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大正処女御伽話(1) (ジャンプコミックス SQ.) [ 桐丘さな ] 価格:473円 |
とっても絵がかわいい~!!
タイトルからも大正時代のお話。
まさに昔の純粋無垢な若者の恋愛。
言葉使いも、今とはまるで違うお上品な時代です。
昔懐かしいお話。
ちなみに「処女」と書いて「ヲトメ」と読むのでご注意!
時は大正10年。
吹雪の中、一人の少女が村の外れにある大きな家に訪ねてきます。
家は大きいですが、そこに住んでいるのは玉彦くんだけ。
帽子が雪で白くなり、まるで白無垢を着たかのようになっている少女の名前は夕月(ゆづき)。
「珠彦様のお嫁さんになる為、罷りこしました。」
とやってきたのです。
このお話は、とある理由で田舎の片隅に追いやられてしまったお坊ちゃん・珠彦くんと、一途で明るく優しい夕月ちゃんのお話です。
ユヅ(珠彦はこう呼ぶ)が来てから1ヵ月。
依然として珠彦はそっけない態度。
食事も別で、ユヅがつくった料理もほとんど食べません。
なぜなら、珠彦はただいま絶賛絶望中だから。
「僕の人生はこんなはずじゃなかった…」と嘆いているのです。
珠彦は、明治38年に分限者(金持ち)の家に生まれ、愛情以外は何不自由なく育てられてきました。
が、乗っていた車が事故に遭い、利き腕の右手を負傷。
動かなくなってしまったのです。
今ならまだしも、この時代では利き手が動かせないとなると死活問題です。
しかも、珠彦の父親は損得勘定でしか動かない人。
千葉にある別荘に、「養生」という名の追放をします。
世話をする嫁も買ってやると。
実の親の行為とは思えない…。
そんな親の態度に珠彦は失望。
食欲もなくなり、笑う事もできなくなりました。
引きこもりの厭世家(ペシミスト)です。
そんな珠彦に、ユヅはかいがいしく世話を焼きます。
でも、珠彦は年頃の17歳。
女子に世話を焼かれるのに抵抗がある(恥ずかしい)ので、「放っておいてくれ!」と突き放します。
ところがユヅは諦めません。
お風呂を手伝うと、実力行使に出ます。
つまり、「お背中、お流しします」です。
ユヅの気持ちが理解できない珠彦は、つい「君には悩みなんて無いのだろうな…」とつぶやいてしまいます。
それに対してユヅは、「ひどい!2つもあるんですよ」と落ち込み顔。
楽天家のユヅを悩ます事とはなんなのか…気なる珠彦。
問いかけると、ユヅは一つだけ教えてくれました。
それが、これ↓
悩みの一つは髪が多くてくせっ毛であること。
そんな悩みに、珠彦はおもわず笑ってしまいます。
その笑顔に、ユヅは「笑うとそんなお顔になるのですね」とにっこり。
それをきっかけに、これまで食欲を感じなかったおなかがぐー…。
久しぶりに食事を摂るのでした。
少しずつ、ユヅのおかげで珠彦の気持ちがほぐれてきています。
ほっこり。
時は流れて、大晦日。
大掃除とおせち作りにいそしむユヅ。
珠彦は、父から「学校に行け」と書かれた手紙への返事を書いていました。
「学校に行かないのですか?」と問うユヅに「こんな右手で行ったところで、数多の憂き目の遭うのはわかっている」と。
そんな珠彦に、ユヅは優しく頭をなでます。
実の家族にもそんなに優しくしてもらったことがない珠彦。
たまらなくなって「どうしてそんなに優しくしてくれるのだ?」とユヅに聞きます。
するとユヅは、珠彦の父親に買われて、この家に来た時の事をとつとつと話し始めます。
雪の中を歩き、寒さで体が冷えていたユヅに珠彦が差し出した羽織。
ユヅの冷えた体と心が温まり、ユヅも珠彦を大切に優しくしようと思ったというのです。
真っ赤になって照れる珠彦に、ユヅは続けて爆弾発言。
新年の朝を二人で迎えようというのです。
これには珠彦もプチパニック!
