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園遊会から2か月後。
壬氏の元に報告が入ります。
調べた結果、柘榴宮の風明。
淑妃の侍女頭の名前が上がります。
その頃、外の堀に後宮の女官の水死体が上がり、医者と共に猫猫も現場に来ていました。
怖がる医者は猫猫に検死をお願いするも、「死体に触るなとの教えから無理です」ときっぱり。
壬氏に急かせれしぶしぶ検死を始める医者の横で、触れはしないものの遺体の状況をチェックする猫猫。
そんな猫猫に、壬氏は後で中央門の詰め所にくるように伝えます。
死亡した侍女は尚食の下女。
衛兵の見解では夜半に塀に登り身の投げた投身自殺と言われていますが、猫猫の見立ては自殺でも一人では無理というもの。
城壁は高く、足場となる突起はあるけれども、大抵の女性は登るのが難しい。
ましては、死亡した下女は纏足(小さいほど美しいという価値観から、足を潰して布で固める木靴)を履いていたため、一人で昇るのは難しいと。
「もう少し詳しく調べられないのか?」という壬氏の言葉に、「人間も薬の材料になるので…」と師から死体には触らないようにときつく言われている為、できないと断ります。
小蘭とのおしゃべりで、死亡した下女が柘榴宮の下女で、園遊会で里樹妃に毒を盛った犯人だったという話を聞く猫猫。
位を下げて新しい上級妃を輿入れさせるという話がだいぶ前からあり、お仕えする阿多妃を思ってやったのかと。
子どもを多く成す為の後宮という制度上、お褥すべりはせざるをえない。
梨花妃も今後、皇帝の子を孕まねば同じようになるのだろうかと思うのでした。
柘榴宮への潜入
翌日。
妃の仕事であるお茶会が、翡翠宮で行われました。
招待者は翡翠宮の主である玉葉妃で、里樹妃が招かれています。
里樹妃の侍女たちの様子を観察する猫猫。
翡翠宮の調度品を気にしすぎて明らかに主人に目がいっていない姿に、いじめの影はみられない。
自分の勘違いだったかなと思い始めた頃、玉葉妃が蜂蜜のお茶を勧めた事で空気がガラリと一変。
真っ青にした里樹妃の様子に、「また好き嫌いしてるわ」と侍女がひそひそ。
その様子に、毒見役として先にお茶を口にした猫猫がそっと玉葉妃に耳打ちします。
侍女たちの様子に、自分の推理は間違っていなかったことを確信します。
そんなお茶会終了後、猫猫は壬氏から呼び止められ、「下女は本当に自殺したと思うか?たかが下女ごときが妃の皿に毒を盛る理由は?」と、それを探りに柘榴宮に潜入する事を申し付けられます。
年末の大掃除の手伝いということで、柘榴宮に行かされた猫猫。
侍女頭である風明の指導の元、てきぱきと仕事をこなしながら様子を観察します。
阿多妃は華や豊満さ、愛らしさはないが、その分中性的な凛々しさと美しさが際立っており、妃の着る衣装より乗馬用の胡服の方が似合うお人。
女官から羨望を集めていると分析。
柘榴宮の侍女たちは優秀で、皆が妃をよく慕い行き届いた仕事をしている。
特に侍女頭である風明は群を抜いており、人当たりが良くて他人をよく見てよく褒める。
侍女頭として人を扱う術を心得ている。
しかも、下っ端の下女に任せるような雑用さえ率先しておこなうほど、本人がよく働く。
妃を慕っているとはいえ、上級妃に仕える侍女頭とは思えない仕事ぶり。
それに加え、嫁がないのも妃への忠義心なのだとしたら…と、そこに毒殺の理由を見出す猫猫。
高官が自分の娘を入内させようとするなら、年齢的にも一番上の阿多妃。
でもその前に、他の上級妃…まだ手がついていない里樹妃の座が空けば話は変わる。
侍女が阿多妃の為に里樹妃を毒殺しようと狙うのはおかしい話ではないと、猫猫は考えるのでした。
蜂蜜の棚の掃除を任された猫猫。
侍女頭の風明の実家が養蜂をやっていることからも、多種多様な蜂蜜が揃えられています。
