01巻:薬屋のひとりごと~後宮の呪い~

薬屋のひとりごと(1) (ビッグガンガンコミックス) [ 日向夏 ]

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「露店の串焼き食べたなぁ」と、洗濯物を手に空を見上げながらつぶやくのは、後宮下女として3か月前から最近働き始めた猫猫(マオマオ)17歳。

薬師としてやっていた猫猫ですが、薬草採取に出かけた森で人さらいに誘拐され、後宮に売られ下女として働くはめに。
今日も下女としてひっそり仕事をこなします。

そんな中、後宮でお世継ぎが次々と亡くなっているという不可思議な事件を耳にします。

帝の子どもが3人も生まれて間もなく亡くなり、現在生後3か月の男児と六か月の女児が存命なのだが、どちらの部屋にもお医者様が入った状態と。
後宮では、「呪では!?」ともっぱらの噂なのでした。

 

後宮下女・小蘭から聞いたうわさ話を、冷静に分析する猫猫。

皇位争いなら公主が狙われる理由はないから、毒を盛られる可能性は少ない。
病気か血筋か…

梨花妃の子・東宮の方が容態は重く、母である梨花妃自身も頭痛とか腹痛、吐き気があるという話に、興味をもつ猫猫。
ちょっと様子を見てみようと上級妃が集まる中央に向かうと、そこではちょうど当の梨花妃と玉葉妃の修羅場が繰り広げられていました。

「自分の子が娘だからと、男子の吾子を呪い殺す気だろう!」と怒りの形相の梨花妃。
対して玉葉妃は叩かれた頬に手を添えながら、「そんなわけないと貴方もわかっているでしょう。小鈴も同じように苦しんでいるのですから」と冷静に返します。

そんな二人の后の様子と、間にいるおろおろとした医者の姿をみつめる猫猫。

「あの医者はヤブだ。あれだけ妃二人のそばにいて本当に気付いていないのか」と、今回の一件が呪ではない事を悟ります。

どう伝えたらいいのものか…と思案顔でその場を去る猫猫。

…が、その様子を目にとめていた者がいたことに猫猫は気が付いていません。

 

騒動からしばらくして、東宮が亡くなられました。

あの日、簡単な文をシャクナゲに結い二人の后の元にこっそり置いておいた猫猫。

『おしろいはどく、赤子にふれさすな』

聞き入れてくれなかったことを仕方ないとしつつ、このままでは玉葉妃の公主も時間の問題か…と暗い気持ちで思うのでした。

 

その頃、玉葉妃の元では、猫猫が書いて置いた文がとある宦官の手に渡っていました。

「無知は罪ですね。赤子の口に入るものなら、もっと気にかけていればよかった」と言う玉葉妃。

文を手にした文官は、文を書いた人物を見つけるため動き出すのでした。

 

仕事中、中央の宮官長室に呼び出しを受けた猫猫。

他にも多数の下女が呼ばれている事からも「人手不足かな?」と不思議に思いながら行くと、そこに現れたのは女性のように美しい宦官。

おもむろに紙に文を書いて掲げると、「今日はこれで解散だ。部屋に戻っていいぞ」と言います。

そこに書かれていたのは、『そこのソバカス女。お前は居残りだ』。

その言葉にぎょっとする猫猫。
目をつけられるヘマをしたかと警戒していると、皆が一斉に部屋を出ていきます。
その様子に、「この部屋で文字が読めるのは私だけ!?」と、その言葉の真の意味を悟ります。

が、時すでに遅し。

「壬氏だ。黙ってついてこい」と肩に手を置く宦官が。
まんまとはめられたのでした。

 

「不思議だ。君は字が読めない事になっているんだがね」という壬氏の言葉に「はい。卑賎の生まれでして、何かの間違いでは」とあくまでもシラをきる猫猫。

「世の中は無知なふりをしていた方が立ち回りやすいのだ」が猫猫のポリシーです。

壬氏の後を歩きながら考えるのは、なぜ文の事がばれているのか?

