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価格:616円 |
マンションのベランダの手すりを乗り越え、覚悟を決めたように飛び降りた一人の少年(鹿野)。
気が付くと、血を流し、脚が不自然に曲がった状態で知らない場所に居ました。
「僕、マンションから飛び降りて…」と記憶を思い返そうとすると、「こんにちは。自殺ですね?」とニッコリ笑顔のスーツ姿の男性が話しかけてきました。
「自殺のかたはこちらです」と促す男性。
胸元には「シ村」と書かれたネームがぶら下がっています。
まるでどこかの役所のような場所。
自殺課と書かれた窓口に座ると、自殺申請書の記入を言われます。
…と、口から血がポタリ。
慌てて謝るも、男性は少しも気を悪くした様子がありません。
自殺の方法は「飛び降り」。
自殺の理由は「いじめ」…と書いたところで、「こちらは具体的に書いていただけますかねぇ」とシ村。
「いじめ」だけでは受理されないこともあるので、いじめの内容をなるべく詳しく記入してくださいと。
受けたいじめを思い出し、たまらない気持ちになる鹿野少年。
「ただ死んで楽になりたいだけなのに…」と言うも、「お気持ちはわかりますが、成仏するのに必要な手続きですので」と取り付く島もなし。
「いちいち人を小バカにした言い方で」と内心でぶつくさ思っていると、「あ、遺書を書かずに自殺されたんですか?」とシ村。
机の上に日記があると言うと、何かを調べに席を離れるシ村。
そして、家族構成から思いがけないことを言います。
「もしかしたら、日記発見時にご両親が恥じて処分されるかもしれないですねぇ」と。
「そうなると世に出ることはないでしょうねぇ」と言うシ村の言葉に慌てる鹿野少年。
「でも、僕をいじめていた奴は、自分の政だって気が付きますよね。そしたらあいつら殺人犯に…」と言うも、「やった方は自覚がないものなんですよぉ。おそらく皆、すぐに忘れてしまうでしょうねぇ」と。
しずかに席を立つと、その場から離れる鹿野少年。
階段に座ると、考えるのはお義父さんとお母さんの事。
自分が自殺した事をどう思ったのか、どうも思わないかな…と暗い気持ちで思いを巡らせます。
シ村の手が空いた隙に、「今日が手続きの締切日なのに、まだ来てないんですよ」と鹿野少年の申請書を手にした同僚のニシ川さん。
「手続きしないと『冥途の道』行きって教えてあげてます?」という問いに、「いいえ、聞かれませんでしたので」とさらりと答えるシ村。
探して教えるように指示されます。
階段に座っている鹿野少年。
と、人の気配を感じて顔を上げると、そこには鹿野少年をいじめていた牛尾少年が!
牛尾少年は驚く鹿野少年を思い切っきり殴ります。
そして、「な…なんで…」と驚愕している鹿野少年に、持っていた紙を見せます。
それは、他殺による死亡認可書。
「てめーが自殺なんてしやがるから、俺が殺されたんだ!」と、鹿野少年のお義父さんにおもいっきり轢き殺された事を言います。
その話に、「日記が世間に出るより、ずっと大問題じゃないか…」と呆然。
…と、そこにシ村が「本日が手続きの締め切りですが、どうされますか?」と寄ってきます。
手続きしないとどうなるのかと問う牛尾少年に、シ村はコピーした紙を見せます。
そこには…
「成仏に関する条例(手続きまでの期間)
第■条
死亡日より49日間とする。
期間内に手続きをしない場合、死者は冥途の道を彷徨うものとする。」
冥途の道は、天国でも地獄でもない、何もないところ。
手続きが遅れると成仏できなくなりますので、と言うシ村に「おまえ、手続きすんなよ。遠泳に彷徨えよ。てめーのせいで俺、殺されたんだし。罰だ罰」と言う牛尾少年。
鹿野少年は、どんな気持ちでコイツを殺しただろうと、彷徨う事で義父に会えるかもしれないと思い、手続きをしない事にします。
「お義父さんが死んだら、会って謝りたいんです。僕の為に、わざわざこんな屑を…」と顔をゆがめて言う鹿野少年。
牛尾少年が怒りで殴りかかりますが、死んでいる為、痛くもかゆくもない。
「役所内ではなるべくお静かに願えますかねぇ」というシ村の言葉に、ぎりっと歯ぎしりする牛尾少年。
「永遠に彷徨ってろ。俺は一人で天国に行ってやるよ」と言うと、成仏するために手続きをするため、その場を去りました。
「冥途の道を彷徨っても、お義父様に会えるとは限りませんよ」というシ村の言葉に、あきらめて成仏する道を選ぶ鹿野少年。
諦めきれず、「ちょっとだけ生き返って、生きている人と話すとかできないですか?」と聞くと、条例でダメと。
さらに「成仏して生まれ変わって、お義父さんと会うとか…」も却下。
「生まれ変わりは天国へ行った方しかできない事になっておりまして。鹿野さんが天国へいけるかは、こちらでははっきりとわからないんですよ」とのシ村の言葉に、「あれ、牛尾は天国に行くって…」と不思議に思います。
その頃、牛尾は手続きを終えて「成仏の扉」に進むところでした。
「天国ってどんなとこなのかねー」と扉を開けると、足元がなくなり、その下に真っ逆さま!
