「去年の冬、きみと別れ」中村 文則

去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫) [ 中村文則 ]

価格:496円
(2019/1/7 22:49時点)

映画化された小説。
でも、映画を観た友人の話では、ちょっと原作と大きく違うところもあったと。
映画と小説、両方で楽しんでみてもいいですね。

主人公は「僕」。
でも、この一人称の呼び方に仕掛けがされています。
その仕掛けは、話の途中で「君は誰だ?」と呼び掛けられることで判明します。
なので、この部分で「えーーーーー!?」と、最初にリターン。
注意深く読むことをお勧めします。

ストーリーはこちら!


ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。
彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。
だが、動機は不可解。
事件の関係者も全員どこか歪んでいる。

この異様さは何なのか?
それは本当に殺人だったのか?
「僕」が真相に辿り着けないのは必然だった。
なぜなら、この事件は実は…。

*「去年の冬、きみと別れ」裏表紙より


 

「僕」が殺人者として捕まっている木原坂雄大に面会するところから始まります。

「覚悟はある?」と聞く木原坂雄大。
読者にはわからない、事件にまつわるキーワードを口にする木原坂雄大と僕との会話。
「君と二人で考えていく事になるのかもしれないね」という木原坂雄大のセリフに、僕だけでなく読んでいるこちらも「なんだろう?」と不思議な入り口に立たされているような感覚になります。

拘置所を出た後、バーでウイスキーを口にしながら、木原坂雄大から言われた言葉を反芻する僕。
なにやら、こちらも一物ありそうな感じです。

「僕」目線の記述と資料という名の手紙が交互に書かれ、「僕」が真相n気が付き編集者に告白したところから、解答編といった感じで、今度は別の目線で話が書かれていきます。
そこにも資料が添付。

最終的に、この本は誰かの為に書かれたものであることがわかります。
事件のいきさつと調査過程、真実を一つの本にする過程を読者は体験する…といったところでしょうか。

うーん…。
自分の文才ではうまく紹介できないのがもどかしい。
それっくらい幻想的な感じの流れです。




 

登場人物はこちら↓

僕…雄大の事を本にするために、関係者に取材。
編集者…「僕」に、木原坂の事件を本にする仕事を持ち掛ける。
雪絵…「僕」の彼女

木原坂雄大…アート写真専門のカメラマン。二人の女性を殺害した罪で死刑判決が出ている。
木原坂朱里…雄大の姉。

弁護士…雄大の事件を担当。精神病で罪を軽くしようとしているが…。
加谷…雄大の友人。

吉本亜希子…火事で死亡。
小林百合子…火事で死亡。

鈴木…人形師。
K2メンバー…人形の購入者
斉藤…K2メンバー。ストーカー歴あり。

 

木原坂雄大が起こしたとされる事件。
でも、その裏に隠された本当の意図。
それが分かった時、なんて巧妙に仕組まれた話なんだろうと感嘆しました。

タイトルの「去年の冬、きみと別れ」も、きちんと意味がある。
その一文が振れた文を見つけた時、「そういうことか!?」と納得です。

 

また、最初と最後に出てくる

「M・Mへ
そしてJ・Iに捧ぐ」

これ…
登場人物の名前に当てはまらない。

「あの人とこの人だよね!?」
と思うところはあるのですが、イニシャルが違うんですよね。

でも、それもそのはず。
なぜなら、このお話はM・MとJ・Iの為に作られた小説だから。

フィクションでは、すべて仮名です。
その体をとったやり方らしいのです。

知った時は、「こりゃ、一本取られた!」って感じですわ。

私の頭では一度読んだだけでは半分ほどしか理解できなかったので、2回読みました(笑)。
ページ数は190ページと超短いので、楽に読めてしまいます。

ページ数は少ないですが、そこにミステリーがぎゅっと詰まっている作品なのです。




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