「蜂蜜ね…最近どこかで」と棚掃除を終えて2階の欄干を拭いていると、まるでこっそり忍び込んだような様子の里樹妃と毒見役の姿を見つけます。
その姿に「どうして里樹妃は蜂蜜が苦手なのだろうか?」と疑問が浮かぶのでした。
大掃除も終わった頃。
「夜も遅いし、今日は柘榴宮で休んでいって」と自室にある獣の毛皮を渡す風明。
その際、部屋の片隅に纏足が置かれているのを見つけるのでした。
翡翠宮に戻った猫猫は、さっそく壬氏に報告。
異国の紅い茶に蜂蜜とレモンを入れて飲みながら話を聞いていた壬氏は、「怪しい人物がいたんじゃないか?」と、猫猫があえて口にしない事を言わせようとします。
根拠のないことを口に出すのは好きではないんだけどなと思いつつ、侍女頭の風明の部屋に纏足があった事を報告します。
侍女頭の風明には、纏足の特徴はなし。
その風明の部屋に纏足があったという事は、どこかで片足だけの纏足を拾う出来事があった。
自殺した侍女の纏足は片足見つかっていない事からも、事件に関与している可能性が高いと。
「…まぁ、及第点だな」と満足したようにうなずく壬氏。
その様子から、「この程度は調べていたのだろう」と内心毒づく猫猫。
壬氏は立ち上がると、「いい子にはご褒美をあげないとね」と、蜂蜜が入っている壺に指を入れて猫猫に近づいてきます。
「この変態!顔が良いから何をしても許されると思っている」と慌てて高順に助けを求めようとするも、窓の外を呆けたように見つめてしらんぷり。
「あとで下剤を盛ってやる!」と誓う猫猫。
「せめてこれがトリカブトの密なら割り切れたのに…毒花の蜜はやはり毒か」と思った瞬間、何かに気が付く猫猫。
そこに「うちの侍女に何をしているのかしら」とお怒り顔の玉葉妃が来て事なきを得ます。
「つい悪戯が過ぎただけなので、壬氏さまを許してくださいませんか?」と声をかける高順に、「では今後は高順さまが舐れば問題かと」と切り返す猫猫。
「…それはちょっと」と鳥肌を立たせる高順に「わかればよいんです」とバッサリ。
猫猫は気が付いたことを確かめるべく、高順に里樹妃の住まう金剛宮への案内をお願いします。
園遊会の時の毒見係と気が付くと、幾分か態度を和らげる里樹妃。
「蜂蜜はお嫌いですか?」という猫猫の問いかけに、赤子の頃、謝って蜂蜜を口にしてしまい一時は命が危なかったことがあり、それ以来食べるなと言われていたと話す里樹妃。
と、その様子を見ていた里樹妃の侍女が、これみよがしに「いきなり来て失礼じゃなくて?」と猫猫に難癖をつけてきます。
外部の者を悪役に仕立てて、味方の振りをする。
妃に周りは敵だと思い込ませて、見方は自分たちだけだと孤立させる。
幼い里樹妃は侍女たちに頼らざるを得ず、本人はいじめに気付けず表ざたにならない。
侍女たちの悪質なやり方にため息をつきつつ、「私は名を受けてきました。言いたいことがあるなら壬氏さまに直接どうぞ」とはねのけるのでした。
壬氏という言葉に頬を赤らめて「ちょちょ直接!?」と喜ぶ侍女。
子の侍女が何を理由に壬氏に近づこうとするのか、実に楽しみだとニヤリと笑う猫猫。
ちょっとした壬氏への嫌がらせでした。
侍女が黙ったところで、さらに柘榴宮の侍女頭についてたずねるのでした。
里樹妃の話から、次に後宮の出来事が記されている宮廷の書庫に向かう猫猫。
そこで、17年前の出来事を知ります。
現帝が東宮だった頃、阿多妃との間に男子が生まれた。
同時期に、先帝の御子、今の皇弟も誕生。
阿多妃の男子だけが乳幼児期に死亡。
その後、先帝が崩御し、新しく後宮ができるまで現帝の子の誕生はなし。
当時の妃は阿多妃だけ。
10年以上一人の妃と連れ添っていた現帝。
阿多妃は乳兄弟だったのことからも愛着があったのだろうかと推測する猫猫。
そして、16年前の乳幼児死亡にて子を取り上げたのが猫猫の義父。
片膝の骨を抜かれた元宦官。