地獄でした。
「殺されたので、天国と勘違いされたんでしょうね」と、しれっとしているシ村。
成仏の扉に向かう途中、「お義父さんが死んでここに来たら、迷惑かけてごめんなさいって」と、伝言をシ村にお願いします。
「よろしいですよ。お客様は仏様ですから」とにっこり答えるシ村。
その後に「確実にとなりますと、こちらもお約束ができかね…」と続けるシ村の言葉を遮り、鹿野少年は成仏へと手続きに向かうのでした。
身代わり
顔の半分がない、作業着姿の女性。
人為災害死課で、成仏許可申請書と挺身申請書への記入を求められますが、挺身申請書への記入を拒む上杉涼子。
涼子は懲役1年1ヵ月、執行猶予3年の身。
仕事がなくて困っている時に、公園で出会った小さな町工場の社長に雇ってもらいます。
社長の優しさに感謝し、一生懸命に働きますが、ある日、落下物から社長を庇い自分がその下敷きになって死んでしまいます。
「成仏許可申請書と挺身申請書は、必ず一緒に提出していただくことになります」と説明するシ村。
「いやです」と断固、拒否する涼子。
人の為に死んだなんて事実、いらない。
だから書きたくない。
頑なな態度の涼子にこれ以上いくら言っても無駄だと、少し時間を置くことにするシ村。
そして、「申し訳ございません。文書を一枚お渡しし忘れておりました」と、人為災害死申請書を渡し、再びその場を離れようとしたとき、涼子に引き留められます。
「この申請書を出さないで成仏したら、私は地獄におちるんですか?」
涼子は前科持ちなので、地獄行なのか気になるところ。
シ村は「それはこちらではわからない」と言いつつも、「ただ、前科イコール地獄行ではありませんよ」と。
渡された申請書を見ながら、なぜ挺身申請書を書きたくないのか、ぽつりぽつりと話しはじめる涼子。
前科持ちの私を何も聞かずに助けてくれて、すごく感謝してた。
社長のおかげで人並の生活ができて、すごく優しい人で、温かくて…。
でも、助けた事を後悔している。
そんな事を考える自分が嫌で、命をなげうって助けたなんておこがましい。
だから書きたくないと言うのです。
涼子の話に、「お気持ち、大変よくわかります。助けた方も助けられた方も苦しむものですからね」と、言うシ村。
「助けられたことによる罪の意識で自殺する方もいらっしゃいます」と言うシ村の言葉に、せっかく助けてもらった命なのにとおどろく涼子。
「身を挺して助けるって、そんなにいいものじゃないですね」とにっこり。
「そんなにいいものでもありませんし、お書きになってもよろしいのではないですかね?」と言うシ村の言葉に、それまでモヤモヤしていた気持ちが吹っ切れます。
そして、なぜ前科持ちになったのかも、ついでに聞いてもらうのでした。
その頃…
涼子のお葬式会場では、涼子が死んだ事故について、社長以外の社員と奥さんがひそひそ話をしていました。
実は、社長の上に鉄板が落ちてきたのは、すべて計画されたものでした。
訳ありの人間ばかりだからと、異常な低賃金と重労働、保険にも入れないで私腹を肥やしている社長に怒っていたのです。
「罪の意識で自殺すればいいのにな…」
幼児虐待
幼稚園。
雪が降ってはしゃぐ園児たち。
男の子に押されて転んでしまった凛ちゃんの手当てをしている際に、首の傷に気が付いた先生。
問いかけるも、「転んだ」と答える凛ちゃん。
他にも思い当たることがある事からも、幼児虐待を心配し、後で他の先生と一緒にお家を訪ねて話をすることに。
幼稚園から一人で帰宅した凛ちゃん。
持っていた鍵で扉を開け、散らかったままの部屋に入ります。
