キングダム(21) (ヤングジャンプコミックス) [ 原泰久 ] 価格:594円 |
輪虎に激しく切りかかるも、なかなか痛手を与えられない信と王賁。
輪虎からの容赦ない攻撃に、信の身体は傷だらけ。
王賁も、初日に受けた傷から次第に動きが鈍くなります。
一方その頃、壁も左軍において千人将として奮闘中。
苦戦する王翦軍の中で、壁隊だけが孤軍奮闘していました。
王翦の本軍が後退しているという情報に、前線の部隊が置き去りになっていることを懸念する壁。
さらに姜燕の本軍が向かっているという伝令に、不本意ながら陣をたたんで後退することを決定します。
そんな壁のところに、後退していると思われた王翦本人が兵2千を連れて突如現れます。
壁にその2千の兵を預けたうえに周辺の部隊を合わせた5千の兵を率いて姜燕を迎撃しろとの命を下しにきたのです。
突然の五千将昇格に、驚く壁。
王翦は、壁を囮として使おうとしていたのでした。
限界を超えた一撃
輪虎の本陣に奇襲をかけた飛信隊と玉鳳隊を包囲封鎖するべく、ぞくぞくと動き始める敵部隊。
傷による影響で、動きが完全に止まる王賁。
戦いは、信と輪虎の一騎打ちになっていました。
意識が飛びそうになりながらも、限界を超えはじめる信。
信の強烈な一撃に耐える輪虎は、「化け始めたか…!」といち早くそれに気が付きます。
そして、ついに信の猛攻撃を防ぎきれず、左手の指を数本、斬り落とされてしまうのでした。
はずみで馬から落ちてしまった信のところに駆け寄る王賁は。
ここが潮時と判断し、「退がるぞ」と決死の脱出を試みます。
駆け引き
秦左軍五千人将として、“囲地”と呼ばれる場所で魏軍に圧倒的優位な戦いを仕掛ける壁。
これなら廉頗四天王将軍・姜燕を討てると厳しい表情で戦況をみていた壁ですが、いつのまにか他所にいた魏軍に背後を取られ、前後左右挟まれピンチの状況に追い込まれてしまいます。
追い詰められた壁の前に姿を見せる姜燕。
壁に向けて矢を向けられ、その迫力に動けない壁。
死を覚悟した壁でしたが、崖の上の一角から王翦が部隊を連れて煙のごとく現れ助かります。
立場が瞬時に逆転。
壁軍を囲って優勢だった姜燕軍が、あっという間に王翦軍に囲まれた状況に壁は、「はじめから王翦に勝てぬと見越して…」と自分が囮にされたことに気が付きます。
動揺している壁を無視し、「うぬの負けだ、姜燕」と、自分の臣下になることを姜燕に提案する王翦。
全員の命を助けるだけでなく、自身の領地内の土地を与えて厚遇すること。
そして、姜燕を側近にすると…。
王翦の提案に、矢を射ることで「否!」と答える姜燕。
交渉は決裂です。
…と、そこに、今度は廉頗が王翦軍を蹴散らして登場します。
再び秦軍が取り囲まれ劣勢に。
王翦の登場に魏軍の士気が一気に上昇!
その熱は、遠く離れた場所で戦う信や輪虎にも伝わったほど。
廉頗の登場で再び魏と秦軍が入り乱れた戦いに。
王翦は乱れた軍を整理させると、「私は絶対に勝つ戦以外、興味はない」と全軍を順次退却させます。
思ってもみなかった行動に、廉頗をはじめ驚きを隠せない魏軍。
廉頗・姜燕連合軍による追い打ちが始まります。
追いかける中、「秦六将と戦ったことがあるか?」と問いかける廉頗に、一番熱かったのは摎だが戦いづらかったのは白起(はくき)と答える姜燕。
その答えに、「儂もそうじゃった」と笑います。
廉頗は、悠々と退がる王翦に白起の戦い方との共通点を見出していたのです。
そこに、慌てふためく様子で先方にいた兵士が駆け寄ってきます。
なんと、追いかけた先には巨大な城が築かれているというのです。
見事な築城に、「やりおる」と笑みを浮かべる廉頗。
なぜなら、戦略の中に築城の手を持つ武将は滅多におらず、器の大きさを知るには十分だからです。
…と、ふと何かに気が付いた廉頗。
「なんじゃあ、王翦、貴様はぁ~」と不機嫌そうな声を上げ舌打ちすると、この砦を包囲して野営することを告げるのでした。
決戦前夜
なんとか仲間の元に戻ってきた信でしたが腕の傷が深く、その状態は羌瘣も目を見開いて息をのむほど。
行軍の道中でずっと集めてきた秘薬を使います。
輪虎について「そこいらの武将とはわけがちがう…あいつは戦を重ねて死線を…限界を何度も超えてきた男の強さを持ってんだ」といいつつ、自分も限界を一つ越えたような気がすると語る信。
信の気配が一回り大きくなっていることを感じていた羌瘣は、その話に納得するのでした。
