05巻:ヴァニタスの手記ージェヴォーダンの獣事件ー

ヴァニタスの手記(5) (ガンガンコミックス JOKER) [ 望月淳 ]

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ジャンヌの目論見はバレ、「そっちの方が好きだ」と言うヴァニタス。

その言葉に顔を赤らめるジャンヌですが、「ルカがよく許したな」というヴァニタスの言葉にしょんぼり。

ルカは今、兄の元にいると。
つまり、“女王の牙のロキ”。

ロキのそば以上に安全な場所はなしとして休暇が頂けたと。
そこで、ヴァニタスに会いに行けるようにルスヴン卿に許可をもらったのでした。

ルスヴン卿という言葉に反応するヴァニタス。
さよならも言わずにジャンヌの元を脱兎のごとく去り、ノエがいるホテルに血相を変えて飛び込んでいきます。

荒々しく扉を部屋の扉を開けると、そこには朝と同じ格好をしたノエの姿が…。
驚き安心するとともに、怒りで座り込むヴァニタスでした。

一方、置いてけぼりを食らったジャンヌのところに現れたのはルスヴン卿。

ジャンヌの姿に「お前の両親も、さぞその姿を目にしたかったことだろう」とつぶやくと、異界へと共に帰るのでした。




狩人のオリヴィエは、ミラの研究室にいるローランを訪問。

「最近コソコソ何かを調べまわっているそうだな」と不機嫌なオリヴィエに、「人間と吸血鬼の歴史の勉強をし直しているだけだよ」とにっこり笑顔のローラン。

以前とは違う何かが見えるかもしれないと思ってと。
それまで吸血鬼の事を完全なる悪だと思っていたのが、先の戦いでそうではないということを知ったと、目を輝かせながら話します。

そんなローランにオリヴィエは激怒。

「お前は狩人だ!
今の発言が上層部に知られ危険だと判断されたら、最悪、おまえの親兄弟にも害が及ぶ可能性があるんだ!」

オリヴィエの言葉に、ローランは驚いたように椅子に崩れ落ちます。
そんな様子に苦しげな表情をするオリヴィエ。
でも…

「私一人で聖騎士相手に何人いけると思う?3人?4人?死ぬ気で頑張れば、もう少しいけるかな?」

と、簡単な問題を問いかけるような調子で切り返します。

その問いかけから、「そんな真似をするなら、狩人半壊する覚悟でこいよ」というローランの意思を感じ取ったオリヴィエ。

さらに、ちょっと寂しげな表情で「自分の信じたいものしか信じられない。これは、それを明確にするための確認手段だよ」と言います。

 

ふと、オリヴィエの目に、ルスヴン卿に関する資料が目に入ります。

「ルスヴン卿は人間と吸血鬼の戦いを終結へと導いた立役者。元老院の一人であり、現オリフラム公の叔父であり後見人。吸血鬼の歴史を語るうえで彼の存在は欠かせないよ」

と、目を輝かせながら語るローラン。

さらに、“ジェヴォーダンの獣事件”の資料。
ルスヴン卿も関わっている事件でした。

ルイ15世統治下のフランスで、100名以上の人間が惨殺された事件。

表向きはオオカミの仕業とされているものの、教会は吸血鬼が犯人であることを突き止めており、歴史上はじめて吸血鬼と教会が手を組んで解決に当たった事件でもあります。
ただ、犯人は突如として姿を消し、事件は多くの謎をはらんだまま未解決状態のまま。

 

そんなジェヴォーダンの獣事件が、再び…。

ヴァニタスとノエの元に、慌てた様子でダンテが飛び込んできて、ジェヴォーダンの獣が現れた事を伝えます。

ジェヴォーダンの獣は、巨大な狼に似ており、大きく歪んだ口と尖った耳、鋭い爪を持ち、全身が赤い毛で覆われ、背中には複数の黒い筋が走っていると言われています。

獣の正体についてはいろいろと諸説があるものの、吸血鬼と教会は呪持ちの吸血鬼であると考えているとダンテ。

今月に入って5つの死体が出ており、内臓を喰われたり首が飛んでいたりと殺され方は様々。
複数の目撃証言からも、18世紀の事件と同じジェヴォーダンの獣である可能性が高いとみられているようです。

ダンテの話に「呪持ちがいる可能性があるのであれば行くさ」と即答するヴァニタス。

それまで静かに聞いていたノエにどうするのか尋ねると、下を向いたまま「とても…おいしそうだと思います…」と一言。

その言葉に、「さすがに…そういう発想はなかったぞ…」と固まるヴァニタスとダンテ。

実は、ノエは空腹状態にあり、ケガしたヴァニタスから漂う血の匂いがたまらなく気になって話が頭にまったく入ってこない状態だったのです。

昔、先生とルイとの会話が思い浮かびます。

「吸血行為は一種のコミュニケーションなんだから、血を吸いたい相手がいるなら、きちんと口説き落としてからにしろってことだよ」

と言うルイの言葉を実践。

正直に「血を飲ませてほしい」と言うのですが、ヴァニタスは「お前が俺の血を吸おうとしたら殺す」と、静かに部屋を出ていくのでした。

ノエは“血を暴く牙”の持ち主。
わかっていたはずなのにまたやってしまい、ノエはひどく落ち込むのでした。

 

