01巻:ラジエーションハウスー再会ー

ラジエーションハウス(01) (ヤングジャンプコミックス GJ) [ 横幕智裕 ]

価格:648円
(2019/6/17 11:47時点)

放射線科医から意見を求められた、放射線技師・五十嵐唯織。

思うままに「特に異常は見当たらないと思いますけど…この写真、伊集院教授のですか?伊集院教授の脳はもっと標準以下の大きさだったと思うんですよね。」と読影。

その言葉を伊集院教授に聞かれてしまい、退職させられてしまいます。

夕方。

川のそばにある土管に座り落ち込む唯織。
人の気持ちが見えた時は、いつも手遅れ…と、今の仕事をあきらめた方がいいのかとさえ思えてきます。

犬を散歩させている子どもの姿から、幼い頃に大好きだった女の子との事が思い出される唯織。
両親の離婚で疎遠になってしまいましたが、唯織はずっと思い続けており、今の仕事を頑張る理由でもありました。




目を上げれば、川の向こう側には、その女の子(甘春杏)がいる甘春総合病院。
ダメもとで求人募集を見てみると、放射線技師の募集が!

これまで全くタイミングが合わなかった求人。
さっそく電話しないとと走り出した瞬間、近くでカメラを構えていたおじさんの三脚にぶつかってしまいます。

幸い、カメラは外していたので被害はなし。
撮っていた星の写真を見せてもらっていると、突如、手を頭に当てて苦痛の表情を浮かべるおじさん。

その様子に、「頭痛は甘く見ない方がいいですよ」と病院に行くことを勧める唯織。
それで求人を思い出し、その場を慌ただしく去るのでした。

 

無事、甘春総合病院に勤務が決まった唯織。
同じく初日という放射線技師・広瀬裕乃と一緒に、ラジエーションハウスに。

ここで失敗は許されないと緊張しまくり周りが見えていない唯織とは違い、緊張しつつも先輩に挨拶して回る裕乃。
そこには、パーツおたくの悠木倫、美人の黒羽たまき、ちょっとスケベな軒下吾郎、めったにしゃべらない威能圭と、なにやら個性的なメンバーばかり。

 

そこに、放射線科医の甘春杏がやってきます。

杏の姿に涙ぐむ唯織。
さらに左手薬指に指輪がない、名字も変わっていないことに安心です。

そんな唯織の様子に恐怖を感じる裕乃。
そして、その気配に引き気味の杏。

さらに、たばこを吸いながら技師長の小野寺俊夫、放射線科医であり診療部長の鏑木安富も部屋に入ってきます。

「放射線科医の診断は、放射線技師の皆さんに支えられています。期待していますよ」という鏑木に対して、杏は「あなた達は余計な事はしなくていいから。マニュアル通りに写真を撮ってくれさえすればいいので」と冷たい。

杏の言葉に、放射線技師メンバーがイラッ…不穏な空気が漂いますが、唯織は自分にまったく気が付いてくれない事にショック!

 

院長室を訪れた杏。
なぜ、五十嵐唯織を採用したのかを、院長である大森渚に問います。

「気持ち悪い」と最悪な印象を述べる杏に、「彼が来てくれたことは、とても幸運なことよ」と、アメリカで最も権威のある放射線科医・ピレス教授の講義での出来事を話します。

誰も答えられなかった画像に対しての所見を述べる唯織。
その答えに「実に惜しい」と評価したピレス教授。

ピレス教授の講義は非常に難問で、正答に近づくのは稀。
そんな教授に「惜しい」と言わしめたのは、唯織が優秀であることのほかありません。

が、その話に杏は「人違いでは?」とけんもほろろです。

 

その頃、ラジエーションハウスに急ぎの依頼が舞い込みます。
相手は、唯織が川岸で出会ったおじさん…実は世界的に有名な写真家の菊島亨。

CT、MRIと撮影した脳の画像の半分近い部分が、金属アーチファクタで見れない状態に。

その原因は、昨年、南米を撮影旅行中に歯痛が起こり現地で治療を受けた際の銀歯。
欠けたところ以外には異常が見当たらなかったため、ここに病変があるとしか考えられない。

欠けている画像では何もわからないことからも、「ちゃんとした写真を撮ることだけが、あなた達、技師の仕事でしょ」といら立ちをぶつける杏。

そこに、取り寄せた菊島のカルテが到着。

そのカルテに目を通した杏は、以前に脳動脈の手術経験があることに慌てます。
頭痛が脳動脈瘤の再破裂の兆候だとしたら非常に危ない…一刻も早い病変の特定が必要だからです。

「造影剤を使えば少しはましな写真が撮れるかもしれない…」という小野寺の案も、造影剤アレルギーから却下。
となると、あとは銀歯を縫いてもらうしかないのですが、甘春には歯科がない。
まさに万事休す!

