ヴァニタスの手記(7) (ガンガンコミックス JOKER) [ 望月淳 ] 価格:679円 |
ヴァニタスをクロエの元にいかせるべく、一人、アストルフォと戦うノエ。
アストルファの臨機応変な戦い方に「すごい!」と素直に感じつつも、なぜこんなにも吸血鬼を嫌うのか不思議に。
自然と「なぜ、そこまで吸血鬼を嫌うんですか?」と口からでてしまいます。
ノエの突然の質問に動きを止めるアストルファでしたが、「すいません。ただ知りたいと思ってしまいまして…」というノエの言葉に、遠い過去の吸血鬼との会話が脳裏に。
瞬間、激しい怒りが激しい攻撃となってノエを襲います。
アストルファの言葉に、「それはあんた個人の考えですか?それとも教会の総意ですか?」と厳しい口調で問うノエ。
ノエの脳裏に、先ほどのヴァニタスとの言葉が思い出されます。
「“獣(ベート)”なんて存在を前提に考えるからややこしくなった」と、一回忘れて考えて直せというヴァニタス。
獣による被害はさまざま。
中には本当に獣に襲われたものもいるかもしれない。
見方によっては、拷問の果てに死んでしまったように感じる者も多く、その極めつけが首を落とされた死体の存在。
つまり、教会による吸血鬼狩り。
獣を生み出したのは、教会による吸血鬼狩りだったのかもしれない…。
ジェヴォーダンの獣の真実
始まりは一人の村娘…隠された吸血鬼。
村の神父に吸血鬼であることを知られてしまい、殺されそうになった少女。
「私を殺せば他の吸血鬼たちがあなたを殺しにくる」と脅して逃げようとしますが、神父はそれを聞かず少女の首を切り落としてしまいます。
そして、神父は少女の話を司教に報告。
人間と吸血鬼の間に和平が成立して70年近くたつものの、まだ地方のほうでは吸血鬼への憎しみが強く残っており、また教会の分派も多くジェヴォーダンは宗教的んも不安な場所だったことからも、信徒たちの行動が次第に苛烈に。
やがては吸血鬼狩りへと姿を変えていきました。
そんな中、粛清場所の近くでオオカミに似た化け物をみたという話が広がり、司教たちはその話を利用することを思いつきます。
なぜなら、吸血鬼狩りは禁止されているから。
代行者に仕立てます。
異端者を屠る獣の牙は神の怒り。
神は人間の罪を罰するために獣を遣わした。
これは天罰であり、全ては神の思し召しであると。
ある日、クロエはその粛清現場を偶然みてしまいます。
しかも、逃げる際に吸血鬼であることを知られてしまいます。
ダプシェ侯爵であるエルマンに相談しますが、その数日後、息子と共に出かけた狼狩りで殺されてしまいます。
その後は、侯爵夫人が表向きは自殺で殺されます。
その話を侯爵の娘から聞かされ、ショックを受けるクロエ。
「お前がお父様に余計な事を言ったから、ダプシェが吸血鬼をかくまっていると教会に目をつけられた。村では獣はダプシェが操っているとまで言われているのよ!お前がいるせいで!!」
殺されそうになったところをジャンに助けられ、城に戻るクロエ。
お城の使用人も恐れを出して逃げ出してしまいます。
数日後、ジャンが様子をうかがいに村に行くと、パリから処刑人が来てくれているという話を聞きます。
村人たちも手に武器を持ち蜂起。
ジャンがいくら言っても、誰も耳をかしません。
ネーニアによって、獣に姿を変えたジャン。
父親によって銃で撃たれてしまいますが、クロエが助けに入ります。
元の姿に戻ったジャンを抱えて城に戻るクロエの前に、処刑人となったジャンヌが立ちはだかります。
どうしたらこの悪夢を終わらせることができるのか疲れ切っていたクロエは、ジャンヌに早く自分を殺すように願います。
でも、ジャンヌの目に涙があるのを見たクロエは、崖の上からジャンを抱いたまま飛び降ります。
落ちていくクロエに「本当にいいの?」とささやくネーニア。
「かわいそうなクロエ。クロエは何も悪くないのに。このジェヴォーダンに復習したいと思わないの?」とささやきかけるネーニア。
クロエの心にじわりと怒りが広がり、それは強い感情となって言葉に。
