「眠りの牢獄」浦賀 和宏

眠りの牢獄 (講談社文庫) [ 浦賀和宏 ]

価格:514円
(2018/11/19 19:05時点)

そこまで長くないお話ですが、いくつもの仕掛けが施されています。
いくつもの謎が、最後にするりするりと解けていくのが気持ちいい。

ああ、こういうことを考えて仕込んでいたんだと、もっともっと読みたくなるそんな作家さんの本です。

例えるなら、ゆっくりと登って、1回だけ急降下するジェットコースターみたいな?

ストーリーはこんな感じ↓


階段から落ちた恋人・亜矢子は意識不明のまま昏睡状態に陥る。

それから5年、浦賀は亜矢子の兄に呼び出され、友人の北澤・吉野と共に階下の地下室に閉じ込められてしまう。
解放の条件は彼女を突き落とした人物自身の告白だった。

同時に外では完全犯罪の計画がメール交換で進行。
外部で進行する「代理殺人」の本当の目的とは何か。
驚愕の結末は予測不可能!?

*「眠りの牢獄」背表紙より抜粋


 

単に閉じ込めらた中から犯人捜し…なら興味がわかなかったのですが、それに外部の殺人も同時進行というのに興味を持ち読みました。

こんな繋がりがあったのねーと驚くとともに、主人公の印象がガラリと変わるのも印象的。
思わず、最初から読み返しました。

そうすると、主人公のあの不可解な行動や、周囲の反応にも納得したわけで…。




登場人物はこちら↓

浦賀…小説家。
亜矢子…浦賀の恋人。

吉野圭一郎…浦賀の友人で、ミュージシャンを目指している。過去に浦賀に告白している。一緒に閉じ込められる。
北澤…浦賀の友人で美男子。一緒に閉じ込められる。

亜矢子の兄…両親は死別しているため、亜矢子の親代わり。妹思いの兄。ノンフィクション・ライター。

唐木…浦賀の担当編集者。

福山冴子…嫉妬深く、コンプレックスに悩む。
亜弓…冴子の友人。
博…冴子と付き合うも別れて、亜弓と付き合う。

鶸千路沙羅子(ひわちじ さらこ)…冴子の会った事のないメール友達。交換殺人を提案する。
新堂太一…沙羅子が過去にレイプされたという男性の一人。

登場人物の名前は、ほぼ名字だけか名前だけ。
真相がわかるとフルネームで表示されます。
最初からフルネームで書いちゃうと、隠れた繋がりがわかってしまいますからね。
くふふっ

 

「眠りの牢獄」は、亜矢子・浦賀・冴子・博の目線でそれぞれ語られます。

亜矢子が目覚め、浦賀と共に吉野と北澤がいる地下シェルターに向かうところから始まります。

階段を下っているところを、後ろから誰かに背中を押され、二人とも階下に転落。
浦賀は病院で意識を取り戻しますが、亜矢子は昏睡状態に陥ってしまいます。

それから5年。
小説家になった浦賀のところに、北澤から電話が入ります。
用件は、亜矢子のお兄さんからの呼びかけでした。
亜矢子の荷物を整理したいので、仲の良かった皆にも手伝ってほしいというのです。

ここで、福山冴子目線の話がスタートします。

冴子は博に振られたばかりで、そのいら立ちをネット社会に吐き出していました。
それがきっかけで鶸千路沙羅子(ひわちじ さらこ)と出会います。

沙羅子も男性からひどい仕打ちを受けた事があると、冴子と意気投合します。
そして、交換殺人を持ち掛けるのでした。

また浦賀に戻ります。

考えた末、亜矢子のお兄さんの要望に応えることにした浦賀は、吉野と北澤と共に出向きます。

さっそく案内されたのは、あの事件があった地下シェルター。
そこには、亜矢子の洋服から身の回りの品まで…さまざまなものが置かれていました。

すると、お兄さんが「亜矢子を突き落としたのは誰なんだ?」と3人に問いかけはじめます。
「亜矢子がああなった理由を考えて、答えを出せ」といって外へと向かい、地下シェルターを閉めてしまいます。

 

閉じ込められた3人、そして交換殺人を持ち掛けられた冴子。
二つの事件が進行し、最終的には一つにつながります。

まぁ…悪いことはできないって感じの結果ですかね。
これを仕組んだ人は…。自分の思惑に別の人の思惑も絡まり、自業自得な結果になっています。
人のどう感じて、どのように動くかなんて予測ができないんですよね。

こちらの作品は、どうも同作者の「彼女は存在しない」とつながっている?
こちらの作品も気になるところです。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です