キングダム(20) (ヤングジャンプコミックス) [ 原泰久 ] 価格:594円 |
飛信隊の働きで、流れが一気に変わった戦場。
輪虎はその流れを元に戻すべく、元凶(信)を仕留めに向かおうとしますが、そこに廉頗による魏の第二陣が出動する合図が鳴り響きます。
音が止まると、戦場を煙幕が覆います。
あっとうまに視界が利かなくなり、戸惑う秦軍めがけて大量の矢が降り注ぎます。
「自分たちの味方までも!?」と驚く秦軍ですが、矢が降る場所に魏軍はなし。
煙幕の中、正確に秦軍だけを狙い撃ちにする方法にいち早く気が付いたのは羌瘣。
音で位置を送られていることを信に伝えます。
さらに魏の装甲戦車も入り味方が倒れていく状況に焦る信。
羌瘣が「一つだけ策がある」と提案します。
その策とは「音を発して攪乱する」というもの。
つまりは、合図の妨害です。
入り乱れる合図の違いを聞き分けられる羌瘣の耳の良さに気が付いた信は、さらに耳が発達している青石族を呼び、本陣から発している銅鑼の場所まで誘導するように頼みます。
途中、魏軍と遭遇しながらも、騎馬隊だけで本陣を目指す信たち一行。
次第に煙が濃くなり、晴れた先に本陣が出現!
そこには、魏第二軍の司令塔である、廉頗四天王軍師・玄峰の姿が。
煙の中から出てきた信たちに、雨のような矢が放たれます。
大量に飛んでくる矢の中を、先頭を切って走る信。
その姿に、楚水をはじめとする騎馬隊も勢いよくついていきます。
激しくなる矢の攻撃に、千人将・信を守るため、信の前にでる烈兄弟。
「余計な事をすんな!」と怒鳴る信に「立場をわきまえぬか、大将!」「この場であんたを失えば、我らの全滅は必須!」と自ら矢の盾になります。
やっとの事で弓隊の元に近づき、蹴散らそうとした瞬間、玄峰が仕掛けた罠が作動します。
なんと、地面に騎兵を仕留めるための杭を仕掛けられており、前方にいた信たち数名は馬から放り出され、本陣の兵800の前に。
後方の仲間達とも分断。
突然の出来事に、一気に士気が下がる飛信隊。
信の喝も届きません。
一斉に襲い掛かってくる魏兵に押される信達一行でしたが、そこに王賁率いる玉鳳隊が登場。
分断されていた飛信隊の後方部隊…羌瘣たちと合流した信は、再び勢いを盛り返し玉鳳隊を追いかけます。
前日のケガが影響しているのか、あっさりと玉鳳隊に追いついた信。
「かすり傷一つで青くなってんじゃねぇぞ、坊ちゃんが!てめぇらは俺らの後方支援でもやってろ!」と怒鳴ります。
信の言葉に、「激のつもりか…どこまで恥辱を!」と怒り狂う王賁。
本陣が近づく中、舞い上がる砂煙に気が付く王賁。
「何か陣形を変えているのか…!?」と注意していると、なんと退却!
呆然とする飛信隊と玉鳳隊。
さらに、魏軍の一軍も含めた全軍が引いていきます。
軍略家の玄峰は、武将のような意地はなし。
詰められれば引くだけ。
「あまり欲を出すと、早死にするでな」と引く中、部下の一人の叫び声で後ろを向きます。
すると、そこには玄峰を追ってきた信が投げた矢が!