「憎いわ。そうよ許せない…絶対に。復讐、してやる!!」
その瞬間、まばゆい光となって辺りが照らし出されます。
何かがすごい勢いで書き換えられていくのを感じるジャンヌ。
「クロエ!!」と叫ぶのでした。
クロエの復讐
演算装置を起動させるクロエ。
ピアノの鍵盤に手をかけ、曲を奏でます。
そこに、ヴァニタスが到着。
ヴァニタスの書の在り処を問いかけます。
ヴァニタスの書に組み込まれていた石が気になって持ってきたものの、とれなかったのでそこらへんに置いたというクロエの言葉に愕然。
「あなたは私の敵と味方、どちらなのかしら?」と言うクロエの言葉に、ネーニアが「敵だよ!そいつは嫌い!」と近寄ります。
誰の味方でもないと答えるヴァニタスを、自動人形が襲い掛かります。
さらにネーニアも。
2対1となるも、ダンテが駆け付け2対2に。
…と、演算装置がひときわ強い光を放ち始め、クロエが「解析完了。座標確定」とつぶやきます。
その様子に、ネーニアが「クロエはね、このジェヴォーダンを世界から消すんだよ」と嬉しくてたまらないといった感じで、ヴァニタス達に告げます。
「隠すのでも壊すのでもなく、世界式から消し去る?ジェヴォーダン規模でそんなことをしたら、どれほどの反動がおこるか…」と、必死に止めようと声をかけるヴァニタス。
でも、クロエの表情から、ネーニアが言っているのとは違う意思を察知。
ダンテにクロエの動きを止めるように言いますが、その動きを自動人形に阻止され、最後の仕上げを終えるクロエ。
「存在固定」と最後のキーを押した瞬間、それまでおぼろげな姿で宙を漂っていたネーニアの姿が固定され、叫び声をあげながら人の形に…。
クロエは鍵盤の前から離れネーニアに近づくと、その頬に手を添えてにっこり微笑みます。
「ああ、よかった。これなら私でも殺せるわ」
クロエにとってダプシェの民は、たとえどんなことをされようとも、憎むことができない存在。
ダプシェの民を愛することが自分の責務。
でも、ネーニアは違う。
ジャンの真名を奪った事は許せないと、ネーニアの首を絞めるクロエ。
塔の異変から、塔の中に駆け込むアストルフォとノエ。
ノエが倒れているヴァニタスの元に近寄ると、苦しそうに「それ以上…ネーニアを刺激するな」とつぶやきます。
と…
ネーニアが子どものように泣き始めます。
その気配にぞっとするノエ。
「今すぐ存在固定を解け!ネーニアに自分が何者なのかを思い出させるな!吸血鬼ではそれを殺せない!」
ヴァニタスが叫ぶのもむなしく、ネーニアの黒い姿かたちにひびが入り、まばゆいばかりの光を放ちます。
その気配は遠く離れた吸血鬼たちにも伝わるほど。
ネーニアの黒い姿形が取り払われ、そこから現れたのは、長い髪をまとった吸血鬼。
クロエにキスすると、強制的に“発症”させます。
駆けつけたジャンがネーニアに向かうものの、軽く吹っ飛ばされてしまいます。
そして、クロエが暴走。
閉鎖空間を生み出し、干渉領域を広げ、手当たり次第に生き物を引きずり込み始めました。
装置が止まり、ネーニアの存在固定が解除。
再び黒い影になると、「そうだ、名前を探しに行かなくちゃ」と思い出したようにパレードを展開。
周囲の吸血鬼や人間に影響を与えていきます。
崩れかかった塔から落ちたヴァニタスをすんでのところでつかまえるノエ。
「このままではジェヴォーダンの人間すべてを食らいつくすぞ」というヴァニタスに、「そこまで知っていたのに、どうして先に教えておいてくれないんですか!」と激怒。
でも、ヴァニタスはむやみに憶測を言うのは嫌いだし、吸血鬼が人間の話を信じるわけがないと。
これまで幾度となく吸血鬼に殺されかけたのはもちろん、言の真偽が吸血鬼の女王の事であること(一度、ルスヴンに殺されかけている)からも口にできなかったと。
そんなヴァニタスはノエに強烈な頭突きをくらわすと、「俺は信じますよ!」と一喝するのでした。
一通り言い争った後、クロエを助けるべく動こうとしますが、狼がわんさかと出現しているだけでなく、村人たちも危険な状態。