そこには、布団で眠る母が…。
絵本を声に出して読んでいると「うるさい!」と叱られ、目覚まし時計を投げつけられます。
そして、ベランダに本と共に出されて鍵を掛けられてしまいます。
絵本を読んでいると、下から知っている人の声が…。
こっそり覗き見ると幼稚園の先生。
「お母さんが、先生に怒られちゃう。お母さん、出ちゃダメ…」と、身を固くして思う凛ちゃん。
ところが、チャイムを鳴らすも母は起きず。
留守だと思われ、そのまま帰ってしまいます。
ホッとし、再び絵本を読み始める凛ちゃん。
日が暮れ、次第に寒さも厳しくなり、体の震えが止まらない。
しらずにおもらしをしてしまいます。
出かける支度をし、様子を見るために扉を開けたお母さんは、おもらしをしているのをみるや「悪い子だね。反省してな」とそのまま鍵をかけて出かけてしまいます。
寒さと空腹で震えながら、ついに倒れてしまう凛ちゃん。
薄れる意識の中、思い出されるのは母との思い出でした。
パソコンで、エクセルについてシ村からレクチャーを受けていた他殺課のイシ間。
そこに、小さな女の子…凛ちゃんがやってきます。
一瞬、辛そうな顔をするイシ間。
「天国に行くの?」と聞く凛ちゃんに、「ああ、特別に悪い事でもしてなけりゃ、基本的には天国行だよ」と答えますが、「じゃあ、凛は天国にはいけないかも…」と暗い顔の凛ちゃん。
「何か悪いことをしたんですか?」と聞くシ村に、「凛ね、いつもお母さんのこと怒らせてたの。いい子じゃなかったの」と答えます。
「あー、でもな、子どもとか殺された奴とかは結構早く生まれ変われるからな」とフォローするイシ間に、「凛、殺されてなんかないよ?」と不思議顔。
「母ちゃんに、いじめられてたんだろ」と言うイシ間に、お母さんはすごくやさしいと嬉しそうに話す凛ちゃん。
その様子に、イシ間の目から涙がこぼれます。
「早く成仏しちまえば、また母ちゃんに会えるかもしんねーから」と言うイシ間の言葉に、嬉しそうに成仏の扉に向かいます。
「これだから子供相手は嫌なんだよ」というイシ間に、「老衰課に異動願を出されてはいかがですか?」とアドバイスするシ村。
「同じフロアに死産課があるから嫌だよ」と却下です。
それにしてもと、「よく殺されてまで母親かばうよなぁ。俺の母親もどうしようもない女だったけど、ああまで庇うなんざできねぇよ。あれが愛ってかいね?」と半ば感心するイシ間に、シ村はバッサリ否定します。
遺影の中で、ピースサインでニッコリ笑う凛ちゃん。
ハンカチで涙を拭いながら歩く先生。
…と、隅の方に凛ちゃんとママと男性が話しているのに気が付きます。
「しつけの為って言っときゃ済むでしょ。だってあの子、ホントに聞き分け悪かったし。それよりさー、お荷物なくなったし、結婚してくれるよね?」
その話に、思わず駆け寄り平手打ちをお見舞いする先生。
慌てて男性が先生を捕まえます。
「人殺し!」と連呼する先生と凛ちゃんママの間に、すっと入ってくる二人の男性。
その手には、逮捕状。
「小野田凛さん、殺害の件で逮捕状が出ています」という言葉に、呆然とする凛ちゃんママ。
有力な目撃証言があり、それが逮捕の決め手になったようです。
「行きましょう」と促す刑事に、「この女も逮捕してよ、傷害でさ」と叩かれた頬を見せるも、「悔やまれますよ。叩いた時点で逮捕しておけば、凛ちゃんは死なずに済んだんですから…」と返され真っ青に。
一方、死役所では、「あの子の母親が職員にでもなったらどうするよ。俺、殺しちまうかも」と、ぼやくイシ間さん。