 

院長から言われた、「困った時は彼(唯織)を頼ったらいいわ」という言葉を思い返しながら、悶々とした表情で廊下を歩いている杏。
その心は、「彼は所詮、放射能技師じゃない…彼に頼ったところで…」。

そんな杏を偶然、みかけた唯織。
後ろにそろ~っと付いて行き、「僕だよ!窪田唯織だよ」と告げようとするのですが、「は?誰?」と冷たく言われてしまう姿をイメージしてしまい真っ青。

気配に気が付いた杏が後ろを振り向くと同時に、傍の部屋に飛び込んで隠れてしまいます。

その部屋は、なんと菊島がいる部屋。
再会に、お互いが自己紹介です。

 

菊島が撮ったボリビアのウユニ塩湖の写真を見せてもらう唯織。
この写真は、菊島が初めて大きな賞をもらった、いわば菊島の原点。
昨年、久しぶりに訪れると、覚えてくれていた現地の人たちが歓迎してくれたと。

「大切なものは目に見えない」

サン=テグジュペリの「星の王子様」に出てくる有名な言葉を引用し、「見えないものでも見よう…写そうと努力すれば写すことができるんだ」と語る菊島。

そして、今度、結婚する娘からウユニ塩湖で二人の写真を撮ってほしいと言われ約束したが、銀歯が原因でうまくNRIが写らないと残念そうに言います。

「離婚して娘には父親らしいことは何一つやれなかったから、せめてこの約束だけは守りたかった…」という菊島に、「僕に、あなたを撮らせてもらえませんか?」と提案する唯織。
院長に許可をもらうと、再びMRIで撮影をおこないます。

あの手この手でなんとか、欠けた部分を見えるようにしようとする唯織。

 

その頃、再び菊島が激しい頭痛を訴えはじめ、鏑木が杏に診断を迫ります。

「造影剤を使います」と診断する杏。

「アレルギーは?重い副作用が出る可能性もあるんだぞ…」という小野寺の言葉に、「命に関わる脳動脈瘤再破裂の治療を優先する方が先決です」と、分かった上での判断だと言い切ります。

 

造影剤を使ってMRI撮影を始めようとした頃、唯織の方できれいな画像表示が完成。
それを見た鏑木が、急きょ造影剤を使ってのMRIを中止にします。

位相画像から信号を組み立てて直し、アーチファクトが消滅した画像から、頭痛の原因が脳動脈瘤の再破裂とは無関係であることが判明。
原因は、昨年のボリビア撮影旅行の際に食べたカニに寄生していた、ウェステルマン肺吸虫に感染したことからでした。

「まずは血液検査ですね」と言う鏑木。
唯織が何かを期待するように杏をみると、そこには顔を真っ赤にしてにらみつける顔が!
予想外の反応に、真っ青になる唯織でした。




後日。

唯織の元に、菊島からお礼の手紙が届きました。
そこには、無事に娘の結婚式の写真を撮れたと。

その写真は、ワールドグラフィック賞金賞受賞しており、新聞でも大きく取り上げられたほど。
その芸術を支えた医師として、ちゃっかり鏑木まで紹介されています。

院長室で、新聞と鏑木から話を聞いた大森。
鏑木が退出したあと、杏に話したピレス教授の事で、一ついじわるな言い方をした事を思い出し笑い。

杏には、さも所見について「実に惜しい」とピレス教授が言ったように話したのですが、実は所見は「すばらしい」。
唯織が日本に帰って放射線技になるという事に対して「実に惜しい」と言ったおでした。

唯織が持つタブレットには、世界から読影を依頼する画像が集まっています。
なぜ、唯織が技師にこだわるのかはわからないけれども、医師免許を持つ放射線技師として、「放射線科医としても活躍してもらうわよ」と思う大森でした。

 