玄峰の足元に勢いよく刺さります。
「外した!!」とそれでも追いかけようとする信を、慌てて止める楚水。
「敵を退かせただけで十分だ」という楚水に、「一つも十分じゃねぇ!」と悔しそうに怒鳴るのでした。
確かにその通りで、戦場を覆っていた煙幕が消えた時、そこにはすさまじい数の秦軍の死傷者が…。
知らぬ間に大敗していたのです。
動き出した副将
緒戦を惨敗した蒙驁軍。
自軍の士気を上げるためにも、信と王賁の二人が、敵本陣を退かせたことを強調吹聴します。
歓声が上がる中、「これじゃ逆にさらしもんだ。敵将逃がしたバカ二人ってな」と不機嫌な信。
隣を歩く王賁は、「恥ずかしいのはお前の格好だ。貧乏臭すぎて、皆の士気が下がる」と、相変わらずの二人。
そんな二人の様子を遠くからみつめる蒙恬。
「二人にはちょっと差をつけられたかな」と余裕の表情です。
二日目。
信達の場所とは別の場所で、すでに闘いが繰り広げられていました。
攻め込んできた廉頗四天王将軍・姜燕(きょうえん)を迎え撃ったのは、秦軍左軍将軍・王翦。
両軍の力は拮抗し、一進一退の攻防を繰り広げていました。
が、中華十弓の一人である姜燕が繰り出す伝令の矢は、山々をはさんで走る各隊を自在に操り、王翦軍を翻弄していました。
その様子に、「どの武将も姜燕の攻めの強さに面食らう」と、はしゃぐ部下とは反対に冷静に戦況を見ている廉頗。
普通ならばこのまま姜燕に押し込まれて終わるが、あの王騎が六将級の武将と評価した王翦ならばそうはならないだろうと警戒を劣りません。
そこに、廉頗四天王将軍・介子坊の方でも動きがあったことが伝えられます。
相手は秦軍右軍将軍・桓騎。
二人の副将が動き始めた事は、信達がいる中央軍も察していました。
中央軍の相手は、魏軍中央軍将軍・輪虎です。
そこに、蒙驁将軍が激を飛ばしにきます。
その姿に盛り上がる中央軍。
蒙驁将軍は、左右で副将達の軍が戦っていることを述べ、機がくるまで中央軍の我々は、ただひたすらに守りに徹するように言います。
我が兵たち、わが戦友たち、兄弟たち、わが息子たちよ…という蒙驁の語りかけに、末端の兵の心まで熱く震わせます。
「さすが白老大将軍だ、燃えてきたぁ」と熱くなる信を、「行きすぎ。飛信隊はそこまで」と止めたのは蒙恬でした。
玄峰 VS 桓騎
開戦より4日目。
魏軍の将・介子坊は、桓騎の闘い方に頭を悩ませていました。
なぜなら、桓騎は正面から戦う事はせず、山々に軍を分散潜伏させたゲリラ戦を展開。
虚をついて急襲してはすぐに退く…を、昼夜問わずに繰り返していたたからです。
深追いすれば集団で殲滅にくるだけでなく、捕まえた将をさらし者にした上に、全員の目玉や耳を送ってくるなど、常軌を逸したやり口。
正攻法を得意とする介子坊にとっては、やりにくい相手でした。
そんな介子坊の様子から、急きょ、玄峰が交代することに。
そして、戦場の状況から、隠されていた桓騎の本陣に目星をつけ、介子坊を向かわせます。
玄峰の言葉通り、桓騎の本陣を発見すると攻め込みます。
介子坊本軍が桓騎陣に襲い掛かったのは、伝令によって玄峰の元にも届きます。
「ならば、終わりじゃ」と確信する玄峰ですが、ちらりとみた伝令係の甲冑に血が付いていることに気が付きます。
瞬間、「じじぃのくせに目がいいな」とつぶやくや、一瞬にして玄峰以外の者が殺されてしまいます。
そして、伝令係の一人が兜を脱ぎ、玄峰に近づきます。
桓騎であることに、気が付く玄峰。
桓騎の態度に、「筋は悪くない…か」と、弟子にしてやってもよいぞと言う玄峰。
桓騎「いるかよ」と、その首を切ってしまいます。
玄峰が討たれたことは、すぐに魏軍に伝えられました。
その報告に、怒り心頭の廉頗。
玄峰の損失は大きく、戦い方を考えるべく動きます。
蒙恬の策
夜。
玄峰が桓騎によって討たれたことを、飛信隊に伝える蒙恬。
もっと詳しく話を聞く信をさえぎり、見舞いと称して王賁の元に信も連れて行きます。
王賁のテントに押しかけ、話す話題はやはり玄峰の事。
