価格:648円 |
「Mの女」で、主人公・西野冴子を罠にはめた人々に集点をあてた作品。
どうして西野冴子を罠にかけるために協力したのか…その背景がわかります。
しかも、西野冴子とは関係ない、当人にとっては重大な事実が判明していくと、西野冴子の事件以外のドラマも。
一人一人、読み終わった後に、見方が変わります。
なるほど~。
こんなやり方で不本意ながらの協力をさせたんですね!
こわっ!!
西野冴子だけでなく、周囲の人までも意のままに操る手腕は恐怖以外の何物でもないです。
こんな人には絶対に逆らえない!
現実にいたら怖いです…。
ストーリーはこちら↓
ミステリ作家の西野冴子は、ストーカー扱いされた揚げ句、殺人事件の犯人として逮捕されてしまうが、一切心当たりがない。
始まりは、彼女が受け取った一通のファンレター。
些細な出来事から悪意を育てた者が十五年の時を経て、冴子を逃げ場のない隘路に追い込んでいく。
残酷なほど計算し尽くされた罠に落ちる人間を描くサスペンスミステリ。
登場人物はこちら↓
西野冴子…小説家。タケルと殺した罪で15年の実刑判決を受ける。
タケル(鈴木健)…茶髪で、ジーンズにチェーンを付けている。
泉堂莉菜…未解決事件専門のジャーナリスト。過去に身内が大事件に関与。「鈴木家殺人事件の真実」作者。
白石唯…ベリーショートの女性。
主婦…南条萌の隣にすむ主婦。クレーマー。南条萌が自殺したのをきっかけに白石唯と親しくなる。
(主婦の)夫…監察医。
南条萌…主婦の隣に住む書店勤めの女性。自殺?
いとこ…奥さんが階段から突き飛ばされた件で冴子に相談。白石唯と不倫関係。
(いとこの)の兄…勤めていた会社が倒産し、求職中。
(いとこの)妻…妊娠していたが、誰かに階段から突き落とされて流産してしまう。
担当編集者…妻と子どもとの関係が冷え切っている。近所に過去の不倫相手が引っ越してきて!?
(担当編集者)の娘…摂食障害で部屋に閉じこもっている。
不倫相手…担当編集者の子ども?DNA検査をする前に、子どもが行方不明になってしまう。
浦田和夫…小説家。
梶夏子…浦田の恋人。新作のプロット作りに協力。
桑原銀次郎…泉堂莉菜を調べるジャーナリスト。泉堂莉奈の重大な情報を握る?
立石アキ…泉堂莉菜と親しい。西野冴子とも接点あり?
最初に、西野冴子目線(「Mの女」)でのページが2ページ前後。
罠にかける人たちと関わった部分がピックアップされます。
「Mの女」での場面を思い出せると同時に、冴子目線からの協力者目線への移り変わりでわかりやすい。
まずは、西野冴子ファンレターを送った主婦。
実はこの主婦は、タチの悪いクレーマー。
ちょっと嫌なことがあると、すぐに苦情の手紙を送りつけていました。
ストレス発散として、手紙を送るだけで満足していたのです。
しかも、よほど暇なのか、隣に住む南条萌宅の様子をうかがうのが大好きという悪趣味持ち。
たまに訪ねてくる美しい恋人との様子を、壁越しに伺っています。
あんなきれいな恋人がいるなんて…と、日増しに募る嫉妬心。
ついに、南条萌宛に不倫を糾弾する手紙を送ります。
もちろん、嘘かホントかは知る由もなしのデタラメです。
手紙が原因で別れてしまえと、修羅場を期待して様子を伺い続ける主婦。
投函して数日後、隣に職場の人が数人、訪ねてきます。
ドアを叩く様子に、わざとらしく顔を出して話を聞く主婦。
管理人に人がカギを開けて部屋をのぞくと、そこには首をつっている南条萌が!?
びっくりする中、足元に自分が送った手紙がある事に気が付きます。
自分のせいではないと、知らんぷりを決め込む主婦。
心は早くも、空室になった隣に誰か引っ越してくれないかと願っていました。
そんなある日、南条萌の恋人が隣の部屋に現れます。
南条萌が死んだことを知らない恋人、白石唯。
主婦はさりげないふりで近づき、知り合いになります。
南条萌は本当に自殺なのか?
殺されたのだとしたら誰に?
最後、身近な意外な人物が関係していることが判明します。
「Mの女」では、主婦は夜逃げのように引っ越しをしていました。
その理由が明らかになります。
その後も、西野冴子の従妹、西野冴子の担当編集者と続きます。
従妹は、奥さんの妊娠をめぐってドツボにはまっていきます。
「Mの女」で奥さんが階段から突き落とされており、それがタケルの仕業ではないかと西野冴子をけしかけるのですが、事実は違い…。
担当編集者は、過去の不倫相手が近所に引っ越してきた事から事件が。
子どもが行方不明になるのですが、その犯人はあまりにも身近で悲しい人物。
その人物を守るために、西野冴子を罠にはめるのに協力します。
最後は、泉堂莉菜を調べる桑原銀次郎を嵌めるべく、主婦・従妹・編集者にさらなる指示を与えます。
同時に、それは十五年目の復讐が自分には来ないようにするための策。
桑原銀次郎さんは、泉堂莉菜に関して重大な情報をつかんでいたよう。
あの手この手で追い詰める手腕は流石としか言いようがありませんが、次作では泉堂莉奈をぎゃふんといわせてもらいたいなぁ~。
すっきりした決着が見たい!!
「十五年目の復讐」は、「Mの女」も含めてもう一度読み返してみたくなる本です。
ページ数はそこまで多くないですが、なかなか読みごたえがあるおすすめの本です。
<浦賀 和宏の本>
「Mの女」
「眠りの牢獄」