その頃、屋上でタブレットを見ながら、昔の思い出に思いをはせている唯織。

幼い頃の杏から「唯織は放射線技師になって、私のお手伝いをするんだよ」と言われたことに、ふふっと思わず笑い声が。

その姿をこっそり見ていた杏。
「タブレットみて、なんかニヤニヤしてる…」と不気味に思うのでした。

 

徹夜でゲーム攻略に励む、蛭田志朗と真貴夫婦。

「仕事があるのに朝まで付き合わせてごめん」と謝る真貴に、「“最強の戦士マキシマム”をサポートするのも、“白の医術師ヒルダ”の大切な仕事ですからニッコリ。

結婚して4年。
穏やかで幸せな生活を送っていた二人ですが、人間ドックで真貴の胸にしこりがみつかってから一転します。

 

ベンチに座りタブレットをのぞき込んでいる唯織の元に、院長の大森がやってきます。
大森は、唯織が医師免許を持っていることを知っている、ただ一人の人物です。

「放射線科医として働く気はないの?」と聞く大森に、「お世話になった方への義理もあり…ここではあくまでも放射能技師としてお願いします」と申し訳なさそうに答える唯織。
大森もそういう条件で採用したことからも、それ以上は強く言えません。

「医師として働いた方が動きやすいと思うんだけど?」と言うも、幼い頃に交わした杏との約束から断ります。

何かしらの理由があると感じるもののこれ以上は言えない…とはいえ、「見えてしまったモノを、みないフリできるのかしら」と謎めいた言葉を残して大森は戻るのでした。

 

甘春総合病院のロビーに座り、呼ばれるのを待つ蛭田志朗と真貴。
真貴の表情は不安で暗くなっています。

と…

受け付けの方で怒鳴る女性(千葉美佐子)の姿が。

どうやら息子(健太郎)も足に痛みを訴えているのですが、外来予約がいっぱいで後日の診察に。
仕事があるのでそうそう休めない事からも、自分の診察と一緒に診てもらいたかったようです。

予約をとることの難しさ、そして病状の進行や痛みの危険性があるのに待たされる怖さからも、その親子の様子に思わず真貴の肩に置いた手に力が入ります。

 

たまきさんに変わってマンモを担当することになった唯織と裕乃。

千葉美佐子さんのデータを確認した唯織は、気になることがあるため触診しようと、まだ上半身裸の千葉の元に近づきます。
びっくりして悲鳴を上げる千葉さん。

悲鳴を聞きつけた杏がやってきて、「医師でもないあなたが、そんな事をする必要があるのよ!」と一喝。
慌てて「いや、あの、この人…」と気になる事を告げようとするのですが、「今すぐ出ていきなさい!」と追い出されます。
さらに、今後のマンモ室出禁命令まで。

唯織が追い出されてしまったため、一人でやることになった裕乃。
そこに、青ざめた表情の蛭田真貴が入ってきます。

 

読影室で、画像を見て診断を下す杏。
蛭田真貴の画像から、悪性の腫瘍が高いことを読み取った杏は、再検査を伝えます。

その結果にショックを受ける真貴。
仕事から帰ってきた志朗に、「きっと乳がんなんだよ…」と不安を吐露します。

待っている間に手遅れになるかもしれない…そんな真貴を必死に落ち着かせる史郎。

泣きつかれて寝てしまった真貴にやさしく手を添えながら、思い出すのは真貴との幼少時代の思い出とプロポーズした時の事でした。

 

小さい頃から親同士が仲の良い、いわゆる幼馴染。
女子にしては珍しいほどのゲーム好きで、毎日のように志朗と一緒にゲームをしていました。

高校まで一緒のゲーム仲間。
でも、大学進学をきっかけに、それまでのような付き合いはなくなり…ふとしたきっかけで、真貴がゲーム雑誌などで活躍するライターになっているのを知ります。

大学卒業後は営業として働くものの、元来の気の弱さからなかなか仕事に馴染めず落ち込む日々。

そんな時、懐かしいゲームのオンライン版が出た事を知り、現実の疲れを癒すかのようにのめり込むようになりました。
そこで偶然、出会ったのが真貴。

二人はまたゲームを通じてつながり、ついに志朗が真貴にプロポーズ。

ゲームの世界では、真貴が戦士で回復薬の志朗を守る役割。
「現実の世界では、ちゃんと私の事を守ってね!」と笑顔で承諾する真貴の笑顔を思い出す志朗。

真貴の異変に早く気づいてあげられたかもしれないのに…と、自分の情けなさに涙するのでした。

 