一通り治療と話が済むと、明日の闘いに向けて信の横に寝る羌瘣。
同じテントに寝る事を不思議に思う信に、「さっきの薬はたまに拒絶反応が出る。しばらくここで様子をみる」と理由を言うのですが、実は羌瘣もケガを負っていたからでした。
その頃、王翦軍が立てこもる土城を囲いながら酒を飲む廉頗。
その表情はとても不機嫌。
「副将の分際で。あ奴の挙動は、己の存在をこの戦争の秦軍の最上ととらえていることを物語っておる」と、王翦にひどくご立腹。
横に立つ姜燕も、廉頗の言葉に同意。
王翦のことを「ゆがんでおる」と判断する廉頗。
これまで、昭王の頃よりまったく日の光の当たる場所ではなく、陰の部分に置かれていた理由を知るのでした。
すっかり王翦に対しての興味が失せた廉頗は、この場は姜燕にまかせ、明日は本丸である蒙驁に狙いを定めるのでした。
蒙驁の方でも廉頗との戦いが近いことを感じ取り、蒙恬を自分のところに呼び寄せていました。
両頬をぷっくらと赤く腫らした状態で参上した蒙恬。
勝手な行動に、土門と栄備から一発ずつ殴られたのでした。
「それくらいで済んでよかったのぉ」と笑い酒をすすめる蒙驁の様子に、何かを感じ取る蒙恬。
「この年になるとわかるところがあるのじゃ」と、死力を尽くす戦いが近づいていることを述べます。
「気負わず、無茶せずが白老の戦い方でしょ」という蒙恬に、今回の戦では、自分は退くつもりはないときっぱり宣言するのでした。
魏山陽大攻略戦最終日開幕
翌朝。
驚異の回復力を見せた信。
明け方、羌瘣の寝ていた箇所に血の染みがあったのに気が付いた信ですが、あえて口にすることはなく、「今日こそ魏軍をぶっつぶすぞ!」と羌瘣に向けて宣言し、さらに隊の士気を高めます。
その日、飛信隊が配属されたのは後方予備隊。
玉鳳隊・楽華隊も同じく。
不満をいう信に、秦中央軍将軍・栄備は「おそらく輪虎も出てくる。持ち場の広い後方予備の方が当たりやすい」と。
後方予備隊に回したのは、信の実力を認めた栄備の配慮。
「次はしくじるなよ、信」と激励して去ります。
一方、失った自兵の損失を介子坊兵で補おうとしていた輪虎ですが、魏良に「魏軍の力を信用してくだされ」という言葉に動かされ、介子坊の私兵を待つことなく戦いを始めます。
輪虎軍でも一番に勢いのある軍が攻める先に待ち構えるのは、玉鳳隊と楽華隊。
さらに別の二つの部隊が大きく渦を作るように回り始め、中間地点に突撃。
将軍栄備が討ち取られ、一気に蒙驁本陣へと迫ります。
が、それを止めたのが飛信隊。
羌瘣に200の指揮を任せ、残りの兵で輪虎を阻止するべく動いたのでした。
本陣から信と輪虎の闘いを見ていた蒙驁でしたが、今度は自分が動くときが来た事を悟り、本陣の裏側へと移動します。
そこには、廉頗の姿。
「一騎打ちでカタをつけるぞ!」と挑発する廉頗の言葉にのらず、かねてからの計画を始める蒙驁。
本陣の全軍を後ろに回し、布陣を作ります。
その様子に魏兵は「なんとも不格好で無駄が多い」といいますが、廉頗だけは「これは悪くない」とにんまり。
砦に突撃する廉頗軍ですが、あちらこちらで罠にかかりやられてしまいます。
蒙驁が作り上げた砦は「断道の計」。
一見、不格好で隙だらけだけれども、いざ登ってみると下からは見えなかった行き詰まる道がひしめいている。
はまれば格好の狩場になる砦だったのです。
その頃、魏に隣接する趙の城・環甘では、李牧が戦状の報告を受けていました。
「蒙驁はまずいですね。今頃、廉頗将軍に背後をつかれていることでしょう」と予測しますが、近くにいた臣下の「蒙驁の雪辱はならぬようですね」という言葉に自分の予測を却下します。
なぜなら、強き武将が足をすくわれる時、そこには必ず油断がある。
廉頗将軍が蒙驁を覚えているとしたら、それだけで蒙驁は有利。
勝っていた側は勝手に相手の器の程を決めつけてしまうから。
まるで仕掛けられた場所がわかっているように、罠を交わしながら進む廉頗。
次第に近づく廉頗軍にうろたえる臣下とは逆に、蒙驁は落ち着いたもの。
なぜなら蒙驁は、廉頗が砦に入る前に罠の位置を予測していることをお見通し。
だからこその奇策を用意していました。
廉頗が旗を掲げたのをみると、「動かせ!」と命を出す蒙驁。
すると、柵が動かされ新しい道が出現。
攻略した迷路をつくりかえられ、廉頗軍は行き止まりへと追い込まれてしまうのでした。