 

悶々と考える猫猫が連れて行かれたのは、玉葉妃の部屋でした。

ぺこりと頭を下げ玉葉妃に、慌てて「そのようなことをされる身分ではありません!」と恐縮する猫猫。
「あなたはやや子の命の恩人です」というも、「人違いではありませんか?」とあくまでもしらばっくれます。

が、壬氏が証拠となる手紙…下女の尚服を裂いて書いた手紙を見せたことで何も言えず…。
あきらめて、自分は花街でそだったので、化粧として使われていたおしろいが原因であることに気が付いたと話すのでした。

おしろいには身体を蝕む毒が含まれており、実際に命を落とした妓女を見ていたがゆえの知識でした。

「…それで、私は一体、何をすればよろしいのでしょうか?」と諦めたように言う猫猫に、玉葉妃は「私の侍女になってもらいます」とにっこりと微笑むのでした。




 

毒見と誤解

上級妃である玉葉妃は明るく穏やかな性格で、かつ聡明で用心深い。
どこの馬の骨かもわからぬ女官を侍女にはしない。

現在、玉葉妃には4人の侍女がいるものの上級妃としては少なく、それでは矜持が保てない事を壬氏は心配していました。

そこにうってつけのように現れた猫猫。

毒物に明るい猫猫を利用しない手はないものの、その知識を悪用しようものなら、できない立場に追いやればいい。
念のため、色目を使っておくかと考えるのでした。

 

その頃。

玉葉妃の侍女になり、寝台付きの部屋があてがわれた猫猫。
何もすることがなく部屋でゴロゴロしていました。

お付きの侍女4名は働き者で、新参者の猫猫ができる事と言えば食べることぐらい。
しかも、同情したように優しくしてくれます。

なぜなら、猫猫の仕事は毒見係だから。

玉葉妃が公主を懐妊した頃、2回ほど毒を盛られ、毒見役の2名が犠牲に。
東宮の件で神経質になっていることからも、毒見係専門の下女が来れば使い捨ての駒とみて同情していたのでした。

 

暗い顔をする侍女とは違い、なぜかにっこり天使スマイルの壬氏。

「これだけ色目を使っておけばいいだろう」と思う壬氏でしたが、「よほど暇なんだろうな」とあきれ顔の猫猫です。

皆が見つめる中、黙々と食べる猫猫。
「それらしい毒はありません」との言葉に、周囲から安堵のため息がもれます。

もともと猫猫は、家にいた頃から実験と称して腕でいろいろと試していました。
なので、多少の毒には耐性ができてしまっています。

本来なら毒見には向かいないのですが、猫猫にとってはある意味、幸運ともいえる役職なのでした。

思わずにやけてしまう猫猫に、周囲はドン引きです。

 

食後、侍女頭・紅娘に呼ばれた猫猫。

「皿は銀製のものに変えたほうがよろしいと思います」と述べると、「壬氏様の言うとおりね」と今回はあえて毒を避けるなら基本の銀食器を使わなかったことを言います。
壬氏のたくらみが潜んでいたことに、渋い顔をする猫猫。

「その知識と字が書けると言っていれば、お給金はもっともらえたはずだけど」という侍女頭に、「人さらいに給金の一部が送られているなんて腸が煮えくり返ります」と自分が誘拐されてここにいることを話します。

その話を聞いた侍女頭は、近くにあった花瓶を猫猫に渡すフリしてわざと落とします。

「結構高いのよ、コレ。女官程度のお給金じゃ払えないわ」と、人さらいへの仕送り分からすべて差し引くと言う侍女頭。
さらに、給料とほぼ同額の毒見役の追加給金をくれるのでした。
人攫いにお金が渡らない分、猫猫が得をする形に。

飴の使い方がうまいなぁと思いながら退出する猫猫。
その姿を、玉葉妃の侍女3人が柱の影からこっそりと見ていました。

猫猫の、傷とやけどの跡を隠すすために巻かれている左腕の包帯に、口数が少ない事から、「親に虐待され、その挙句後宮に売り飛ばされ、果ては毒見役…」と可哀想な子として見ていたのでした。

 

毒見役以外、何もすることがない猫猫。
食事も豪華になったことから、まるで家畜にもなったような気持でした。

ただ、毒の致死量は体の大きさに比例するので、太った分だけ生き残る可能性が高くなる。
また、やせ型の猫猫では毒で痩せてもわかりにくかったのですが、太ることで痩せる形で効く毒なら見分けられることができます。

多くの毒は致死量を超えても生き残る自信がある猫猫ですが、周囲はそうとは見れくれず、侍女3人は猫猫にたくさん食べさせてくれます。

後宮に来る前までは新しい薬の開発をしていた日々だっただけに、それができない今の生活は不満しかなし。
しかも、後宮内には材料となる薬草がたくさんあるので、それらを採取して何もつくれないことは大きなストレスを感じる猫猫です。

 

このままでは豚になると心配していると、壬氏から呼び出しを受けます。

ニッコリと笑顔で座っている壬氏に、「またこの笑顔…」と引きつり気味の猫猫。
壬氏は、ある武官にもらったという包子の毒見を猫猫に頼みます。

手に取り、匂いを嗅いだだけで「これは催淫剤入りですね」と即答する猫猫。

「害はありませんので、持ち帰り美味しく頂いてください」との言葉に、「もらった相手を考えると素直に食べられないもんだろ」と、目論見が外れたような顔の壬氏。

「この男…知っていて食べさせようとしたな」と心底ぞっとし、思わず嫌悪感ありありの表情がでてしまう猫猫。

そんな二人の様子を傍でみていた玉葉妃は、笑い声を必死に押し殺します。

 