そこに、教会の応援部隊が到着します。
「君たちとはまたすぐ会えるような気がしていたんだ。素晴らしいお導きに感謝します、神よ!」と、間一髪のところを助けてくれたのはローラン。
ローランはヴァニタスとノエの方に手をまわすと、「で、どうするんだい?君たちがここにいるとということは、この事態の中心にいるのは呪い持ちの吸血鬼なんだろう?より平和的な解決のために、私には何ができる?」と意味深に微笑みます。
「俺たちの事を手伝ったくれるんですか?どうして…」と不思議そうに聞くノエに、「そんなの!私が君たちのことを好きだからに決まっているだろう!」と瞳を輝かせて答えるローラン。
ノエ、感激。
そんな二人の様子に引きながら、「ジェヴォーダンの人間を死なせるな」と、クロエの存在意義であるダプシェの民が一人でも死ねば助からないと言います。
「まかせなさい」とにっこり笑うローラン。
でも、狩人の聖騎士としての使命もあることを告げるのでした。
その頃、突如消えたローランに怒り心頭のオリヴィエ。
「俺は!!とっとと仕事を終わらせて帰りたいんだ!」と、狼をバッタバッタと切り捨て行きます。
そんなオリヴィエの背後にふっと姿を現すローラン。
どこに行っていたと問うオリヴィエの問いを無視し、元凶となっている塔はスルーして30分ばかし自分と一緒に人命救助に当たってほしいと伝えます。
「どういうことだ?」と腑に落ちない表情のオリヴィエ。
「オリヴィエだった納得してないだろ?『ジェヴォーダンで発見した吸血鬼はすべて殺せ』なんて命令」と、戦時中でもないのに事件に無関係な吸血鬼まで殺そうとする事の疑問を口にします。
まるで教会にとって都合の悪い何かをもみ消そうとしているみたいだと。
ローランとオリヴィエは、合体した狼の個体に応戦。
二人の部隊には人命救助を命じるのでした。
ジャンヌの願い
クロエの暴走に当てられ、気を失ってしまったジャンヌ。
遠い記憶が思い出されます。
目の前に、ろうそくをもった誰かが立っている。
「お前は人形だ」と、道具であればいいと説く誰か。
器に意志は必要ない。
何も考えるな、望むな、願うな、それを破れば首を落とすと。
次に思い出されるのは、駆け出した先で出会った父と母。
引き取られ、ルスヴンに出会い、そして集会に出かけた父と母を笑顔で見送るジャンヌ。
次の瞬間、父と母の切られた首に、鎖につながれた自分。
元老院所有の処刑人となったジャンヌにあった武器を作る為、マキナ候がやってきます。
「お主の戦闘力に見合った武器を作ってやろう。存分に暴れてくるとよい」という言葉に、自分は道具であること、命令に従っていればいいのだと、繰り返すジャンヌ。
でも、クロエの姿に、命令に従わなければいけないという気持ちと、殺したくないという気持ちで大きく揺れ動きます。
クロエががけ下に落ちて姿を消したことで暴走。
処分されそうになったジャンヌをルスヴンが引き取ります。
まるで魂を抜かれたような状態のジャンヌをのぞき込む黒い影。
「きゃっきゃっ」と笑っています。
そして、次に気が付いた時には、目の前にルスヴンが。
ジャンヌを腕をつかんでいるルスヴンの背後には、それまで誰かが暴れていたような状態。
壁やいす、机が破壊されています。
「ジャンヌ、今の誓いを忘れるな」と語りかけるルスヴンの言葉に、深い眠りに落ちていくジャンヌ。
「殺さなくては、今度こそ、クロエを」と膝を抱えて自分に言い聞かせるジャンヌ。
「クロエ・ダプシェは獣ではない。君もその目でみたはずだ」と、聞こえる声。
「関係ない。私はルスヴン卿にジェヴォーダンの事件を終結させろと言われた」と声がした方を向いて言うと、「つまり、『殺せ』とは言われていない」と再び声が。
「まだだ」というヴァニタスの声で、現実に引き戻されるジャンヌ。
クロエ・ダプシェは助けられる。俺たちなら」と、クロエがダプシェの民を一人も殺していないこと、獣に仕立て上げられたことを伝えるヴァニタス。