翌日。
一人で甘春総合病院にやってきた志朗。

有名な乳がん専門クリニックは、再検査まで4か月待ち。
そうしたところで診てもらったほうがいいのか、相談したくてきたのでした。

いざ病院に入ろうとしたところ、タブレットを見て前方不注意になっていた唯織と衝突。

唯織の様子から医療関係者だとわかるやいなや、「ボクの話を聞いてもらえませんか!?」と迫真の表情で迫ります。
唯織、タジタジ…。

 

ベンチに座り、真貴が乳がんの疑いありと診断されたことを話し始める志朗。

再検査と簡単に言うけれども、専門病院の予約を取るだけで何か月も待たないといけない。
もしかしたら…と思いながら何か月も待つのは苦しい。

待たされている間にガンが進行して手遅れになってしまったらと…彼女にもしもの事が合ったら…と、思わず涙がこぼれる志朗。

そして、真貴とのこれまでの出会いと結婚を「美女と野獣」と例える志朗。
真貴と一緒にいられるようになってから、僕の人生はずっと幸せでした。
僕自身の努力で得たものではなく、彼女に与えてもらったものだから、彼女の存在が僕の幸せ。
だから、僕の人生はすべて…彼女の為にあるとそう思ってるくらいなんです。

そう話す志朗の言葉に、涙を流しながら「わかります…」とうなずく唯織。

そして、今度は唯織が語り役。

自分がある人を支えたくて放射線技師になった事。
そのために、医師免許を取り、より理解を深めるべく海外で学んできた事。
いろいろと回り道をしたけど、ようやく近づくことができたと…。

 

その話の中で、唯織が医師免許を持っていることを知った志朗は、「医師として五十嵐さんの意見を聞かせていただけないでしょうか?」と。
実際のところどうすればいいのかと問います。

唯織は、蛭田夫婦を「健診難民」と例え、現在の日本では今すぐどうにかできる問題ではないと言います。

何度も検査を受け、はっきりわかるまで何か月もかかる。
その間に思いつめてしまい仕事や生活に支障をきたすようになることも少なくない。
精神的に追い詰められて、自ら命を絶つケースもあると。

「結局…待つしかないんですか…」と苦しそうに言う志朗。
その横顔から、自分が診ましょうかと言いそうになるものの、杏に言われた「マンモ室出禁」命令を思い出し、ぐっと飲み込む唯織。

でも、すぐに杏の命令よりも今目の前にいる志朗の方が重いと考え直し、自分が診ることを提案します。

 

夜。

夜勤でいる唯織のところに、蛭田夫婦がやってきます。
再度、マンモの撮影。

撮影した画像を元に、診断を告げる唯織。
右の乳房に2センチを超えるスピキュラ…ギザギザのしこりがあり、皮膚の引き攣れもあり。

放射線科医は腫瘍の見た目を「顔つき」と表現するのだが、悪性の腫瘍は「顔つきが悪い」と。
真貴のしこりは一見顔つきが悪そうに見えるけれども、しっかりと見つめると違う顔が見えてくる。

線維化が主体の病変(RSL)なので、悪性ではない。

RSLはレアな良性の腫瘍で、普通は治療の必要はないけれども、真貴の場合はしこりが大きいので、がんが隠れていないか一応組織は調べた方がいいですねと診断します。

「でも、心配はないと思いますよ」という唯織の言葉に、喜ぶ蛭田夫婦。

さらに、マンモグラフィ検査は、きちんと乳房を潰してあげないと、コアの部分が判別しずらいため、乳がんと誤診されやすくなる。
まさに、前回の写真がそうで、中心部分がきれいにみえていなかった。

「しっかり見つめれば、顔は強面でも芯は優しいことがわかる…そういうことでしょうか」と。

大泣きする志朗を、真貴はやさしく見つめるのでした。

 

朝の引継ぎ。

そこで、真貴のマンモ画像が。
見事な画像に、「お手本のようだな」と感心する小野寺。

患者の名前から「私が悪性腫瘍って診断した人だ」と思い出す杏。
撮影技師コメントをみて、こんなレアケースの病変に気付けるなんて…と、冷や汗。

その頃、自宅に戻る唯織は「また杏ちゃんに嫌われるだろうな…」と心配しつつも、蛭田夫婦の幸せそうな姿がみれたことに満足しているのでした。

 

【次巻】




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