桓騎は玄峰を討った後、姿を消したかのように見えたが、実は後方に退がって軍の復旧に務めている。
玄峰は桓騎を侮ったが、桓騎も介子坊を侮っていた事からも、桓騎の本陣は介子坊軍によってあっという間に半壊されたと話す蒙恬。
そして話題は、中央軍に。
この3日間、正面にいる輪虎軍は左右の軍が押し込むを待っているだけで本気をだしていない。
長年、廉頗の参謀を務めてきた玄峰は、若き日の廉頗の師(輪虎の師でもある)。
その玄峰が討たれたことで、怒りに任せて動いてくるかもしれない…と予想します。
輪虎についても、詳しい情報が。
四天王の中で最も危険な人物で、廉頗の大戦では必ず輪虎が決定的な仕事をしている。
とにかく恐ろしい突破力を持ち、輪虎に本陣を突かれた軍は数知れぬ。
過去に王騎将軍も本陣を突破され、輪虎に一太刀を浴びせられているという話に、驚く信。
その話から、輪虎が本気を出していないことを悟ります。
「左軍か右軍が蒙驁将軍の後ろに回り退路を断てば、輪虎は一気に突っ込んでくるだろう」と予測する王賁。
「本気の輪虎を俺達、中央軍が止められると思うかい?」という蒙恬の問いに、「ハッキリ言って無理だな」とバッサリ。
「やっぱりそうだよね」と同意する蒙恬たちに、「桓騎が玄峰を討ったんなら、その上を目指す俺らが輪虎を討たなくてどうするってんだ」と激を飛ばします。
そんな信に蒙恬は、「じい様の本陣を狙ってる輪虎は確かに討ち取らなくちゃならない」と、楽華・玉鳳・飛信隊の三隊で討ってでることを提案します。
翌日。
配置につく飛信隊。
緊張した面持ちで見つめる先には、蒙恬の姿が…。
昨夜の蒙恬の提案が頭をよぎります。
一方、蒙恬は、楽華隊に珍しく激を。
その様子に楽華隊の面々も「珍しい」と最初は訝しがりますが、蒙恬の言葉から事態を察します。
「悪いがよろしく頼むよ、みんな」という蒙恬の言葉に、楽華隊の士気も上がります。
普段、部下頼みをしない蒙恬が無理を強いてくる時は、重大な責務があることを知っているからです。
そしていよいよ、開戦(5日目)。
中央軍の将軍に、楽華隊は独立遊軍として兵200を残し持ち場を離れると伝言を入れると、輪虎本陣めがけて馬を走らせます。
その様子を見つめる信と王賁。
昨夜のやり取りが思い出されます。
「廉頗が出てきて、この魏攻略の最終戦は大きく意味が変わってきた」と、これまでの闘いとは違い、中華全土が注目しているものになったと語る蒙恬。
将軍の首一つとっても、まったく重さが違うと。
今のままでは輪虎は討てない。
輪虎が討てなければ大将蒙驁の首が危ない。
もし蒙驁が討たれるようなことがあれば、趙軍ではなく魏軍を率いた廉頗に完敗したことになる…と。
「“天下の大将軍”などとどの口がたたく!」という言葉に、信はぐうの音も出ず。
「お前の口から“天下の大将軍”という言葉が出るとはな」という王賁の言葉に、ふっと正直な気持ちを語ります。
漂が死んだときの事を思い出す信。
「身内が殺される辛さはわかる」と、飛信隊は蒙恬の策に乗ると請け負います。
「作戦次第だ」と答える王賁に、「まずは楽華隊が単独で前に出て、一気に輪虎本陣を目指す。楽華隊は輪虎を狙わない。そこで狙うのは輪虎兵だ」と、思いがけない作戦を持ち掛けます。
輪虎の予想を裏切る形で、狙ったところに入る蒙恬。
この時点では、まだ輪虎も真の狙いに気が付かず、ただの奇行であり、無駄死にする行為としてか捉えていません。
遠くからみつめる蒙驁はすぐに呼び戻そうとしますが、蒙武に言われた言葉を思い出し「このまま自由にやらせるようにと」と訂正します。
守備軍の継ぎ目に入り込み、輪虎兵を狙い撃ちする楽華隊。
輪虎は化物だが、一人で数百数千の敵を突破できるわけではない。
そこには必ず、共に修羅場をくぐり抜けてきた輪虎兵の存在がある。
それらを狙い撃ちすることで、現実的に輪虎が蒙驁本陣を討つことが不可能になる…というのが蒙恬の考えでした。
楽華隊の闘いに、不安そうな表情の信。
王賁も、蒙恬は今回の作戦で本当に腹を据えていることを感じとります。
そしていよいよ、蒙恬から合図が!!