「クロエ・ダプシェを殺すこと、それが本当に君の望みなのか?」と問います。
「私は望んではいけない、願ってはいけない。また私の代わりに誰かの首が落ちてしまう」と答えるジャンヌですが、ヴァニタスは笑顔で「俺は死なんさ!少なくとも君より先には!」と断言。
「君の願いを叶えるのは俺だ」というヴァニタスの言葉に、「助けて…クロエを…助けてヴァニタス…」と涙をこぼすのでした。
魔女の中身
戻の姿に戻り、気失っているジャンを平手打ちで起こすヴァニタス。
「クロエ・ダプシェの復讐は失敗した」と、クロエを助けるためにヴァニタスの書をどこにしまったのか教えろと詰め寄ります。
その頃、ヨハンの声掛けに意識を戻すダンテ。
でも、まだ軽くネーニアの影響を受けているのか、「ふざけんな!どいつもこいつも俺のこと、混血の事をバカにしやがって!」とヨハンの手を振りほどきます。
でも、ヴァニタスとの出会いを思い出し、ハッと我に返るダンテ。
ヨハンの静止を振り切り、思い出したかのようにヴァニタスの書を探し始めます。
そこに「おまえの後ろの本棚だ!」と、ジャンから本の在り処を聞いたヴァニタスが走り寄り叫びます。
そして、ヴァニタスは演算装置を動かし、クロエの存在を固定しようと試みます。
起動装置が動かないことに焦るジャン。
この装置の核は星碧石(アストルマイト)ではなく「神の泪石(るいせき)」だという話に、ヴァニタスの動きがとまります。
そこに、クロエの攻撃が。
クロエの攻撃から装置を守る為、ノエが。
ヴァニタスは必死に動かそうとしますが、なかなか起動せず…。
遠い昔、聞いた話が思い出されます。
これまで頑なに見せてこなかった手の手袋を、決心したように外します。
起動装置が動いたことに気がついがノエがヴァニタスをみやると、手袋を外した右手があらわに…。
そこには、なにか埋められたようなものが。
驚いて駆け寄ったところに、クロエが放つ黒い狼が襲い掛かってきます。
間一髪のところでジャンヌに助けられたものの、クロエの一撃を受けて吹っ飛ばされてしまいます。
高らかに笑うクロエを、「どうして…こんな…」と見つめるジャン。
「クロエは…すべて終われば自由になれるって…僕は…クロエがもう苦しまずに済むんだと…」とつぶやくジャンの言葉に、ヴァニタスは「クロエ・ダプシェはおそらく、復讐を終えた後は死ぬつもりだった」と言います。
そうヴァニタスが思ったのは、この部屋に飛び込んだ時に見たクロエの表情から。
ショックを受けるジャンに、「話をしましょう!クロエさんとちゃんと!」と肩を掴んで力強く言うノエ。
「どんなに近くにいても、護りたいと思っていても、わからないんです。言葉にしなければ」と。
と…
そこにアストルフォが奇襲。
ジャンの背中を切りつけます。
ノエに向かってくるアストルフォに応戦するノエ。
その間、ヴァニタスは起動した演算装置の鍵盤を、楽譜をみながら弾き始めます。
そして、固定されるクロエ。
ジャンは立ち上がると、ノエを雪の中で見つけたときのことを思い出します。
すべてに合点がいったジャン。
自動演奏機にわざわざ武器を組み込み、ダプシェの人たちの名前まで付けて呼んでいたのか…
それは、全てが終わったら自動人形たちに自分を殺させるため。
固定されたクロエの元に近づくジャン。
「こわ、さなきゃ…はやく…こんな世界…私ごと…はやく、ジャン=ジャックを、自由に…!」とつぶやくクロエの言葉に、「バカだなぁ、クロエは。本当にバカだ」と弱弱しく膝をつきます。
そして次の瞬間、「僕一人が自由になってどうするんだ!」と叫ぶジャン。
クロエの頬に手を伸べ、「君なしで幸せになんてなれると思うな。逃げるなよ僕から。お願いだ…僕をひとりにしないでくれ…」と、涙を流しながら懇願するジャン。
ジャンがクロエを抱きしめると、クロエを覆っていた黒い影が少し薄れてその表情が露わに。
その時、ダンテによって見つけ出されたヴァニタスの書を受け取ったヴァニタスが、ジャンヌの協力でクロエの近くに。
そして、ヴァニタスの書を開いたのでした。