「可能性はあるよな。子ども一人殺してんだからよ」と、いうイシ間さんに「どうですかねぇ」と答えるシ村。
大量虐殺
他殺課に響く、イシ間さんの怒鳴り声。
何事かとシ村とニシ川が近寄ると、イシ間さんが無表情の男性の襟元をつかんでいます。
男性から手を離したニシ間さん。
むっつり顔です。
男性(江越)の手元には、死刑執行による死亡申請書が。
「久しぶりの新人ですね」というニシ川さんの言葉に「はっ?」と不思議そうに聞き返す江越。
シ村も「他殺課ではなく、死刑課で手続きをされた方がよろしいのではないですかね」と。
なにやらぶつくさ言って、煮え切らない態度のイシ間さん。
死刑になった理由の蘭に「子供を5人、殺したから」と書かれている事で事態を察したシ村は、自分が担当するとして別場所に移動します。
死刑課にやってきたシ村と江越。
「もう少し詳しくご記入願えますかね?」と、死刑になった理由…子どもをどうしても5人も殺したのかを訪ねるシ村。
江越は、普段は大人しいが、怒られたりすると激しく切れるタイプ。
バイトも続かない。
何もしないで稼げる仕事はないものかと探していると、週刊誌に掲載されていた「死刑囚の生活その実態」という記事に目がいきます。
独房で過ごし、1日3度の食事。
日用品の購入も可能。
30分の運動、ほとんどが自由時間。
…そんな死刑囚の生活を「最高じゃん」とする江越。
死刑になるために、小学校の集団登校に車で突っ込む計画を立て実行します。
江越によって殺された小学生5人が他殺課に来たのは6年前。
対応したのはイシ間さんでした。
ズタズタの血まみれで、ぐしゃぐしゃになっている子も。
そんな状態なのに、泣いてる子を励ましたりしている年長の子ども達。
その時の事を思い出し、涙があふれるイシ間さん。
一方、死刑課で、シ村から「死刑になった方は、採用試験を受けて頂き、こちらで働くことになる」と聞いた江越。
「誰がこんなわけわかんねーところで働くかよ!なんのために死刑になったとおもってんだよぉ!5人殺したんだぞ!」と、先ほどまでの無気力な態度とは打って変わって怒りの態度。
「それでは冥途の道行ということになりますねぇ」というシ村。
何もない真っ暗な道で彷徨うだけと聞いて、「超楽じゃん。それでいいわ」と即決する江越。
江越が働かないことを聞いたニシ川さんは、「働いていたらそのうち成仏できるかもしれないのに」と。
「そうですねぇ」と答えるシ村に、「教えてあげてないでしょ」と察します。
それに対し、いつもと同じく「聞かれませんでしたので」としれっと答えます。
ソファに横になり、事故の時の事を思い出している江越。
子ども達の叫び声、泣き声に自然と笑みがこぼれます。
そこにシ村が「お休みのところ、申し訳ございません。これから冥途の道を彷徨うことになります」と声をかけます。
…と、ふいに「おっさんは、何やって死刑になったわけ?」と聞く江越。
「申し訳ございませんが、個人的なことはお答えできかねます」と言うシ村に、「おっさんヘタレそうだしなー、大した数、殺してないんだろうな」と、自分が殺した数を自慢する江越。
「武勇伝のおつもりですか?」という言葉に振り替えると、そこには冷たい表情をしたシ村が…
「屑が、永久に彷徨ってろ」と言うと同時に、江越は背後にできた暗闇へと引きずられていきます。
「永久に?ちょっと待っ…」
言葉が終わるまえに、飲み込まれて消えてしまう江越。
同時に、シ村にもいつもの笑顔が戻ります。
「さて、今度の新人候補は、一体いつくるんでしょうねぇ。頼みますよー、法務大事」とつぶやくと、再び仕事に戻るのでした。