ドキドキしながら自室で待っていると、布団を担いだユヅが元気よく入ってきます。
そう、文字通り「一緒に寝る」です。
ショックを受けつつ、何事もなかったように寝ようとする珠彦に、「いろいろな珠彦様をみたい。好きになりたい。」と告げて寝ます。
珠彦、赤面。
気に入らない少女だ、好きになることなんてない…と真っ赤な顔で考えつつも、近くで寝るユヅの寝顔にまたまた赤面。
眠れない大晦日を迎えるのでした。
若いなぁ~
年が明けて1月の中旬。
夜遅くまで本を読んでいたのがたたったのか、珠彦ダウン。
「や、やっとこの世とおさらばできるのか…」という珠彦に「風邪ですよ」とユヅ。
熱で起き上がれない珠彦に「今日はずっと側で看病しますから」とユヅ。
おでこで熱を測るなど、相変わらずの天然系ラブです。
おかゆを作ったり、薬を飲ませたりとかいがいしく看病するユヅ。
ユヅのその優しさに珠彦も安心感を感じていました。
ところが…
いつの間にか寝た夢の中で、父親からひどい言葉を投げかけられるうなされてしまいます。
ユヅの呼びかけで目を覚ました珠彦は、気持ち悪さからユヅの腕の中で嘔吐。
翌日には熱も下がったのですが、一張羅の着物を汚してしまった罪悪感が珠彦をチクチク苦しめるのでした。
その罪悪感から、珠彦はユヅを連れて東京のデパートに連れていきます。
ユヅ、大はしゃぎ!
ちなみに「腐っても鯛」の珠彦はお金はたくさんあるので、デパートでほいほいと買い物。
昔は、デパートで気軽に買い物できないほど高級な場所でしたからね。
ユヅが買ったのは着物の反物。
昔は反物を買って、自分でこしらえていたそうです。
反物の価格は、10円と12円。
当時は10円が大体今の5万円というのですからびっくり。
帰り道、買ってもらった反物を嬉しそうに腕に抱えるユヅ。
そして、その心…昔の人の物への愛着にジーン…。
語るユヅの横顔が、ステキです。
その後、入った百貨店の食堂。
アイスクリームに大はしゃぎのユヅは、珠彦につい「あーん」としてしまうのですが…それは昔の人には刺激が強すぎる様で…。
めっちゃ周囲の人から「はしたない!」目線。
今なんて人前でキスする人もいるのにね~(笑)。
帰宅してからのユヅは、時間を見つけては着物を縫い縫い。
完成すると、珠彦に嬉しそうに見せるのでした。
ほっこり。
そんな、ユヅと珠彦の幸せな日々に、爆弾が投下されます。
珠彦の父からのひどい手紙です。
速達でこんな内容のものを子供に送る親…なんてひどい。
同じ子を持つ親として、許せない手紙です。
この手紙のせいで、ユヅのおかげで前向きになってきた珠彦が、また最初の頃のように…いやいや、もっとひどい状態に追い詰められてしまいます。
「死にたい」
「僕が死ねば、家族もせいせいする」
「ユヅもはれてお役御免だ」
「僕が死ねば得する人間のなんと多いことよ」
…と、笑いながら高らかに言う珠彦。そんな珠彦に、ユヅは怒ります。
「口にするだけで泣きたくなるくらいつらい言葉なら、言ってはいけません。」と。
傷を癒すにはこれが一番と、ユズは珠彦に膝枕をします。
そして、両親と別れた時(珠彦のもとに来る際)の事を話します。
その前向きなユヅの言葉に、珠彦は少しばかり心が軽くなるのでした。
…とはいえ、完全復活には程遠く、しょんぼり元気のない珠彦。
そんな珠彦を、ユヅは散歩に誘います。
行き先は、住んでいる家からさらに山の上に登ったところ。
住み始めてからだいぶ日が経つのに、まったく知らない景色。
珠彦はその景色や自然の美しさに気が付きます。
そしてたどり着いたのは、樹洞の社にたたずむお稲荷様。
めずらしく、そしてかわいらしいその姿に、珠彦も「これは見られてよかったかも…」と優しく微笑みます。
その様子にユヅもにっこり。
読者はほっこり。
帰る道、ようやく珠彦の心から闇は吹き飛ばされていました。
ユヅの力、すごい!
そして、季節は夏。
台風が二人の元に訪れます。
なんと、妹の珠子さんが転がり込んできたのです!
この珠子さん、さすがあの両親の元で育っているだけあって、美人なんだけどかなり根性がお悪い。
「ここは僕の家だ、勝手に来るな」という珠彦に「死人が何いってるのよ」とグサリ!