気を取り直し、壬氏は、今度は猫猫に媚薬作りを命を出します。

その命に、調薬ができると目を輝かせる猫猫。
「時間と材料と道具さえあれば、準ずるものが作れます」と、引き受けるのでした。

 

媚薬作り

自室に戻る間に、催淫剤入り点心をくれた武官だけでなく、文官、下級妃、中級妃から誘いを受ける壬氏。
すべてやんわりとお断り。

特に声をかける妃については、帝への不心得としてみていました。

というのも、壬氏は女官への試金石として配属されている存在。
選定の為に置かれているというのに気が付いている妃は多くはありません。

現に、皇帝に玉葉妃と梨花妃を推薦したのは壬氏。

帝に対して邪な感情が見当たらず、梨花妃にいたっては心酔の域。

ただ、東宮を亡くした梨花妃はやせ細り、以前の美貌は見る影もないほど。
今後の寵愛は玉葉妃に傾き続けるかもしれないと思う壬氏。

なんにせよ、自分は計画通りに事を運べばいい事。
それにはあの薬師殿(猫猫)の協力がいくらか占めているかもしれない…あれは思った以上に仕える。

その表情はいつしかにやけ顔に…

マゾヒストではないけれども、新しいおもしろいおもちゃを手に入れた気分なのでした。

 

壬氏の命により、媚薬作りに必要な材料をもらいに医務室へと向かう猫猫。
そこには、以前みかけたヤブ医者と壬氏の付き人の高順が待っていました。

猫猫を案内する高順について薬剤室に入る猫猫を、嫉妬したように見つめる医者。
その様子にあきれる猫猫でしたが、薬剤室に入った瞬間、そんな気持ちは吹き飛んでしまいます。

久しぶりの、それも種類豊富な材料に、思わず嬉しくて踊ってしまう猫猫。
いつの間にかきていた壬氏に「その踊りは呪か何かか?」と声を掛けられ、はたと我に返ります。

 

なんとか一通りそろえ、媚薬作りを開始。

猫猫は花街にいた頃、一度だけ媚薬(チョコレート)を食べた事があったため、その記憶を元に作り始めます。

固めるのを待つ間、余った分をパンにしみ込ませて後で自分が食べる分を作るとともに片付け。
洗い場に行くついでに薬草摘みに夢中になってしまい、気が付けば日が落ちていました。

 

慌てて戻ると、部屋の前には青ざめた顔の高順と侍女頭・紅娘が。

その様子に嫌な予感がし、慌てて中に入ると、あられもない姿になっている玉葉妃の侍女3人の姿が…

3人の様子を見た壬氏は、「とりあえず、効力はわかった」と。
その後ろでは、紅娘が顔を真っ赤にして怒り心頭です。

どうやら、3人の侍女は媚薬の残りをしみ込ませたパンを、おやつと間違えて食べてしまっていた様子。

これが「媚薬なのか?」と聞く壬氏に、「これは私の夜食です」と答える猫猫に皆が凍り付きます。

「酒や刺激物になれていると、それほど効きません」という猫猫の言葉に、「ということは、私が食べても問題ないのかな」という壬氏。
慌てて高順と紅娘が止めます。

そんな様子に、思わず壬氏が食べたらどうなるのかを想像する猫猫。
「顔だけ無駄にいいというのも考えものだ」と。

 

パンの話が終わると、本物の媚薬を差し出す猫猫。

「効き目が強いので、一粒ずつを目安にお願いします」との言葉に、玉葉妃も興味津々。

「帝のためにも作ってもらおうかしら」と声をかけるも、「いつもの強壮剤の3倍は効くと思います」との猫猫の言葉に真っ青。
却下です。

 

媚薬を受け取った壬氏、そして玉葉妃と部屋を出ていくと、ほっとしたように片付けを始める猫猫。

その後ろに、いつのまにか壬氏が…

振りむくと、すでに後ろ背に手を振りながら部屋からでていく壬氏の姿が。

ふと、パンが一つなくなっている事に気が付きます。
「被害者がでなければいいけど」とつぶやくのでした。

 