翌日。
ジェヴォーダンに向かうヴァニタスの後ろを、とぼとぼとついてくるノエ。
昨日の事からも、置いて行かれるのではと寝ずに待機していたノエは、寝不足でふらふら。

「調子が狂う。文句があるならはっきり言え」というヴァニタスに、「昨日のことは、俺が悪いと思ったので…」と言うノエ。

ただ…

「吸血鬼の前であんな甘ったるい匂いをまき散らしているあんたが悪いと言いたい思いもあると言えばあるのですが」という本音もチラリ。

相手の身体から直接吸い取る血を介してでなければ記憶に潜ることはないと知ると、「今度、ケガをした時に服についた血なら一回舐めさせてやってもいいぞ」とヴァニタス。
その提案に喜ぶノエですが、すぐさま「ウソだ」と言われてブチ切れ。

その様子にヴァニタスも笑い、わだかまりも解消されたのでした。

 

ジェヴォーダンに行くために駅についた二人。
華やかな景色に感激するノエは、夢中になりすぎたあまり一人の男性と派手にぶつかってしまいます。

その男性は狩人のアストルフォ。
同じくジェヴォーダンに向かう途中でした。

お互いの事に気が付かぬまま、ぶつかった非礼を詫びてヴァニタスの元に戻るノエ。
列車の中では、昨晩の徹夜がたたって寝て過ごす羽目になるのでした。




 

ジェヴォーダンに到着した二人。
ダンテとヨハンとも合流し、ソーグという村に向かいます。

ダンテとヨハンもジェヴォーダン事件を解決したいのかと思えばそうではなく、金になる情報が欲しいだけと。

ただ、ヴァニタスはそれ以外にも何か目的があると見ていました。

 

ソーグで情報収集をするのですが、皆一応に警戒して何も語らず。
唯一、子ども達から得た「“白銀の森”には恐ろしい魔女が住んでるんだ」という情報があるのみ。

しかも、狩人が先に到着し、同じように聞いて行った事も知ります。

子ども達の言葉から、森に入る一行。
ちょっと目を離した隙にノエがいなくなり…探している最中に、不思議と当たり一面が深い雪で覆われているの状態に。

そして、遠くで話し声が。

慌てて隠れて様子をうかがうと、なんと18世紀の竜騎兵。
国王の第一銃士だった隊長・アントワーヌたち一行でした。
どうやら、過去に放り込まれたようです。

そして、狼の遠吠えと同時にジェヴォーダンの獣が出現。

あまりの大きさに驚くダンテ。
ヴァニタスは襲ってくる多数のオオカミの攻撃もよけながら、冷静にその禍名を探っていました。

あわやというところで間一髪、ジャンヌが乱入し助かります。
ジャンヌとルスヴン卿にもジェヴォーダンの獣が出現した事は時を同じく報告が入っており、因縁があるジャンヌが自分から志願してきていたのでした。

 

一方、同じ状態にあるノエもヴァニタス達を必死に探しますが、そこで襲われて逃げてくる竜騎兵の一人に遭遇します。

ノエの目の前で竜騎兵を一刀するのは、駅でぶつかった男性。
狩人のアストルフォでした。
その後ろには、無数の屍が…。

「なぜ、人を殺したんですか!」と問うノエに、「彼らは僕を女性と間違えた上に、触るなと言う再三の警告も無視しました。つまり、正当防衛です」と。

そして「狩人の仕事は人間を守る事ではなく、吸血鬼を狩ることです」と、ノエに襲い掛かるアストルフォ。

戦いと殺しを楽しんでいるアストルフォの姿に、同じ狩人でもローランたちとはまったく違う思想の持主であることを察するノエ。
ノエと戦いながらも、まだ生きている竜騎兵にとどめの一撃の食らわせるのを見たノエは怒りを爆発させます。

ただ、頭に血が上りすぎていつものようなキレがなく、アストルフォによってとどめを刺されそうに…。

 

そこに、ジャンヌとジェヴォーダンの獣が乱入。
さらに、ヴァニタスとダンテ、ヨハンも合流。
危機一髪のところを助け出されます。

ジェヴォーダンの獣を殺そうとするジャンヌを必死に止めるヴァニタス。
ジャンヌの姿に、アストルフォは「なんて佳い日でしょう!」と興奮を隠せません。

アストルフォの姿を見たヨハンは「やだ!あの坊や“柘榴石のアストルファ”じゃないのっ!」と。

ヨハンが言うには、若干15歳で歴代最年少の聖騎士になった化け物。

再び戦いを挑みに行こうとするノエを、「落ち着け」とノエが止めます。
に血がのぼっていていつもの力が出せていないといい、「適材適所だ」として、わざとアストルフォを煽ります。

ヴァニタスの演技に、怒り心頭のアストルファ。

「“柘榴石のアストルファ”は、別名・狩人の問題児。大のローラン嫌い」と、知っている情報を言うと、あれは俺の特分野だから、ノエはジャンヌを止めるようにと指示します。