背が小さくて肩揚げが取れていないユヅを子ども扱い。
ぐうの音もでない二人です。
珠子さんが仲が良いわけでもない兄・珠彦の所に来たのは、女学校からの逃避が理由。
なまじ頭が良いだけあって、女学校に馴染めず孤立してしまっているよう。
父親に「珠彦みたいな事をするな」と叱られて家出してきたのです。
二人のやりとりなどから、この家の深くて暗い闇がちらりと見えてきます。
ユヅは、自分の隣の部屋に案内し「遠慮なく呼んでくださいね」と、持ち前の明るさと人懐っこさで接するのですが、食事は部屋で一人で食べるという珠子。
心を開かず、二人とは距離をとろうとします。
が!
そこは相手がユヅですから無理ですね。
お風呂に入ろうとしたらユヅとバッタリ。
その姿に思わず笑ってしまいます。
珠彦のためにとミルクキャラメルと作るユヅ。
ユヅの「してさしあげたいなと思ったら、体が動いてしまうんです。」という言葉や、珠彦へのミルクキャラメルの差仕入れの様子(もちろん、天然ラブラブ具合)に、「バカじゃないの!」と叫んで部屋に戻ってしまいます。
そして、夜。
寝静まった時に事件が起こります。
呆然とする珠子をテキパキと世話するユヅ。
もしも家族だったらこんなことはしないと…必死に動くユヅの姿にぽろぽろと涙をこぼします。
翌朝。
何も知らない珠彦のところに、ユヅが走って逃げてきます。
珠子から。
なんと、昨夜のユヅの対応に感動したと、「ユヅ姉様ぁ♡」とくっついているのです。
ただ、珠彦への態度は変わりません。
珠子さんもユヅに会って変わってきています。
良かったね~と思っていると、またまた事件が!ユヅが熱を出して倒れてしまったのです。
実は、少し前から具合が悪そうな様子を見せていたユヅ。
ついにバタンキュー。
珠子がユヅを連れて行こうとするのを、珠彦が「僕が運ぶよ」と言うのですが、片手が使えないのだから無理と断られてしまいます。
自分の力のなさを痛感する珠彦。
でも、この後、さらに自分のふがいなさを実感させられます。
珠子が呼んだ医者から「過労だよ」と、さらには「女中だからといって酷くこき使うな」とののしられます。
医者の悪意に珠彦は何も言えないでいると、珠子がそれは見事に撃退します。
姉さん、さすがっす。
医者が帰った(追い出された)後、「自分と一緒にいたのでは不幸にしてしまう」と落ち込む珠彦。
一方、気がついたユヅは珠彦の姿を探します。
その様子に、「頼りにならないあんな兄でいいのですか?もっと良い方と結婚した方が…」と珠子。
おいおい、自分の兄だろ。
ユヅは、「そんな事をしたら、珠彦さまがまた一人になってしまうじゃないですか!」と。
そして、昔いた、珠彦に似たお友達(女の子)の話をします。
一生懸命にお友達の事を考えるユヅ。
そのユヅにかけるお母さんの言葉が胸に染みます。
そして、ユヅの珠彦への態度の理由がわかりました。
時間はたって夜。
ユヅを心配してそわそわしている珠彦。
喉が渇いているかもしれないと水を持っていきます。
するとそこで見たのは、胸を血で染めて苦しんでいるユヅの姿。
「吐血か!?」と真っ青になるも、実はさらしがきつすぎて苦しく、それを取ろうとして手でこすり続け、擦り剝けて血が出てしまっていたのでした。
ユヅは熱でうなされていて無意識の行動です。
あいにく珠子さんは入浴中なので、珠彦が顔を真っ赤にしながらもはさみで途中までカットします。
呼吸が楽になったユヅは、珠彦の存在に気が付き真っ赤。
ちなみに、さらしをしている理由が、ユヅの2つ目の悩みなのでした。
珠彦は、すべて裏目にでる自分の行動から、「この関係を解消したほうがいい」とユヅにいいます。
そんな珠彦に、ユヅは「帰りません」と。
私はそんなにヤワな女子ではありませんと珠彦を抱きしめるのでした。
きゃーーーーー!!
翌日。
すっかり元気になったユヅ。
その笑顔を見た珠彦は、一つの決心をします。
珠彦くん、1ページ目と全然違う!
今後、どう変わっていくのか注目です。
最後は、おまけ付。ユズが女学校の寄宿舎にいた頃の話です。珠彦のもとに行くことが決まり、友人との別れとその友情のお話です。うーん、ほっこり。
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