04巻:凪のお暇ー幸せの青い鳥探しー

凪のお暇(4) (秋田レディースコミックスDX) [ コナリミサト ]

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「マジで滑ってんなよ…っ」

雨の中、両手で顔を覆う慎二。
まるで泣いているような姿に驚く凪に、「雨だ、雨。むしろ笑けてくるくらいだわ」と憎まれ口。

錯覚かと去りかけた凪に「最後に一つだけ確認させろ。おまえ、本当にあんな奴でいいんだな?」と、真剣な口調で尋ねます。

「ゴンさんといると空気がおいしいの」と答える凪に、「その空気のうまみだけのために、空気読んでやっていくんだ」と、自分の時間をないがしろにして、空気読んで、みたくないもんにはフタをしていると、今の凪の状態をズバリ。

否定するも「おまえは絶対に変われないって」という慎二の言葉に過呼吸気味になってしまいます。

そんな二人の間に、声を聞きつけたうららちゃんが入って威嚇します。

 

ゾンビ

アパートに帰ってきた凪に、ぴったりくっついて離れないうららちゃん。
ママさんの提案で、お風呂を頂くことに。

ハッカ湯に浸かりながら、「こんな風にゆっくりお風呂に浸かったの、いつぶり?」と思う凪。

お風呂から上がると、寝ぼけまなこのうららちゃんが「凪ちゃん、まだ帰らないで…」とぴったり。
めずらしく気を張り、疲れた様子。

膝に顔を乗せて眠るうららちゃんの頭を撫でながら、「こんな風にうららちゃんの顔見たの、いつぶり?」と、はっとします。

そんな凪に、ママさんが土鍋プリンで応用した土鍋まるごと茶わん蒸しを。
そのおいしさに、また「どのくらい、台所に立ってないんだっけ?」と。

すぐに、ゴンさんに会えない時間は丸くなっていた事。
目を閉じて、耳をふさいで、毒虫みたく丸まっていたと気が付きます。

そして、「さっき口論してたのって…」とママさんに話そうとするのですが、なかなか言葉が出てこない凪。
凪の気持ちを察したうららちゃんママは、「私でよければお話を聞きますよ」と。

 

凪の話から、うららちゃんママも「バイクで海に連れて行かれたら、恋に落ちるのは仕方ないです」と、亡くなったご主人との馴れ初めを。
凪も共感。

世界が広がっていくのが嬉しい…そんな気持ちにさせてくれる。
でも、車派の慎二は違う。

「(バイクなら)彼とどこまでもいける万能感!」
「それです、それ!!」

と、盛り上がるも、うららちゃんママの「だから私、その翌日すぐにバイクの免許を取りにいきましたもん!」という言葉に、それまでの共感がすっ飛びます。

自分の運転でどこかに行こうなんて今まで一度も考えたことなかったと、うららちゃんママの発想と自分の発想のなさの差に気が付きます。
ただただ思うのは、うららちゃんママはすごいなぁという事。

 

自分の部屋に戻る際、ゴンさんの部屋から顔色の悪い女性が「ゴンゴン!?」と飛び出してきます。
凪の足音を、ゴンさんと勘違いしたようです。

その女性の首元には、合鍵と思われる鍵がネックレスのようにぶら下がっていました。

女性の疲れ切ったゾンビみたいな顔…部屋に戻った凪は、自分も同じ顔をしている事に気が付きます。

「その空気のうまみのためだけに、空気読んでやってくんだ?」
「自分の時間はないがしろにして」

慎二に言われた言葉がリフレイン。

部屋を見回すと、元気をなくした豆苗、敷きっぱなしのふとん、だらしなく床に置かれた食事、脱いだ洋服がかかっている扇風機…。

確かにゴンさんといると空気がおいしい。
でも、ゴンさんと入れない時は、息をしてないみたいだった。

凪はつき物が取れたように我に返ると、深夜遅くまで営業しているお店に行き、そこで自転車を購入。
そして、海目指して突っ走ります。

 

海に向かって…

夜通し走って、たどり着いた朝の海。
そのきれいな海に鍵を放り投げる凪。

なんて清々しい気持ち。
私は取り戻せたんだ、私のお暇を。

 