追放と言う文字を手で追いながら、「なにやってんだよ、おやじ」とつぶやきのでした。
風明の思い
柘榴宮の風明を訪ねた猫猫。
猫猫の真意を知った風明は、猫猫をもてなします。
片付けされている室内の様子。
まとめられた荷物は、新年のあいさつと共に新しい上級妃を迎えるから。
阿多妃はこの宮を去らねばならない。
「阿多妃はもう子を産めないのですね。出産時に何かあったのですね」という猫猫の言葉に、それまで見せていた人の良さそうな笑みが消える風明。
関係ないと一蹴するも「出産の場にいたのは私の養父なのです」との猫猫の言葉に、風明は椅子から立ち上がります。
「不幸なのは皇弟の出産と重なったことでしょうか。皇后と天秤にかけられ、後回しにされた阿多妃は難産だったのでしょう。その時ですね、阿多妃が子宮を失ったのは」と語る猫猫。
その後、なんとか無事に生まれた子もまた幼くして亡くなることになる。
「責任を感じているのでしょう?体調の良くない阿多妃に代わり、赤子のお世話をしていたのはあなたのはずです」と言う猫猫に、「何もかも知っているのね。阿多さまを助けることもできなかったやぶの娘なのに」と冷たく言い放つ風明。
「そうですね」と答え、淡々と話を続ける猫猫。
亡くなった子の死は毒おしろいが原因だと言われているが、義父は鉛白入りのおしろいを使うのを禁じていた。
本当の死因は蜂蜜。
毒を含まないたたの蜂蜜が、毒見をしたうえで滋養にいいと与えていた薬が、抵抗力の弱い赤子には致命的な毒になることを知らなかった。
そして、阿多妃の子は息絶えた。
死因は謎として。
当時医官だった義父こと羅門は出産時の処置も含め度重なる失態により、肉系として片膝の骨を抜かれた後、後宮を追放。
阿多妃に本当の死因を知られたくなかったから。
自分が唯一の子を殺した原因だと。
だから里樹妃を消そうと考えた
猫猫が里樹妃から聞いた話では、先帝妃時代に里樹妃は年上の嫁である阿多妃に懐いていた。
阿多妃も里樹妃のことを可愛がっていたという。
その頃、風明は里樹妃が赤子の頃に蜂蜜を食べて生死の境を彷徨った事を知ります。
もし里樹妃が通い続ければ、その事を阿多妃に話すかもしれない。
聡い阿多妃は気が付くかもしれない。
それだけは避けたくて、理由をつけては阿多妃に会いに来る里樹妃を追い返すようになった。
その内に先帝が崩御し、里樹妃は出家。
もう二度と会う事はないと思っていたのに、同じ上級妃として再び後宮に。
そして、母親を求めるように阿多妃に会いに来ようとする。
だから消そうと思った。
「欲しい物は何?」と問う風明に、「そんなものはありません」と答える猫猫。
風明は、なぜ自分がこんなことをしたのかを訥々と話し始めます。
ずっと親から言われるがままに行動し、侍女になった。
だからこそ、女性でありながらしっかりした意志を持つ阿多妃に衝撃を受け、東宮と同じ目線で話せることに心から尊敬した。
阿多さまが一番大切な人になった。
そんな自分の一番大切な人の一番大切なものを、奪ってしまった。
玉のように大切にしてきた赤子を、この世で一番大切なものをこの手で。
「皆が気に病む必要はない。子は天の命に従ったのだ」と気丈に言う阿多妃。
でも、毎夜泣き明かしている事を風明は知っていた。
泣き崩れる風明の姿に、「私はそこまで他人を大切に思える心がない。だから今、彼女が何を望んでいるのかわからない」と思う猫猫。
ただ、はっきりしている事は、猫猫の動きは高順によって報告されているので、後宮をつかさどる壬氏に隠し事はできない。
ここで猫猫が消えたとしても、真実は明らかになる。
何があろうと極刑は免れないと、それは風明も理解している。
猫猫は残酷だと思いながらも、ある提案を風明にするのでした。
後日。
風明が自首してきた事について、何かしらないかと問う壬氏。
