、野球仲間だった川端悟と29年ぶりの再会を果たす。
川崎市在住の川端は、金策のため北海道にやって来たという。

その翌々日、小樽市郊外の臨海部で川端悟の刺殺死体が発見された。
彼は死の前日、娘との電話で「懐かしい人たちに会った」と言い残していた。

四方は、容疑者として浮上した人物もまた、古い友人であることを知る。

*「追憶」裏表紙より抜粋


 

四方篤…北海道警察本部刑事部捜査一課の刑事。
豊田…四方の上司
美奈子…四方の妻。別居中。
清美…四方の母。

川端悟…川端ガラスの社長。四方の少年時代の野球仲間。
小川…川端ガラスの従業員。
小夜子…悟の妻。
梓…悟の一人娘。小学高学年。

田所啓太…田所興業の社長。四方の少年時代の野球仲間。四方が知らない秘密を抱えている。
真理…啓太の妻。実はある人と深い繋がりがあり…。

仁科涼子…アンブレラの店主。アツシたち3人を世話する。
貴船誠一…刑務所上がりの涼子のヤクザの元カレ。しつこく付きまとう。
山形…トラックの運転手。アンブレラの常連。




野球の中継をトランジスタラジオで聴くアツシ。
母親と連れ込んだ男との会話を消すために、イヤホンで聞いている。

翌朝、トイレに起きると母親と男の姿がない。
「しばらく小樽の叔父さんの家にいきなさい」と書かれた書置きのメモだけが残されていたことから、気が進まないものの叔父の家へと向かいます。

海沿いの小さな駅で電車を降りると、雨が…。
仕方なく雨の中を歩き始めるアツシ。
その後ろを、いつの間にか同じくらいの年頃の男の子が、脚を引きずりながらついてきます。

咄嗟に振り切ろうと速足になり、角を曲がると精一杯の力で闇雲に走り、気が付けば海水浴場に出ていました。
もう一歩も歩けず、放置されているプレハブ小屋の軒下にうずくまっていると、突如頭上に現れた赤い傘。

見上げれば、知らない女性の姿がそこにあります。
そして、「ケイタ、サトシ、見つけたよ!」と、後ろにいた男の子二人…一人は駅までアツシを追いかけてきた少年と、大人びた顔つきの少年がに声を呼ぶのでした。

リョウコと名乗る女性に連れられて行った先は、海岸近くに立つ喫茶店「アンブレラ」。
リョウコは、この店の女主人でした。

駅で追いかけた少年・ケイタは、親元から家出。
サトシは児童養護施設から脱走中。
リョウコさんに助けられて今ここにいるという、不思議な関係。
アツシもおじさんの家に行くのをやめ、ここにいることにします。

札幌市にあるとある賃貸マンションで、虐待による幼児の死亡事件が発生。

現場に駆け付けた四方は、子どもが描いたスケッチブックに、雨の日の情景が描かれているのを見つけます。
絵の中の子どもは傘を持っていない絵は、まるで被害者である子どもの自画像のようでした。

母親の愛人・西川を過失致死で緊急逮捕し、警察車両に。
「煙草をくれよ」という愛人の男に、与えるふりして火のついたタバコを顔に向かって突きつける四方。
「おまえが、あの子にしたことだ!」と怯える西川に怒鳴りつけるのでした。

 

刑事部のフロアで、豊田からの誘いを断り帰りかけると、廊下で警察学校の同期であり組織犯罪対策課の上村が待ち受けていました。
実は、上村は西川をマークしており、任意同行でなくパクったことにちょっと腹を立てていました。

子どもが虐待されているのを知っていたのに何もしなかった上村に怒りを覚える四方。
上村に一歩踏み出そうとした瞬間、電話が入ります。
相手は母親。
とたんに、四方のなかで何かが急速に冷めていきます。

 

家に帰ると、洗濯とアイロンをかけるために来ていた妻の美奈子が帰るところでした。
「お義母さんから電話があった」と告げると、すり抜けるように去っていきます。

家の留守番電話を再生すると、母親から金を無心するメッセージ。
四方は録音を消去しテレビの野球中継を見るものの、そこには子どもの頃に感じていた興味はなくなっていたのでした。

「川端ガラス」と書かれた車を運転する川端悟は、野球中継を聞きながら苛つていました。
会社の資金繰りがうまくいっておらず、従業員の給料さえ滞っている始末。

隣の助手席に座っている従業員・小川に「明日から留守にするからよろしくね。給料はなんとかするから」と言うも無言の対応。

作業が終わり家に帰宅すると、取引先から支払いの催促が来ていたことを仏頂面で話す小夜子。
悟は「金ならあてがある」と、金策のために明日の午後の飛行機で北海道に行くことを小夜子に告げるのでした。

田所興業を営む田所啓太が家屋の解体現場から事務所に戻ると、そこには臨月を迎えた妻の真理と不動産屋で付き合いのある倉本が待っていました。

事務所と家を建てるために購入した土地の売買契約。
「いい場所見つけたね」と倉本からも太鼓判を押されています。

「俺もいつか自分の家を建てたい」という仕事仲間の阿川に、「その前に嫁さんをみつけないとな」と言う田所。
真理も加わって、和やかな雰囲気です。

認可外保育園で働く美奈子に、亡くなった子どもの絵…なぜ傘をさしていないのかを聞く四方。
「描かないんじゃなくて、描けないのよ。傘はね、自分を守ってくれる象徴なの」という言葉に、子どもの安らかな死に顔が思い浮かびます。

ラーメン屋で夕食をとりながら、子どもの絵が美奈子との状態に重なっているような感覚を覚えていると、ふいに感じる強い視線。
なんと、子どもの頃の野球仲間である、サトシ…川端悟がそこにいました。

 

場所を居酒屋に移すと、自分の近状について話し始めるサトシ。
四方は、自分が刑事であることを隠しながら、適当に答えていました。

野球の話、そして取り留めのない話が尽きる頃、サトシが口にしたのは「金貸してくれないかな?」

戸惑いながらも断る四方に、ケイちゃんから借りるからいいよというあっさり。

これまで何度か助けてもらった事があると聞き、動揺する四方に「ケイちゃん、俺の頼みは断らないんだよ。あの時、ケイちゃんが言ったんだよね、もう会わないようにしようって。だから、アッちゃんは忘れちゃっていいんだよ」と意味深に言うサトシでした。

翌日。
四方が殺人事件発生の知らせを受け向かうと、レンタカーの車の中で複数の刺し傷を受けている川端の遺体が。

唖然とする四方。
嘔吐感に堪えられずその場を離れると、はるか先に懐かしいアンブレラの廃墟が。

なぜこの場所に来たのだろう?
金策のために田所啓太と会うと言っていたサトシ。

四方は動揺を隠しながら、割り振られたエリアの聞き込みに回るのでした。

 

 

少年3人は野球好きだったことからも、その当時の野球中継が入ってくるのが、時代を感じさせます。
リアルな野球中継が特徴的。
話のスパイスとしていい味出しています。
哀愁を誘う、誘う!

殺人事件は蓋を開ければ大したことなかった(!?)…というか、犯人が定番すぎたのでしたが、この話の本質は別のところにあるので、その味気無さが逆によかった。

最初は殺人事件に目がいっていたのが、別の深い秘密にスポットライトが当てられるようにあると、この本の見方がガラリと変わってきます。
メインはこっちだったのかと!

最初は陳腐な殺人事件に思えますが、最後の方で本当の主題が見えたとき「あぁ、映画化されるのも納得だわ」と思いました。
映画は見ていないので、こんどDVDを借りてみようと思います。




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