…とイメージして走り出した凪でしたが、現実はそう甘くななかった。

迷子になり、車にクラクションを鳴らされ、転んで膝にケガをし、ガラケーが充電切れ。

「世界にひとりぼっちでいるみたい」と心細く歩いていると、「スナック・バブル」とかかれたお店が。

入るのをためらうも、「ドアの外側からだけじゃわからない」と、思い切って入店。

入ると、その店のママとスタッフの女性2名が「お疲れさまー」とお出迎え。
「初めてのお客さん、とても嬉しー」という女性に、客じゃない事、迷子になってしまい道を尋ねたいと話すと、「冷やかしなら帰んな!」とママのキツイお言葉。

都合よくいかないよねと外に出ようとすると、ケガをしているのに気がついた女性スタッフが引き止め、手当てをしてくれます。

今、家に帰ったらゴンさんのキラキラにたやすくやられると、「どうしても今すぐ行かなくちゃいけないところがありまして」と、かくかくしかじかと治療費代わりに話す凪。

今までの人生で、一度も自分の意志でどこかに行きたいって思った事がない。
そのくせ、誰かに乗っかって、どこか遠くに連れてってほしいって思ってた。
その浅ましさが恥ずかしい。

だから、自分の意志で自分の足で一人で海に行かなくちゃいけないんですと、顔を真っ赤にして話します。

そんな凪の話にママさんは、「幸せの青い鳥は、探すもんじゃない!食うもんなんだってことさ!」と、賄の鳥照り丼を出します。

「初めて自分の意志でどこかに行きたいと思ったなら、とことん走りな!28歳無職」との励ましの言葉にが嬉しく感じる凪でした。

 

去り際、店の番号や手袋、地図をくれる三人。

青い鳥パワーでおなかもぽかぽか。
うっすら夜明けの待ちを、海に向かって走り始めます。

その頃、慎二は雨がたたって熱を出していました。
熱でぼーっとする頭でみたのは、心配そうに大根汁を持ってくる、かつての姿の凪。

「あの子は、もう、いない」

そう思った瞬間でした。

 

地図をみながら走るも、なかなか目的地に辿り着けない。

自分が方向音痴であることを知るとともに、これまでいかに人の運転に乗っかっていただけなのかを痛感します。
足立さんに言われた「お姫様かよ」との言葉にも納得。

走れどもなかなかつかず、高架下のドクロの落書きや、道端に座り込んで話している柄の悪そうな男性二人の姿に迂回。
気持ちばかりが焦る中、自転車のタイヤが割れた瓶を踏んでパンクしてしまいます。

やっと見つけた自転車屋さんはまだ営業前だったことからも、漫画喫茶に避難。
そこで今度は、酔っ払いのおじさんに絡まれてしまいます。

読んでいた少女漫画の主人公じゃない。
自分の力で、自分を守らなくちゃと、勇気を振り絞って「や、やみてください…っ」と、噛みつつも拒絶の言葉を口にする凪。
おじさんは意外とあっさりとその場を離れてくれました。

たった一言の拒絶の言葉を言うだけでも、すごい汗と震え。
地に足をつけて、しっかり、どっしりと自分を鼓舞します。

 

自転車のタイヤを交換するという痛い出費があったものの、無事に目的地である東扇島西公園へと続く海底トンネルにつきます。

ドキドキしながら階段を降りた先には、出口が見えないほど長くまっすぐに続くトンネル。
波の音が大きく響き、凪以外の人の姿はなし。

歩きながら、しきりに「大丈夫?」「この道、合ってる?」と不安になる心から、これまで『道を間違える』ってことに怯えていたんだと思う凪。

 

やがて出口が見え、上がった先に見えた海の光景は、ゴンさんというキラキラフィルターがないので普通。

だけど、空気はおいしい。

 

帰り道、行きで見かけた高架線のドクロの落書きは、よく見れば「ラブ&ピース」と愛と世界平和を謳っている。

河川を走っていると、行きの道端にいた怪しげな二人組が、少年野球チームと和やかに練習をしている。

道を間違えるのは怖いけど、間違えたり立ち止まったりしたからこそ、見える者があったりするのかもと思う凪。

 

帰宅すると、豆乳とツナを炒めた食事を堪能。
そのおいしさに感動!