「私にはなんのことだかわかりません。犯人が自首してくるなんて、良かったじゃないですか」とあくまでもしらばっくれる猫猫。
「風明の動機は、阿多妃の四夫人の座を保つためだったそうだ」という壬氏の言葉に、あの日、持ちかけた提案を思い出す猫猫。
猫猫の提案は、2つあった動機を1つにすること。
自身の死は免れなくても、阿多妃に赤子の死因を隠匿する事はできるだろうと。
とはいえ、風明は関係なくもともと阿多妃は上級妃を降りることが決定していた事。
しかも、阿多妃は後宮を出た後、南の離宮に住まう事が皇帝の判断で決定済み。
「そうですか」とうなずいた猫猫の目に、紅娘が飾った花が目に入ります。
「狂い咲きですね」と一つ手に取ると、その蜜を吸う猫猫。
マネして吸う壬氏ですが、「毒ですけどね」との猫猫の言葉に慌てて出そうとします。
そんな壬氏に「死ぬことはないので大丈夫ですよ」と言うのでした。
風明の処刑が滞りなく終わり、明日は阿多妃がいよいよ後宮を去る日。
夜、猫猫は下女が入水自殺した塀の上へと来ていました。
壬氏からもらった酒を残しておけば月見酒ができたのにと、ちょっと残念な気持ちになっていると、阿多妃が同じく塀の上を歩いてやってきます。
場所を譲る為降りようとした猫猫に、「一杯、付き合わないか?」と酒を勧めます。
どことなく誰かに似ていると思っていると「男のようであろう?」と話しはじめる阿多妃。
「そのように振舞っているように見えます」と答える猫猫に笑うと、ぽつりぽつりと自分の事を話し始める阿多妃。
自分はずっと皇帝の友人だった。
即位前は最初の相手として指南役になっただけ。
だから、息子がこの手からいなくなってからは、乳飲み子の時から一緒に育った幼馴染に戻った。
「まさか淑妃に選ばれるとは思わなかったよ」と言う阿多妃。
お情けでやっていた飾りの妃を早く誰かに受け渡したいと思っていたのに、何故、こんなにもすがりついていたのだろうと、誰に対してでもない独白。
そして、立ち上がると、持っていた酒を下の水の中に。
「水の中は寒かっただろうな。冷たくて苦しかっただろうな」と言う阿多妃の言葉に、「そうですね」と答える猫猫。
「みんな、バカだ」と幾度となくつぶやくと、その場から立ち去るのでした。
一人残った猫猫は、「やはり、あの侍女は自殺だったのだ」と、その事に阿多妃も気が付いていると思います。
風明は自殺に加担していたかもしれない。
それでも死んだ下女は、阿多妃に嫌疑がかからぬように、自分の意志で冷たい水の中に沈んだ。
風明が自ら絞首台に登ったように。
阿多妃の意志に関わらず、彼女の為に命をかける者達がいるのだと思うのでした。
寒さが身に沁み始めたのでそろそろ帰ろうと塀を降りていると、ふいに「そこで何をしている!」との声が。
びっくりして足を踏み外し下に落ちますが、なんと声の主である壬氏が下敷きに。
「すみません、今どきます」と降りようとする猫猫をぎゅっと後ろから抱きしめる壬氏。
「…あの、話していただけますか?」という猫猫に「寒いから…やだ」と子どものような事を言う壬氏。
みれば、酔っぱらっている様子。
「…家主は、俺に酒を誘って、飲ませるだけ飲ませた挙句、どこかへ出かけてしまった。戻ってきたと思ったら、すっきりしたから帰れと追い返された」と語り始める壬氏。
ベタベタ引っ付く酔っ払いに付き合っていられないと離れようとする猫猫ですが、ふと壬氏が泣いているのに気が付きます。
「もう少しだけだ。少しだけ温めてくれ」という壬氏の言葉に、ため息をつきつつ付き合うのでした。
翌日。
達成感さえ見える堂々とした阿多妃。
淑妃たる証を示す冠を、壬氏が受け取ります。
二人の姿を見ながら、ふと「息子がこの手からいなくなってから」という阿多妃の言葉にひっかかりを覚える猫猫。
「いなくなってから?『死んでから』ではなく?」
ほぼ同時に生まれた皇弟と妃の子ども。
二人がもし取り換えられていたとしたら?
