金田一少年の事件簿File(3) (講談社漫画文庫) [ さとう ふみや ] 価格:660円 |
舞台は吹雪吹き荒れる北海道大雪山系の背氷村にある山小屋。
アイドル歌手・速水玲香、女優・加納りえの2名を、村に古くから伝わる雪夜叉伝説を利用して脅かそうというドッキリ企画に、熱を出した美雪の代わりにわき役として出演することになったはじめ。
同じくエキストラとして引っ張ってこられたおっさんこと剣持警部と、その上司でアメリカのロス帰りのエリート警視・明智健吾が刑事役としてリアル出演。
剣持警部とは思わぬ再会です。
速水玲香とともに、明智警視初登場の事件。
このドッキリ撮影中に惨劇が起こります。
他に山小屋には数名の撮影スタッフと、持ち主である画伯がいるのみ。
剣持警部…上司(明智)命令でドラマのエキストラに。
明智健吾…剣持警部の上司の警視庁警視。
速水玲香…人気絶頂のアイドル歌手。
加納りえ…長い下積み時代の末、人気が伸びてきたお色気女優。
大門優作…二枚目スターのアクション俳優。女好きで有名。
棟方ケン…オカマ俳優。
綾辻真理奈…タイムキーパー。
赤石道夫…撮影係。金遣いが荒く、仕事もいいかげんとの評判。
響史郎…音響係。大学で民俗学を専攻していて雪夜叉伝説に詳しい。
比留田将志…ディレクター。
氷室一聖…画家。山荘の持ち主。いつもマスクとグラサンで顔を隠している。
村のおじいさん…鬼火を見たと話す。
昼の部で速水玲香と加納えりを脅かし、夜の部では速水玲香にネタバレをして加納えりだけを標的にドッキリをしかける面々。
離れに泊まることになった加納のあずかり知らぬところで、さまざまなびっくり仕掛けが仕組まれます。
屋敷は2つに分かれており、行き来するには遠くの橋を渡らねばならず。
加納えりだけを離れに残し、全員が本館に。
そこで隠しカメラを通して、ドッキリ用の仕掛けスイッチを次々と押して加納えりを驚かせていきます。
ところがそこに、白い着物と夜叉の仮面をかぶった何者かが現れ、手にした斧で加納えりが殺害されてしまいます。
その姿は、まさに背氷村に伝わる雪夜叉伝説そのもの。
雪夜叉は、子どもを亡くした女性の魔物。
人買いに売られた女性が幼い娘を抱え背氷村に逃げてきますが、人買いの報復を恐れた村人たちにより締め出され、赤ちゃんはあえなく凍死。
その事を恨んだ女性が夜叉に。
それ以降、雪の降る夜に村人を殺していくという言い伝えが残っています。
画面に映し出された雪夜叉は、氷室の残した絵の通りの姿。
白い着物と夜叉の仮面を被り、斧で次々と撮影班を叩き殺していくのでした。
第二の殺人
加納りえが殺されたことで、急遽、殺人事件の捜査にとりかかる明智警視と剣持警部。
一も加わろとしますが、「これは子どものお遊びじゃないんだよ」と明智警視からバッサリ。
でも、そんなことはお構いなしに捜査に口を突っ込みます。
皆から事情聴取をしていると、加納りえが殺された時間に唯一所在がつかめなかった撮影係・明石道夫が死体で発見されます。
ここで、明智警視が賭けを持ち掛けます。
一と剣持、そして自分…どちらが先に事件の謎を解くのか。
一は、明智の殺人事件を賭けにしてしまう感覚を「まともじゃない」ときっぱりと言いつつ、「この事件の犯人は俺が必ずつきとめる」と宣言するのでした。
第三の殺人
館の持ち主である氷室一聖について調べるはじめ。
かなりの人間嫌いなことからも、素顔があまり知られていないこと。
10年前に起きた飛行機の墜落事故の乗客で、その時に負った火傷跡を隠すためにマスクとグラサン姿でいること。
以降、絵を描くのをやめて、これまで描いてきた絵を売りながらこの山荘でひっそりと暮らしている事を知ります。