そして、扇風機にのっかっていた洋服をどけると、「ごめんね、ただいま」と語り掛けるのでした。

そんな風に、凪が旅を終えて諸々を噛みしめている時、隣の部屋のゴンさんは修羅場となっていました。




 

ゴンさんの憂鬱

老若男女問わず、必ずと言っていいほど「あなたといると私はダメになる」と言われるゴンさん。
これまで何回も「ああ、またか」と。

そして今、モルちゃんからも。

げっそりとやつれたモルちゃんの顔をみながら思うのは、「この子もまた、壊れちゃったな。あんなに笑ってくれてたのに」。

 

結局誰にも選んでもらえない事にさみしさを感じながら、ベランダで一人煙草。

以前、エリィから言われた「その先がほしくなるの!そうゆうのわかんないでしょ、アンタ」の意味を考えるも、わからない。

隣の凪の部屋からは、うららちゃんと楽しく過ごしている声が聞こえてきます。

この時、凪とうららちゃんは「フライパンまるごとちぎりパン」を作って、おなか一杯になっていたところでした。

 

夕方。
ゴンさんの部屋に、凪が作った「フライパンまるごとちぎりパン」をおすそ分けに。

部屋には上がらず、もらった鍵を返され悟るゴンさん。

モルちゃんと同じ様に、「害悪なドラッグ」と言われるのかと思ったのですが、凪の口から出てきたのは「フライパンいっぱいに焼いたちぎりパンみたいな人」。

「おいしいパンなら、食べたいときに食べればいいじゃない」と、いまいちぴんとこないゴンさん。

そんなゴンさんに、凪はさらなる例えを出します。

凪が欲求不満の成人男性だとしたら、ゴンさんは妖艶でやたら魅力的な女子中学生。
おいしいちぎりパン片手に、いつでも食べていいよってささやいてくると。

これにはゴンさんも納得。
「それは絶対食べちゃダメだ。お縄だし身を滅ぼすよ」と。

 

凪が帰った後、「凪ちゃんて、本当におもしろいな」と、ちぎりパンを食べながら思うゴンさん。
いつかの、ゴーヤの赤い実が食べられることを教えてくれた事が思い出されます。

「凪ちゃんは壊れないかもしれない。だとしたら俺、凪ちゃんの通過点にはなりたくないぁ」と思った瞬間、胸に疼きが。

「ん?」と不思議に思うゴンさんでした。

 

坂本さんは頑張っている

坂本龍子・28歳の朝は早く、ビタミンスムージーでやる気をチャージ。
朝一にニュースやメールをチェック。
第一線で活躍している同級生たちの近状報告を眺め、皆みたいに頑張ろうと前向きにな気持ちに。

凪との待ち合わせると、合同企業説明会に参加。
積極的に自分を売り込んでいきます。

なんだかかみ合っていない感を自分でも感じてはいるものの、それをやめることはできない。
やめてしまったら…と、腕にはめている石に手を置く坂本さん。

そこに、別のブースで企業側として参加していた男性が話しかけてきます。
なんと、大学の沖田先輩。

大盛況のブースをみて、「先輩のとこ、ベンチャーでしたよね」と目を輝かせながら言う坂本さんに、沖田先輩は「よかったら、面接に来る?」と社長に掛け合ってくれることを約束してくれます。

嬉しい申し出で喜ぶ坂本さん。
凪も一緒に面接決定です。

 

面接当日。
超高層ビルのテナントとして入っている会社に、坂本さんは興奮。

社内のスタッフも「期待しているぞ、ニューカマー!」「わが社に新しい風を!」と活気や仲の良さが感じられる職場。

通された社長室には、高そうなスーツに身を包んだ七三分けの男性が。
さわやかで紳士的、そして優しそうな印象を受けるも、どこか違和感が…。

 

面接後に入ったカフェでお茶をしながら、「素敵な会社でしたね!」と盛り上がる坂本さん。

「特に感激したのは、社員は人材じゃなくて人財だと思ってるって社長の話です!」と熱く語るも、凪は「私はやめた方がいいと思います」と真っ青。

実は自分も思っていた決定的な一言を言われ、つい切れてしまう坂本さん。

「そうやって大島さんはアラ探しばっかりで、後ろ向きすぎます!」と、勢いで返事のメールを出そうとするのですが、「たまには後ろも向かなくちゃ、自分がどこにいるのかわからなくなっちゃいませんか」という凪の言葉に手が止まります。

正直いうと、最初に凪に会ったとき、なんて頭の悪い人だろうと思っていた坂本さん。
そんなに実直に向き合わなくてもいいのにと。

そんな真摯に、本当の事を言う必要ないのに。
こんな私に、そんな効率の悪いことしなくてもいいのにと。

 