皇太后の出産と重なったことで子を産めなくなった阿多妃は、二人の赤子のどちらが今後、大切に育てられていくのか身に染みてわかったはず。
所詮は乳母の娘に過ぎない自分の元より、皇太后の元に生まれてきた赤子のほうがより庇護を受ける。
産後の肥立ちが悪い阿多妃に、なにが正しいのか判断などできなかったかもしれない。
しかし結果として、己の息子が助かったのであれば、それは阿多妃の本望だっただろう。
後日、入れ替わりが発覚して、それも本物の皇弟が死んだ後だったなら、赤子の入れ替わりに気付かなかったのだから、おやじが追放だけでなく肉刑までうけたことにも納得がいく。
だとすれば、皇弟が今、狭い立場にあろうことも、潔い阿多妃が後宮にとどまり続けた理由も、妃の役目を果たさずして胸を張る姿も…と思いつつ、「なんてね」と一笑する猫猫。
…と、後宮を出ようとする阿多妃に駆け寄る里樹妃の姿が。
途中転んでしまい、周囲から失笑が漏れます。
恥ずかしくて顔を上げれない里樹妃に阿多妃はよると、座り込み里樹妃の頬に手を。
その表情は、まるで母親のような顔なのでした。
猫猫、解雇
「どういたしましょうか?」と問う高順に、物憂げな様子の壬氏。
風明の処刑後、親族は財産を奪われ全て肉刑に。
実家および関係者は解雇という通達が出されていました。
その中には、猫猫の名前も。
なんと、猫猫がかどわかされて身売りされた場所は、件の関係者。
「お望みであれば隠蔽しますが」という高順の言葉に、簡単に決められない壬氏。
命令するのは簡単だが、猫猫の意に反して好きでもない場所に引き留められたと気づいた時、どのように受け取られるのか…それを思うと、怖くてなかなか決められない壬氏。
そんな壬氏に「都合の良い駒ではなかったのですか?」と高順は言うのでした。
その頃、猫猫の耳にも大量解雇の噂が。
今解雇されるとかなり困ると真っ青の猫猫。
李白ののちまだ上客を送り込めていないので、今帰れば、確実に売り飛ばされると、言の真偽を確かめるため壬氏のもとに。
慌てふためいた様子の猫猫から「大量解雇の事だろ?」と察する壬氏。
猫猫の名前が載っている名簿を見せると「つまり解雇というわけですね」と肩をがっくり。
「どうしたい?」という壬氏の問いに、「私はただの女官です。言われるままに下働きでもまかないでも毒見役でも、命じられればやります」と、解雇しないでほしいという気持ちを込めたつもりで答えるのですが、壬氏は反対の意味に受け取ってしまいます。
「金ははずもう」と解雇が決定。
猫猫が後宮を去った後。
すっかり落ち込んでいる壬氏。
「やっぱり、引き留めればよかったのでは?」という高順に「何も言うな」と暗いまま。
お気に入りのおもちゃを無くしたこの人に、珍しいおもちゃを与えるのは骨が折れるのだが…と思うも、即座に否定する高順。
代替えがダメなら、本物を用意するしかないなか…と動きます。
一方、花街に戻ってきた猫猫。
さっそく、仕事として貴人の宴に駆り出されます。
三姫も一緒ということからも、自分の役目は引き立て役であり、せめて客の盃が空かぬよう目を配らせようと、お酒を片手に席を回ります。
…と、盛り上がる中、やけに暗く落ち込んでいる男性が。
仕方ないなと酒を杯に注ごうとすると、「一人にしてくれ…」とどこかで聞いたことのある声。
そっと顔を隠していた前髪を手でどけると、なんと壬氏でした。
顔を上げた壬氏も、猫猫の姿にびっくり。
「…おまえ、化粧で変わるっていわれないか?」と言う壬氏に、「…よく言われます」と答える猫猫。
瞬間、腕をつかもうとした壬氏をするりとかわします。
「妓女には触れないでください」という猫猫。
短期就労中という言葉に、またしても真っ青になって言葉を失う壬氏。
「別に個人で客をとったりしてませんよ、まだ」という猫猫に、「なら俺が買ってやろうか?」と提案する壬氏。
その提案に「…いいかもしれませんね」とうなずく猫猫。
もう一度後宮勤めも悪くないという猫猫の言葉に、「あそこが嫌で辞めたんじゃなかったのか」と自身の勘違いに気が付く壬氏。
「続けたいと打診したのに、解雇したのはそちらでしょう。毒見役などなろうと思ってもなれるものじゃありませんし。頂けないのは毒実験ができないことくらいでした」と不満そうに言う猫猫。
「さすがに毒実験はやめろ」とにへらと、子どもみたいな笑みを浮かべると、「そうだよな、そういうやつだよな」と安心したようにつぶやく壬氏。
猫猫にもう一度触れようとするも避けれてしまいますが、しつこく食い下がって唇に指をあてる壬氏。
その指を自分の唇に当て、にこっと天女のような笑みを浮かべる壬氏に、猫猫は顔を赤くするのでした。
数日後。
目も眩むほどの金子と、虫から生えた奇妙な草を盛った壬氏が、猫猫の身請けに訪れるのでした。