飛信隊、玉鳳隊が待っていましたとばかりに輪虎本陣めがけて走り出します。
輪虎も、自兵が狙われ、その数がだいぶ減ってきている事に気が付き、自兵に引き上げるように命令を下します。
魏軍は先に入った楽華隊への闘いに気を取られ、飛信隊・玉鳳隊の2隊に対しての攻撃は動きが鈍く、すんなりと本陣まで近づきます。
飛信隊・玉鳳隊が近づいてきたのを察した蒙恬は、楽華隊が減ってきていることからも後退。
ただ、二手に分かれて敵をひきつけ、本陣までの道を飛信隊・玉鳳隊に作ります。
本陣が近づくにつれ、楚水達、元郭備隊の表情も険しくなります。
郭備の仇を討たんがために…。
ところが、寸前で輪虎兵に捕まり足止めをくらいます。
楚水は「我らにかまわず、輪虎の首をとってくだされ!」と、信を先に行かせます。
ためらっている信に、「この先まだ…あの男は飛信隊に必要だ」と、羌瘣が楚水の元に行くのを確認すると、ようやく「輪虎を討つ!」と本陣の輪虎の元にへと向かいます。
そして、ついに輪虎と対面する信と王賁。
信を見て、「また会ってしまったね」と言う輪虎。
「今度は逃げてあげないよ」と余裕です。
「そっちの槍使い君も含めて、君たちは…相手の力量をきちんと推し量れていない。二人掛でなら、この僕をどうこうできるとでも思ったのかい?」という言葉に、攻撃をしかける信と王賁。
輪虎は与し易そうな信は後回しにし、うるさそうな槍使いを先に叩いておくべきと、狙いを王賁に定めます。
輪虎と王賁がやり合っている中、飛び込んでくる信。
背後から信が近づくのを感じ狙いを信に定めるものの、信の一撃で吹っ飛ばされてしまいます。
これには皆、びっくり。
そして、そのまま輪虎に切りかかる信の攻撃を受けながら、実践向きと分析する輪虎。
相手の強さによって、より力を発揮しだす人間。
誰も多かれ少なかれそういうものではあるけれども、この子の落差はすさまじく激しい。
そして、一撃が異常なほど重い…と。
王賁も同時に攻撃をしかけますが、輪虎に二人して傷を負わされます。
輪虎の人間離れした動きに、「さすがに強ぇな。あの王騎将軍に一太刀浴びせたのは嘘じゃなさそうだ」と感心する信。
そんな信の言葉に、「その辺のことは茶化してほしくないなぁ。まぁ、王騎将軍を相手にすることがどんなことかわかるはずもないか」と返す輪虎。
すかさず、信は王賁が王騎将軍の一族であること、自分は王騎将軍から矛とその意志を受け継いだ男であり歴代最強の大将軍になる男だと激しい一太刀を浴びせます。
「てめぇを討った後、ついでに廉頗もぶっ殺してやらぁ」と切りかかる信の攻撃を避けると、その額に一太刀。
「あんまり調子にのらないでほしいな。君たちの人生は今日ここでおわるんだから」と言うのでした。