 

「クロエ!」と呼びかけながら、かつてジェヴォーダンで彼女を殺すことができなったと悔いる気持ちで戦うジャンヌ。

そこにノエが参戦。
ジャンヌに蹴りを入れてその動きを止めます。

呪持ちならヴァニタスが助けられるかもしれないというノエに、「そんなことは許さない!」と、ノエの動きを反対に封じます。

 

一方、ヴァニタスの言葉に煽られ、怒り心頭のアストルフォ。
ダンテとヨハンも加勢し、形勢は五分五分。

攻撃をかわしながら、アストルフォの家について語るヴァニタス。

アストルフォ・グラナトゥム。
かつての戦争…吸血鬼狩りで大いに活躍した一族。

「大方、親におねだりしたんだろう」と言うヴァニタスの言葉に、ダンテとヨハンも顔をしかめます。
なぜなら、グラナトゥム家は惨殺されているからです。

「ボクの父様を侮辱するな!!」と飛び掛かってくるアストルフォ。
少し離れた場所では、ノエが必死にジャンヌを止めています。

と…

突如、世界が変わり、シャルラタンが出現。
その場にいた者、全員にシャルラタンの幻聴が襲い掛かります。

 

初めてみるのか、突然の怪異に戸惑っているアストルフォに、「あら?貴方、どうしてそんなに体中が“印”だからなの?」と問うシャルラタン。
その言葉に、持っていた矛を落としてしまいます。

「すごい、全部で13個もある。ああ、でも今はもう5個しか残っていないなね!」という指摘に、座り込むアストルフォ。
アストルフォの脳裏に、あの日の出来事が浮かびます。
そして、切れたように手あたり次第に倒していくアストルフォ。

 

「悪趣味な演目には消えてもうらおうか!!」とヴァニタスの書を開いた瞬間、それめがけて飛んできた鋭い切っ先に留め具を斬られてしまいます。

と…

暴走したヴァニタスの書によって辺りは吹っ飛ばされ、後には静寂が…。

 

どれくらい時間がたったのか、雪の中に半分埋もれているヴァニタスの書を拾い上げる一人の男性。
少し歩いた先に座り込んでいた女性に声を掛けます。

「ここにいたのか、クロエ。城にもどろう…」と言いかけて、倒れている男性…ノエに気が付きます。

 

雪の中を歩きながら、クロエと出会ったときの事を回想するジャンヌ。

ジャンヌがクロエに初めて会ったのは、吸血鬼と人間がまだ激しく殺し合っていた頃でした。

最初は人形がしゃべっているのかと思ったほど。
そんなジャンヌにクロエは「クロエ・ド・アプシェ。このアプシェ侯爵家の“隠された吸血鬼”よ」と自己紹介します。

ふと、木に寄りかかるように座り込んでいるヴァニタスを見つけ駆け付けると、体中が燃えるように熱い事に気が付きます。
嫌がるヴァニタスを肩にかけると、近くの小屋に避難。
二人で体を寄せ合って暖を取ります。

「クロエとは誰だ?」というヴァニタスの問いに、とつとつと語り始めるジャンヌ。

 

ジャンヌの両親は、ルスヴン卿の教え子でした。

小さい頃はルスヴン卿や両親と一緒にいろんな場所を旅する生活を送っていたのですが、ある時、ジェヴォーダンのアプシェ侯爵の城に預けられることになり、そこでクロエと出会います。

“隠された吸血鬼”とは、存在を秘匿され、人間と共に生き続ける吸血鬼の事。
少女ほどの外見ですが、ルスヴン卿と同じくらいに長い時を生きる吸血鬼でした。

勉強や遊び、いろんなことをクロエから教わったジャンヌは、お姉さんができたみたいで嬉しく、楽しい日々を送っていました。
そのため、ジェヴォーダンを離れるときの別れは、辛く悲しいものでした。

そして数年後。

次に再会したのは、処刑人となったジャンヌと、獣と呼ばれるようになったクロエとの対峙の場でした。
躊躇してしまい殺すことができなかったのでした。

今回、またジェヴォーダンの獣が出たと聞き、同じ過ちは二度と繰り返さないとして、獣を仕留めると決意に満ちた目で語るジャンヌに、「それが君の本当の望みか?」と問うヴァニタス。

「憎んでいるわけ…わけではないのだろう…」と熱にうかされながら途切れ途切れに言うヴァニタス。
その言葉は、いつしか別人の意思を問うものに置き換えられていたのを、ジャンヌはかすかに耳にします。

 

同じく、深い眠りに陥っていたノエ。
ぼんやりと意識が回復する中、ガリっと鋭い痛みが。

目を開けると、そこは見知らぬ部屋のベッド。
しかも、誰かが血を吸っています。

「同意のない吸血行為は犯罪です!」

と思いっきり体を起こし相手を見てみると、そこには少女の姿が。

「あら、やっと起きたのね?」

という少女に、ノエは「はっ!?」と状況に付いて混乱するノエでした。




 

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