テレビドラマで、加納えりの殺害シーンを見たはじめは、「もしかして…」とある考えがひらめきます。
同時に、明智警視もその考えに至っており、ある実験をおこないます。
外にある荷物用のロープウェイで、犯人が向こう側に渡ったと。
つまりは、制限重量内に収まる速水玲香を犯人とする説でした。
ところが、「まだ彼女が犯人と決まったわけじゃない」とこの村の電力事情から不可能だということをはじめが証明します。
加納えりの殺害時の映像から、「鬼火」を見つけるはじめ。
鬼火について考察している中、今度はディレクターの比留田雅司が殺されます。
第4の殺人
みゆきから、10年前の飛行機事故について新たな情報を聞くはじめ。
事故の生存者を最初に見つけて助けたのが、比留田と明石、そして当時はまだ無名だった加納りえ。
近くでたまたま撮影していたことから、いち早く救助活動をしたことが新聞の記事に。
氷室画伯の自画像から事件のヒントを得た明智警視が、10年前の事故から犯人を特定します。
明智警視の見立てでは、犯人は山荘の主・氷室画伯。
本物の氷室画伯は飛行機事故ですでに無くなっており、顔が知られていないのをいいことに偽物がすり替わった。
比留田と明石、加納は氷室氏の死体を隠し、氷室画伯の数十億もの資産を手に入れたと。
偽物役は、その時に同行していたスタッフの誰か。
氷室画伯の部屋に行くと、そこには毒を飲んで死んでいるニセ氷室の姿が。
本当の名前は水沼。
かつて比留田たちと一緒に動いていたメイク係でした。
デスクには遺書が残されており、そこには事故当時の成りすましから、三人を殺害した経由が書き連ねられていました。
さらに、部屋からは夜叉の面と白装束も…。
事件の真相
賭けは明智警視の勝ちとして、警察手帳を取り上げられた剣持警部。
「金田一くん、君もわかっただろう!?自分がいかに身の程知らずだったか…」と言う明智警視。
はじめは何も言い返しません。
なぜなら、明智警視の推理には納得しておらず、考えるのは「鬼火」の事だけ。
氷室の書斎を探り、明智警視がまんまと真犯人にはめられたことを確証する物証を見つけたはじめ。
さらに、加納りえの殺害現場を見に行く途中で、アリバイトリックも見切ります。
はじめが指摘した犯人は、タイムキーパーの綾辻真理奈。
実は綾辻真理奈も10年前の事故の生存者。
父の姿は見つけられず、母は今にも崩れてきそうな機体に押しつぶされそうになっていました。
そこに騒ぎを聞きつけやってきた比留田達一行。
助けを求めるも、氷室画伯のすり替えに必死だったため、真理奈を邪険に扱う始末。
真理奈の手で支えていられなくなってきた頃、母は「あなただけでも生きて」といって、支えていた真理奈を突き飛ばし下敷きに。
「もうあの四人は全員殺せたんですもの…生きる目的は果たしたわ」と、抵抗せずに連行されるのでした。
後日談
剣持警部にお願いして、真理奈の面会に来たはじめ。
「夢の中では、まだあいつらが同じことをしてて…」と悪夢について話す真理奈。
そんな真理奈にはじめは、「その時、あんたのお母さんは、あんたがこんなことするのを望んだんだろうか?その時、最後の力を振り絞って自分の娘を助けたのは、あんただけも生き延びて…幸せになってほしかったんじゃないのかな…?」と。
はじめの言葉に「お説教はごめんだわ」と席を立つ真理奈。
部屋から出る際に「ありがとう」と一言ぽつり。
その目には、涙が一筋流れていました。
帰り道。
明智警視が廊下の先から。
はじめが大どんでん返しをしたことで、なんと警視である明智が剣持警部に道をゆずるのでした。