沖田先輩の勤めている会社がやばそうなことは、事前にネットで調べて知っていました。
ブースにいた人たちもサクラだったことも。

認めたくないのは、自分が惨めになってしまうから。

小さい頃から神童と呼ばれて育ち、一番頭のいい人がいくとされる大学に入学っしたものの、就活で自分の地頭がよくなかったことに気がつきます。

周りが大企業に就職していく中、第321志望めくらいの会社にやっと就職するも、ミスするたびに「これだから高学歴は使えない」と鬼の首をとったように言われる。

そんな周囲の態度に辟易し、職を転々。
石に出会ったのもその頃。

とにかく前向きにと思いながらやってきた。
後ろ向きの感情から、「もしもあの時」なんて思うようであれば、自分がみじめで見ていられない。

 

「とにかく時間だけはあります。話を聞くことならいくらでも」と手を差し伸べる凪。
後悔ばかりのあの時があったから、私はこの人に会えたんだ…と気が付く大島さんでした。

 

慎二を悩ます呪い

夢の中にまで凪が出て、朝から目覚めが悪い慎二。

好みだった控えめな性格とストレートロングは見る影もなく、もじゃもじゃでゴワゴワのありのまま気取りのブスになり果てた。
隣人の天然ゆる男に喰われてあえなく闇落ちしたと、心の中で凪の事をぼろくそにこき下ろしますが、電車で座っていた小さいな男の子は慎二の気持ちに気が付いていました。

「ママー、あのお兄ちゃんすごい顔で泣いてたよ。お腹でも痛かったのかなぁ?」

 

そんな状態でも、営業成績は絶好調。

「今月入って契約取るの何本目すか?」
「人間じゃない」
「俺…我聞さんが怖くなってきました」

…などなど。
相手に合わせて、自分の中で培ってきた引き出しを開けて対応。

でも、変わっていく凪だけは、どの引き出しを使ったらいいのかわからない。

考えた末の対処法は、とにかく会わなければいいというもの。
呪いも風化し腐ってくのみと。

 

その頃、凪は母からの電話で危機に陥っていました。

なんと、おばあちゃんのぬか床を閉店するので、小分けした凪のほうで今後は作って送ってほしいと。
しかも、年明けに東京である優ちゃんの結婚式に母が来ることも思い出し、その対策を失念していたことに気が付きます。

引っ越しのどさくさで、ぬか床はすっかりダメに…。
これはやばいと慌てるのですが、一つだけ解決策を思い出します。

ただ、それは凪にとってはなるべくなら避けたい手段。
とはいえ、背に腹はかえらないと決心します。

 

夜。
慎二は広報部の接待に応援参加。

その場にいた女子社員からいい雰囲気になるのですが、髪を触った瞬間、凪のもじゃもじゃゴワゴワ頭の感覚が…。

思わず後ろに飛び頭をしたたかに打ちます。

 

帰り道、「とうとう手触りまで感じたぞ!?」と恐怖を感じて手が震える慎二。

そこに、当の呪いの本人…凪が。
家の前で待っていたのです。

思いがけない出現に、慎二フリーズ。
「これは、なんて名前の呪いだ」

 

凪の突然の訪問の理由は、以前、慎二の部屋に通っていた時に冷蔵庫に入れたぬか床の回収でした。
少しカビが生えているものの、下の方は生きていると喜ぶ凪。

顔を青ざめ呆然としている慎二に、とびきりの笑顔を向けます。
その笑顔に、かわいいと思いつつ必死に否定して自分を保とうとします。

「俺がどんだけ毎日必死に…!それをこんな!!悪魔か!?いや違うな、鬼だな、鬼!」と追い出します。

そんな慎二の様子に、「疲労かな」と心配しながらも帰る凪でした。

 

まるまった布団の中で、「前、会った時よりも顔色が良くなってたな。もしかして隣の奴とは縁がきれたのか?」と思うも、瞬時に打ち消し寝ることに意識を集中させます。

が…

その日から、夢に出てくるのは、鬼の姿にぬか床を持っている凪。
さすがの慎二もノイローゼ気味です。

 

そんなある日。
大阪から移動になった女性を紹介されます。

市川円(いちかわまどか)。

「我聞さんの噂はかねがね。憧れの人と一緒に働けて感激ですっ。よろしくお願いします!!」

とってもかわいい女子アナのような市川さんに、「顔が可愛い、圧倒的に」と食いつく慎二でした。

 

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