月下の芙蓉

最近、宮中で噂になっている白い幽霊騒ぎ。
1ヵ月くらい前から、夜な夜な城壁の上で踊る女姿の目撃談がささやかれていました。

後宮では珍しくもないうわさ話と冷静に聞く猫猫。
薬を見てもらうために医務室に向かいます。

猫猫が薬剤師としった医者は、以前とは違い猫猫が来るのを歓迎。
お茶を出してくれるまでに。

煎餅を頂こうとしていたところに、壬氏が登場。
壬氏は猫猫の前に座ると、医者に「これを持ってきて」とびっしりと書かれた紙を渡し、その場から去らせるのでした。
どうやら、猫猫に用があった様子。

 

「本題はなんですか?」と聞く猫猫に、今話題の幽霊騒ぎを口にする壬氏。

その話に関連するように出た夢遊病という言葉に反応したのをみるや、「どうやったら治る?」と猫猫に詰め寄ります。

「そんなものわかりません。少なくとも薬で治せる病ではありません」と冷たく答えるも諦めない壬氏。

「何なら治るんだ」と続けますが、「私の専門は薬です」と肩に置かれた手をはらう猫猫。

が、横を向いた猫猫に合わせるように、今度は手を頬にあててがっちりホールドして目線を外さないとしつこい。

「…努力します」としぶしぶ引き受けるのでした。

 

夜。
高順と共に、目撃された場所へと向かう猫猫。

そこで、高順から「壬氏様を毛虫を見るような目で見るのはやめて頂けませんか?」と言われます。

なぜなら、壬氏が頬を染め嬉しそうに報告するから。

そんな壬氏の姿を免疫のない人間がみたら後処理が大変と嘆く高順に、アレ(壬氏)の付き人というのは苦労が絶えないのだなと思う猫猫でした。

 

そして、現場に到着。

月の下、月下の芙蓉…来月、武官に下賜される予定の芙蓉妃が静かに踊っていたのでした。

 

芙蓉妃については、医者も知っている姫でした。

「繊細な姫だから…お目通りの時に舞踏で失敗して、それ以来部屋にこもりきりで。
入内から2年、お手付きもなしだ。
まぁ、今度下賜される先は幼馴染の武官だと聞いているし、幸せになれればいいけどね」

そう語る医者の言葉に、猫猫は芙蓉妃の夢遊病の意味を悟ります。

 

花街にいた頃、同じように夢遊病になった妓女の話を、玉葉妃と壬氏に話す猫猫。

「見請けが破談になった後、徘徊はなくなりました」という猫猫の言葉に、「見請けが嫌だったのかしら」という玉葉妃。

徘徊しないようにいろいろと試してみたものの、どれも気休めにしかならなかったとして、芙蓉妃についても打つ手なしと報告するのでした。

 

芙蓉妃を見つめる猫猫と玉葉妃。

「私にくらいは話してもいいんじゃないかしら?」と、お見通しの様子の玉葉妃の言葉に、猫猫は妓女の例から、自分の芙蓉妃への見解を述べます。

別の妓女で、同じように夢遊病を理由に破談になった妓女がいました。
新たな見請けの話が持ち上がったものの、病気持ちの妓女を見請けさせるのは忍びないとして楼主は断り続けます。
それでも相手は申し込み、前の半分の銀で契約が成立。

しかし、これは詐欺だった。

先に身請けを申し込んだのは後から申し込んだ男の知り合いで、妓女が夢遊病者の振りをして破談にし、本命の男が安い金額で身請けできるようにしたのでした。

妓女は年季があり、男は銀が足りなかったから。

 

「つまり、芙蓉妃はそれと同じことをしたと?」と問う玉葉妃に、「あくまで推測です」と前置きし、自分の見解を話す猫猫。

幼馴染である武官は姫に求婚できる立場ではないため、武勲を立てていつか姫を迎えにいくつもりだった。
ところが、姫は後宮に入ることに。

武官を思う姫は得意の舞踏をわざと失敗し、皇帝の気を引かないようにした。
目論見通り、夜伽はなし。

武官の武勲を集め芙蓉妃の下賜が決まると、皇帝が他人のものになる姫を惜しまないように、間違ってもお手付きにならないようにと怪しげな徘徊を始めた。

 

「帝については、なきにしもあらずね」と、猫猫の推理にうなずく玉葉妃。
好色な皇帝が、そこまで武官が思う姫に興味を持たないとは言い切れないと。

純潔を重んじるがゆえの芙蓉妃の行為に、「芙蓉妃がうらやましいなんて言ったら、私はひどい女かしら」と言う玉葉妃。

猫猫は「そんなことはないと思います」と答えます。

 

月の下で踊る芙蓉妃はとびぬけて美しかった。
その美しさは、恋だったのかと気が付く猫猫。

恋が女を美しくするのであれば、それは一体どんな薬になるのだろうと思うのでした。

 

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